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【第六話 みずほ先輩と学園祭に輝く七つの星】

【6-8】

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 息を吸った刹那の時間を切り裂いて竹刀が振り下ろされる。

「メーン‼」
「いっぽん!」

 勝負が決まった。いっせいに拍手が沸き起こる。

 剣士のふたりは向かい合い、互いに一礼する。

 すると、敗北を喫したほうの剣士が道場の中央に歩み出て正座をした。

「これからスイカ割りならぬ、『面割りイベント』を開始しまーす!」

 声をあげたのは先日、生徒会室を訪れた松下部長だった。

 何人かの学生が手をあげたが、松下部長は一番に私服姿の子供を指名した。小学生中学年くらいの男の子だ。

 竹刀を手に持たせ、立ち位置まで案内し、それから手ぬぐいで目を隠す。

 何をするか理解できたので、すぐさまナレーションを続ける。

「なんと、敗者が生贄となってスイカの代わりを務めるようです。これはぴえんです! 究極のぴえん状態です‼」
「「「はじめっ!」」」

 部員たちが掛け声をあげ、男の子に進む方向を指示する。さっきまでの緊張感とはうってかわって和気あいあいとしている。

 男の子はさまよいながら剣士へと向かってゆき、目の前にたどり着いた。

「「「そこだーっ‼」」」

 パーン!

 振り下ろされた竹刀は軽快な音を響かせ、面のてっぺんを直撃した。

 神妙に正座をしていた剣士は派手に「やられたぁ~!」と叫んで後ろ向きに倒れた。

 男の子は目を覆う手ぬぐいを取り、竹刀を高々と上げる。

「いっぽん、とったどー!」

 どっと笑いが沸きおこる。

 俺も乗じて盛り上がり、勢いに乗ってナレーションを吹き込む。

「剣道部男子、脳天を直撃されたァ――‼」

 剣道部め、偉そうな態度とってたくせに面白いイベント考えてきたじゃんか!

 しかも、景品としてお菓子の詰め合わせを準備していた。

 景品を手渡された男の子は拍手喝采を浴びていた。照れくさそうな顔をしている。

 俺は部員と子供との楽し気なやり取りを動画に吹き込んだ。

「かつき君、剣道部はなかなかいいイベントをやってくれたね」
「謎かけの効果か、観にくるひとが多くて盛り上がってますね。これなら文句ないっしょ」

 話していると、松下部長は俺たちの存在に気付いたようだった。

 感謝の意を表すように、こちらを見てうやうやしく頭を下げる。さすが礼節を重んじる剣道部だ。

 みずほ先輩は「そんなことないです」という意思表示で両手を目の前でふりふりしていた。

 ジェスチャーの会話が終わったところで、みずほ先輩に声をかける。

「さあ、次の部活に行きましょうか」

 それから俺たちは二階のイベントを順に見回る。

 次に訪れたのはルーム2C。普通の教室だが、俺たちから教員に許可をもらったのだ。

 黒板に書かれたキャッチフレーズは『一矢報いろ!』。弓道部のイベントである。

 机が仕切りのように並べられていて、教室の後ろの壁には的が三つ、立てかけてある。

 入り口の受付には小型の弓矢が準備してあった。的当てゲームだ。

 参加者のひとりが、的を狙って弓を引く。放たれた矢は弧を描いて正鵠せいこくを得た。

「四本皆中でました! おめでとうございまーす~!」

 順番を待つ生徒たちからどよめきが上がる。射手の名が黒板に記された。

 皆、まだかまだかと待ちきれずにそわそわしている。

「こっちも盛り上がってるじゃないっすか」
「キャッチフレーズも指定通り使ってくれているわね」
「よっし、この調子で次もいってみましょー!」
「ああっ、待ってよかつき君~」

 その隣、ルーム2Bのキャッチフレーズは『ジルバでゴー!』。

 けれど内容は全然違って、部員たちがキレッキレのダンスを踊っていた。

 最近動画で観たバズった踊りで、観客も巻き込んでいた。ひそかに踊りを練習していたひとには最高のチャンスだ。 

 しかも、部員のひとりが撮影をしていたから、あとで動画を編集してアップするつもりだろう。

 俺も「いいね」の気持ちを込めて親指を立てた。

「みずほ先輩、今度は三階のほうも確認してみましょう」
「もうっ、一番楽しそうなのかつき君じゃない!」

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