上 下
43 / 68
【第六話 みずほ先輩と学園祭に輝く七つの星】

【6-2】

しおりを挟む


「えーと、屋内に割り当てられた部活は……パソコン部、美術部、ダンス部、弓道部、軽音学部、合唱部、それに剣道部の七つね」

 みずほ先輩は学園祭実行委員の作成した企画書に目を通しながら答える。

「――ところでかつき君、何やってるの?」

 俺は生徒会室に置いてある、ヒラメをデザインした座布団を頭上に掲げ、スローダンスを踊っていた。

「雨乞いならぬ閃き乞いっすよ。ヒラメだけに閃いてくれるかもって」
「そういう宇和野先輩みたいなギャグ、むしろ神様の逆鱗に触れるわよ」

 頬杖をついたまま口を尖らせ忠告するみずほ先輩。

「俺は真剣なんすよ! 絶対、いい方法を考えつきますよーに!」
「その気持ちだけは受け止めたよ。でも語尾がやっぱり神頼みね」

 学園祭では校庭の中央に舞台が配置され、その周囲に屋台とテーブルが並べられる。

「校舎の中まで見に来るひとって、やっぱり少ないんですか」
「そうなのよ。屋外では舞台を見ながら屋台で買った食事が楽しめるしね。だから現実的に、人数の多い部活を優先させなきゃいけないじゃない」
「かといって、少人数の部活を無下にできないってことっすね。タイムテーブル的には厳しいんすか」
「舞台を使うイベントの予定はぎっしりよ。ほとんどが人気の運動部で、最後は恒例のアンサンブル部の演奏。どうしても三分の一は屋内になっちゃうのよね」

 舞台を用いる時間はひとつの部活あたり三十分で、ほとんどの部活でイベントの予定が決まっていた。

 屋内への変更はおろか、使用時間の短縮でも図れば、生徒会が非難の的となることうけあいだ。

「去年もクレーム来たんですか」
「そうらしいんだけど、きっとあのひとのことだから、のらりくらりとかわしたんだわ」
「ああ、宇和野先輩なら神回避のスキルがありそうっすね」

 みずほ先輩は真剣な表情で考え込んでいる。根が真面目だからこそ、真っ向から受け止めてしまうようだ。

「「お待たせー!」」

 円城先輩と家須先輩が生徒会室に顔を出した。

 遅いよ先輩たち、できれば肝心なときにいてほしかったのに、と心の中で独り言ちる。

 円城先輩は不思議そうな顔で尋ねる。

「清川、さっきすれ違った三年生が言ってたけど、学園祭で舞台を使う部活の割り当て、変更するんだってな」
「えっ⁉ そんなこと誰も言ってないんだけど」
「生徒会公式の発言だって聞いたぞ。清川じゃないのか?」
「いえ、そういうつもりじゃ……」

 聞いてぞっとした。みずほ先輩の顔を見ると、やっぱり青ざめていた。

 俺のその場しのぎの発言がまずかったのか? それとも、勝手にそう解釈した三年生たちが悪いのか?

 けれどみずほ先輩は俺のせいだとは言わなかった。

「どうしよう……。ほんとは学園祭の実行委員に決めてほしい案件なんだけど……」

 困惑するみずほ先輩。厄介な問題はなんでも生徒会に流れてくると聞いていたが、この件もそういう類か。

 なぐさめるように円城先輩が声をかける。

「清川に対して集中砲火なんて卑怯極まりないな、あのモブキャラどもら」
「上級生にモブ言わないの。まぁ、あのひとたちの気持ちはわかるんだけどね」
「清川はほんと、ひとがいいよなぁ。俺と違って」
「それより円城君、先輩たちが引退したんだから、円城君が頼りなのよ。だから返事をするときは一緒にいてくれない?」
「いや、俺はいないほうがいいんだよ、話に加わると絶対炎上するからさ。対外交渉は清川に任せる」

 円城先輩ひでえ! 自分自身の口の悪さを言い訳にして逃げたっ!

「はぁ、そうかぁ。そうだよねぇ円城君は」

 みずほ先輩、納得しちゃってる! って、かく言う俺も納得しかない。

「ところで家須君はいいアイディアないかな」
「うーん、要は屋内で開催したとしても、観客が集まればいいんだろ」
「そうなんだけどねー。毎年宣伝してるみたいだけど、焼け石に水らしいのよね」

 みずほ先輩は大きなため息をついた。

「一週間後に返事をしなくちゃいけないのよ」
「「「うーむ」」」

 皆、まるで抜け道のない袋小路に追い詰められたようだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...