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46話 月日は巡る

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 「「「「祝! 20歳に乾杯!!」」」」
 「「何か分からないけど、取り敢えずおめでとう!!」」

 リビングに明るい声が響いた。 優斗たちの手には、お酒の入ったグラスが持たれている。 フィルとフィンはジュース。 2人はお酒を飲まない。 あれから異世界へ落とされて3年が経っていた。

 優斗たちは、異世界での生活の中で、皆が無事に20歳を迎えられたら、お祝いしようと話し合っていた。 優斗たちに刷り込まれていた『お酒は20歳になってから』が気持ち的に解禁され、初めてのお酒を口にしていた。 リビングのソファーで寛ぎながら、ビールを片手に天井を見上げる瑠衣がしみじみと言った。

 「無事に20歳になって良かったよなぁ。 俺らって普通なら絶対に何回も死んでるはず」

 瑠衣の言葉に今までの事を思いだして、優斗たちの頬が引き攣った。 瑠衣がしんみりしているのを他所に、仁奈が優斗と華に問いかける。

 「そんな事よりさ、王子と華はいつ結婚するの?」
 
 優斗と華が同時にお酒を吹き出した後、優斗がしどろもどろになりながら『あ、えと、それはまだ……』と答えた。 優斗の答えに、仁奈が細めた目は『相変わらずヘタレだな』と言っており、優斗の隣に座る華がそっと優斗のフォローをした。
 
 「私たちまだ、20歳だし。 普通に考えたら、元の世界だとまだ学生だよね、きっと」
 「そうだよね。 大学生かぁ。 私はあんまり勉強好きじゃなかったから、行ってないかも」
 
 隣で座る仁奈に、瑠衣が呆れた声を出す。
 
 「大学行かずに働くの? それ、きついだろう」
 「学歴社会反対!!」
 「仁奈、それいつの時代だよ」

 優斗からは乾いた笑い声しか出なかった。 優斗と華には、使命がある。 子をなして、子孫をエルフと結婚させるという使命が、優斗と華の肩にのしかかっている。 しかし優斗は『無理にエルフと結婚させなくてもいいよな』と思っていたりする。

 初めてお酒を飲んで分かった事、優斗たちは今後、お酒を飲まない方がいいという事だ。 華以外はだが。 仁奈は一口飲んで眠ってしまい、見た目で強そうだった瑠衣は、2杯が限界だった。

 華は、ザルだった。 全く顔色が変わらない上に、酔ってもいない様だった。 優斗はというと、頑張って3・4杯だった。 優斗が覚えているのは、華に連れられて部屋へ戻った事。 覚束ない足元が縺れて、華をベッドへ押し倒し、何か呟いた事だ。 その後は、酔いつぶれて眠ってしまい、何も覚えていない。

 酔いつぶれた朝の頭に、監視スキルの声が響く。 二日酔いなのか、ズキズキと痛む頭に、監視スキルの声は堪えた。

 『【花咲華を守る】スキル、【透視】と【傍聴】スキルを開始します。 就寝中の危険はありませんでした。 今朝の花咲華の映像を送ります』

 (ん? どうした? 最近は、いつも実況中継だけだったのにっ。 二日酔いだからか? 制御が出来なくなってるのか?)

 優斗の脳内に、華の映像が流れ込んで来たと同時に、優斗の直ぐ後ろで人の気配がする。 背中に感じる人の気配が寝返りをうつと、優斗の脳内の映像の華も寝返りをうった。

 (まさか、あのまま一緒に寝たのかっ! 俺、何もしてないよなっ!)

 隣で寝ている華を起こさない様に、そっと掛け布団を捲って、ホッと安堵の息を吐いて、またそっと華を起こさない様に掛け布団を掛けた。

 (良かった! 2人とも部屋着のままだ。 酔った勢いなんて最悪だしな。 でも、華に何か言ったような気がするんだけど。 ダメだ、何も思い出させない)

 『昨晩の就寝前の映像を流しますか?』

 優斗は暫く考え、再生する事にした。 脳内で昨晩の映像が再生されると、優斗の喉が鳴った。 映像は、お酒が入っている所為か、ゆらゆらと揺れていて、たまに途切れてしまう。 優斗が華に連れられて、自身の部屋へ入ると、よたよたとベッドまで近づく。

 (俺、めちゃかっこ悪いなっ。 もっとしっかり歩けよっ)

 優斗の足が縺れ、華をベッドへ押し倒し、華のアップが映し出された。 華の瞳は潤んでいて、顔は真っ赤に染まっている。 優斗が発した言葉に、華の瞳が大きく開かれる。

 『華、結婚しよう。 お互いが死ぬまで、ずっと一緒にいよう。 もし、俺が先に死ぬ時が来たら、俺の全魔力を、華を守る監視スキルに全振りしてから死ぬよ。 そしたら、俺が先に死んでも、俺の魔力が切れるまでは、華を守れるから』
 『たかな、優斗くん?!』

 華はあれから、3年も経つのに、呼び方が『小鳥遊くん』と『優斗くん』を行ったり来たりしている。 一向に『優斗』と呼ばない華に焦れた優斗が黒い笑みを浮かべる。

 『華はいつになったら『優斗』って呼んでくれるんだ?』

 そう言うと、華に覆いかぶさる。 華が『たかっ』と優斗を呼ぶ声が途中で切れ、映像も切れた。 ここで眠ってしまったらしい。 優斗は深い溜め息を吐いて、両手で顔を覆う。

 (最悪だ! 酔った勢いでプロポーズって! いくら何でも、それはないだろう)

 隣で寝ている華が、いつの間にか起きていて、優斗の脳内の映像に流れてくる。 優斗は直接、華の顔が見られなった。 優斗の様子に、何処まで察しているのか分からないが、映像の華はにっこり微笑んだ。

 「おはよう、優斗」

 華の笑顔と、初めて求めていた呼び方で呼ばれ、優斗が撃沈したのは言うまでもない。 優斗が無しだろうと思われたプロポーズが、何故か華には響いていて、返事は『私も優斗が先に死なない様に全力で守るよ』だった。

 (やっぱり、華はズレてるな。 普通は、酔っぱらってプロポーズなんて、怒るところなのにっ。 本当に華は、面白くて可愛いな)

 優斗がくしゃりと顔を細めて微笑むと、華と唇が重なる。 突然のキスに、華は瞳を大きく開いて驚いていた。 後日、優斗が納得いかないので、プロポーズの仕切り直しをした。

 優斗たちが細々と始めたお店は、皆で協力しながら運営して、赤字にならない程度には稼げていた。 勿論、冒険者も続けながら、異世界生活に馴染んでいった。 優斗と華が結婚した後も、隠れ家での4人の生活は変わらなかった。 優斗と華の子供が生まれる頃、瑠衣と仁奈も結婚し、ひ孫が生まれる頃には、隠れ家は小さい村にまで発展していた。

 優斗と華の子供と、瑠衣と仁奈の子供が結婚したり、優斗たちのひ孫が、何故かレアなエルフと出会った。 そして、セレンとの約束通り、結婚した。 優斗たちは元の世界に戻る事無く、異世界生活を満喫して、寿命を全うし、優斗の酔っぱらってしたプロポーズの約束も果たされた。

 ――「君の寿命は尽きた。 私の管理する世界の所為で、君の運命を変えてしまった事、本当に申し訳なく思っている。 その代わりに次の人生は、君が生まれ変わりたいものに変えて上げよう。 何が良いかな?」

 主さまが目の前に立ち、しわがれた声で微笑んでいる。 相変わらず年齢と性別が分からない姿をしている。 瑠衣は全てが真っ白な世界にいた。

 「もしかして、元の世界で生まれ変わるのか?」
 「うん、そうだよ。 私の作った身体から抜け出した君の魂は、元の世界、日本で生まれ変わる」
 
 瑠衣は主さまの話を聞き、考えて答えを出した。
 
 「なら、答えは一択だ。 元の世界に帰れるなら、優斗と華ちゃんと一緒に帰る。 俺の勘だけど、優斗はまだ、こっちの世界に残るんだろう?」
 
 (主さまの言う事が本当なら、仁奈はもう、日本で生まれ変わってるだろうな)
 
 「ふふっ、君のその感情は本当に友情なのだろうか?」
 「友情に決まってる。 俺は優斗と華ちゃんを連れて帰るよ。 あいつは華ちゃんを置いて帰れないからな」
 
 主さまは瑠衣の言葉を聞くと、面白そうに笑った。
 
 「そう、本当に君たちは面白いね。 そうだよ、彼らはまだ、元の世界には戻れない。 次の生を全うして、魂に帰る事で、元の世界に帰れる。 君たちの魂は、あちらで生まれたのだからね。 君の望みを叶えよう。 どうせだから、オプションも付けてあげるね。 君にとっても必要だろうしね。 丁度まだ、生まれ変わるのを待っている状態だし、ふふっ、賭けは私の負けのようだ。 最初から分かってたけどね」

 主さまがにっこり笑うと、瑠衣の意識が遠のき、光の粒に包まれると、鳥籠の様な物に入れられる。 籠の中には、色とりどりの光の粒に包まれた光る球体が2体、並べて置かれた。

 「その時になったら、目覚めさせてあげる。 それまではおやすみ。 この子と一緒にね」

 主さまは、しわがれた声でそう言うと、独りでに白いカーテンが閉められた。

 ――数千年後。

 「俺は寿命を全うしたはずなんだが、何がどうしてこうなった?! 何で、俺、エルフに生まれ変わってるんだ!!」

 優斗は今、今世の父親であるエルフ(アンバー似)が牽く馬車に乗せられている。 父親は、優斗がむくれている事が面白く、クスクスと笑っている。 揺れる馬車の窓からは何処までも続く草原が拡がっていた。

 「いつまでもむくれてないでよ。 服が皺になるから寝転ばないで! ちゃんと座りなさい!」

 優斗に声を掛けてきた今世の母親であるエルフ(セレンティナアンナ似)が優斗の行儀の悪さを注意する。 優斗は母親を見ると、口を尖らせて抗議した。

 「どうして、エルフに生まれ変わってるか説明してよ」

 優斗は最近になって、前世を思い出した。 きっかけは今朝、倉庫の中だ。 何故、木刀があるのか分からなかったが、木刀に触れて全て思い出した。 実はひ孫がエルフへ嫁ぐ時、思い出にと優斗の木刀を持って来てたのだ。 ひ孫が嫁いだ時には、優斗は亡くなっていたので、記憶がないのは当たり前だ。

 「あなたに飲ませた薬はね、転生が出来る薬なのよ。 その薬に血液を混ぜるか、一緒に飲むかしたら、その血液の種族に生まれ変われるのよ。 でもね、いつ生まれ変われるか、記憶を持って生まれるかは選べないのよ。 だから、こんなに揃うなんて稀なのよね。 もしかしたら、誰かが手を入れたとかかしらね」

 セレンとアンバーは、セレンの悪戯により、幼い頃に2人とも誤って薬を飲んでしまったらしい。

 (誰かって言われたら、1人しか思いつかない。 まさか、主さまが? まさかな)
 
 「でも、華がいない世界に生まれ変わってもしょうがない! どうせなら、華のいる時代が良かった!」
 
 (瑠衣がいないのも、少し寂しいけどな)

 優斗の今の年齢は12歳だ。 生まれ変わっていて記憶があっても、実際の年齢に感情が引っ張られ、少々我儘になっている。

 「あら、言ってなかった? 今日は、ハナちゃんの婚約者を決める日なのよ。 グラディアス家の親族の中から選ばれるのよ。 良かったわね、末端の遠縁でも、グラディアス家の親族に生まれ変わっていて。 親族じゃなかったら門前払いされてたわよ」

 「それ聞いてないよ!!」
 
 (それで、こんなチャラチャラした服を着せられたのか。 つまり今日は、華が集団見合いする日なのかっ)

 優斗は白を基調としたフロックコートで、貴族のような恰好をしていた。 優斗の様子を見て、母親は意地悪な笑みを浮かべる。

 「頑張んなさいよ。 ハナちゃんに選ばれないと、婚約者になれないわよ」
 「華が覚えてる可能性は?」

 無言で微笑んだ母親の様子に、優斗は全てを察した。 溜め息を吐いて、窓の外を見ると、いつの間にか草原から森の奥深くに景色が変わっていた。 大きな木が無作為に生えていて、木の上というか、ツリーハウスの様に家が何軒も建っていた。 馬車は、ツリーハウスの中でも一番大きな木の前に止まった。

 大木の周囲に、人が1人通れるかどうかの狭い階段が、巻き付くように作られており、最上階まで上がり扉を開ける。 そこは大広間になっていた。 当然だが皆、エルフである。 白い肌に白い髪、耳が尖っていて、瞳は銀色だ。 優斗の容姿は前世と同じで、色が変わっただけで、髪質も柔らかいままだ。

 (うわぁ、皆、真っ白だ! 前世で出会う事がレアって言ってたけど、こんなにいるのか)

 優斗は今世の両親と別行動をして、華の姿を探した。 中々、見つからず、もしかしたら容姿が変わってるかも知れないと、今更ながらに気づいた。 情けなくて溜め息しか出ない。

 もう、見つからないんじゃないかと、諦めかけた時。 直ぐ後ろから聞き覚えのある声が優斗の耳に届き、心臓が大きく跳ねた。

 「あら、あなた大丈夫? 顔が真っ青よ」

 聞き覚えのある声に胸が高鳴り、振り返った視線の先に居たのは、記憶の中にある華を幼くした姿だった。 色は優斗と同じ様に変わっていて、華は優斗と視線が合うと、目を見開いて驚いた顔をした。

 「えっ! あれ、私、は」

 華は、真っ白なたっぷりのレースを使ったドレスを着ていて、周囲には優斗と同じような格好をした同じくらいの少年たちが、華を取り囲んでいた。 優斗は少年たちを見ると、目を細めて黒い笑みを向ける。

 優斗の黒い笑みに、『虫除けスプレー、噴射したい』と、ありありと出ている事が分かったのは、華だけだった。 青くなった華が優斗の手を取り、周囲の制止の声を聞かずに、ずんずんと進んだ。

 大広間を飛び出し、中庭の奥の庭園まで来た華は、振り返って『信じられない』という表情をした。

 「小鳥遊くん、だよね?」
 
 優斗は、何処かで聞いた事のある華のセリフに、にっこり笑って返した。 優斗の返答に、華は驚愕の表情を浮かべて絶叫した。
 
 「花咲だよな」
 「なんで~~~! どうなってるの~?!」

 庭園にある噴水のそばのベンチに座り、優斗がセレンの所業を説明した。 華はぽか~んと口を開けて、何も言えないでいる。 華は優斗の顔を見て、前世の記憶を思い出したらしい。 優斗は改めて、華の姿を見つめた。

 「華、綺麗だね。 12歳の華が見られるとは思わなかった」
 
 優斗の褒め言葉に、華は頬を染めたが、華も優斗をじっと見つめる。
 
 「優斗も可愛いね。 小さい王子さまみたい。 それに、優斗の少し高い声がくすぐったい」
 「まだ、声変わりしてないんだよ」

 華はキラキラとした瞳で優斗を見つめた。 優斗は、既視感に懐かしさを覚えて、目を細めた。 そして、今日が華のお見合いだと思い出し、先手を打つために華の手を取る。

 「華、今世は、前世よりも長いけど、ずっと一緒にいてくれる?」
 
 華が優斗をじっと見つめて微笑んだ。
 
 「うん。 私も、今世も優斗とずっと一緒にいたい」

 優斗と華の視線が絡まると、華が瞳を閉じる。 唇に柔らかい感触が触れ、今世で初めてのキスをした。 微笑み合うと華を抱きしめる。 優斗と華は、お見合いが終わる頃に大広間へ戻り、2人の婚約が成立した。

 ――優斗と華の成人を祝う会。
 
 華が集団お見合いをした大広間で、今日は優斗と華の成人の祝いが行われていた。 華をエスコートして、大広間へ入場する。 2人とも今日は、伝統的な民族衣装の正装をしている。

 2人が中央まで進み出ると、足元で魔法陣が展開された。 光の粒が2人を包むと、魔法陣に穴が開いて優斗と華は、穴の中へ落ちた。 優斗は華を抱き寄せ、光の中を落ちながら、既視感に主さまを思い出し、頬を引き攣らせた。 優斗たちは大木の中を落ちていき、柔らかい草地でバウンドして、川べりまで転がっていった。
 
 「まじかっ! ここって」
 華が優斗の上でむくりと起き上がり、周囲を見回すと、目を見開いて驚いた。
 「ここって」

 優斗も起き上がり、華を腹の上から膝の上へ移動させてから華を抱えると、こめかみをピクリと動かした。

 「まさかの世界樹ダンジョンだな」
 「だよね」

 優斗と華が渇いた笑い声をあげていると、背後から弾力のある跳ねる音がする。 優斗と華が振り向く前に、背中に2つの衝撃がぶつかり、軽く空気の破裂する音が鳴る。 背中でシャラシャラと、鈴の鳴るような音がした。 華の膝の上へ銀色の何かが飛び乗ると、銀色のワンピースの裾がひらりと揺れる。 背中から、聞き覚えのある小さい男の子声がした。

 「ユウトだ! 主さまの言う通りだった!」
 「ハナ! 元気だった? 主さまが言ってたの。 2人がエルフに生まれ変わって、時期に会えるって」
 「やっぱり、主さまがなんかしたのかっ」
 「フィン! フィル! 会いたかったよ」
 「ユウトはもしかして、ぼくたちと会いたくなかったの?」
 
 フィルが眉を下げて、悲しい気に見つめてくる。
 
 「そんな訳ないだろう! 会いたかったよ。 出来れば、別の場所でな」

 フィルとフィンは、不思議そうに首を傾げていた。 優斗と華は、フィルとフィンに先導され、世界樹の下へと連れていかれた。 世界樹の根元に、主さまが優し気に微笑んで座っていた。

 「やぁ、来たね。 元気そうでなりよりだ」

 優斗は頬を引き攣らせ、主さまを見つめる。 主さまが優斗を見ると、にっこりと微笑んでしわがれた声で宣った。

 「2人とも、使い慣れてる力の方がいいよね?」

 主さまがそう言うと、足元で魔法陣が展開され、突風が吹き上がる。 優斗は声にならないさけび声を上げた。 また、誰にも言えない力を授かり、今世では一体どんな無茶ぶりを主さまにされるのかと、頭を悩ませる優斗だった。 優斗の耳には、華の慰めの言葉も届かなかった。

 再び魔王が生まれるのか、次はダークエルフが相手かは分からないが、優斗と華には拒否する権利がないのかと、項垂れるしかなかった。 フィルとフィンが、また優斗たちと旅ができると楽しそうに騒いでいる。

 「君たちの今世の使命は、エルフの魔族退治事業の復活だからね」
 「えっ! でも、主さま言ってませんでしたか? 世界樹ダンジョンは、魔王を倒す為の力を授かるダンジョンだって、だから魔王退治する為に呼ばれたんじゃ?」
 「うん、だからね。 前回みたいに魔王が生まれる前に倒す方が、相手も弱くて楽でしょ? だから、今回もそうしてもらおうと思って♪ それとは別に、魔族退治事業を並走してやってもらおうと思ったんだよ」
 「主さまは、基本、不可侵なんじゃっ!!」
 「うん、でも、君たちを見るのは、面白そうだから♪」

 主さまは、にっこり笑って、楽しそうに宣った。 もう1つ、主さまが仕掛けたサプライズに、優斗と華は驚愕した。 理由を訊くと、とても奴らしくて、優斗の胸が熱くなった。 優斗たちの受難は、まだまだ続きそうだ。 なんせ今世は、800年位は、寿命があるのだから。
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