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1章妖精の愛し子

10.

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アロイがリリーフィアから手を離すと、リリーフィアはこてんと首をかしげた。
「なんのおはなちしてたんでちゅの?」
「んと、ちょっとね… そ、それよりも僕がこの家に居る間、ティファニーは手出ししてこないと思うから安心してね、リリーフィア」
アロイがまたリリーフィアの頭を撫でると、リリーフィアは嬉しそうに笑い声をあげた。

─ぐうぅ~
笑っていたリリーフィアのお腹から突然小さな音が聴こえた。
「リリーフィア、お腹空いたの?」
意識を取り戻したサクラが聞く。
「うん、お腹しゅいた」
「まあ、遊んでて昼ごはん食べ損ねたからな」
「早めのおやつにでもしようか」
妖精達はにこにこと笑いながらおやつの準備を始める。
朝ごはんの時以外部屋の外に出ては行けないリリーフィアの為に、ご飯やおやつ、ましてやお風呂まで完備してあるのだ。

今日はアロイがいるので普段は作るのが大変なパンケーキを作ることにしたサクラは卵や牛乳、砂糖などをどんどん準備し始める。
身体の大きさから普段は手際よく出来ない泡立て器も、アロイに混ぜてもらえば簡単というわけで、サクラは今までで一番張り切って料理を始めた。

まずは魔法で卵を軽く中に浮かべるとテーブルにぶつけ、殻にヒビをいれる。
そしてそのままパカリと割り入れ、牛乳、砂糖をどんどんいれていく。
ピンクの羽の妖精が器用な理由は、使える魔法が生活魔法だから。

生活魔法は他の魔法とは違い、ある使い方に秀でている。
例えば風魔法は風の力を使い、物を浮かせたり移動させることに長けているが細かい動きは苦手だ。
それに比べ生活魔法は、卵を割る等の細かい作業に適している。
その代わりに自分よりも大きな物を浮かせることは苦手。
それでもサクラはいつも自分よりも大きな泡立て器を一生懸命魔法で動かしていた。
それも全てはリリーフィアのためだけに…

サクラの周りにはあらゆる道具や材料が飛び交い、軽く指を振るだけでサクラはそれを操っていた。
「それじゃあアロイ、これを角がたつまで混ぜてね」
そう言ってサクラが渡したのは生クリーム。
「角ってどんな感じ?」
アロイが首をかしげると、サクラはごく少量の生クリームを取り、実際に混ぜて見せた。
「こんな感じになるまで混ぜて?」
「分かった」
アロイはそう言うと、慣れない手付きで泡立て器を手に持った。

その横ではハヤテがイーゴという果物を小さな包丁で切っていた。
その間にサクラはパンケーキのたねをどんどん作っていく。
なんとか泡立て器を動かして材料を混ぜ合わせ、やりにくいところはアロイにやってもらいながらもなんとかあとは焼くだけになった。
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