46 / 46
46話 月日は巡る
しおりを挟む
「「「「祝! 20歳に乾杯!!」」」」
「「何か分からないけど、取り敢えずおめでとう!!」」
リビングに明るい声が響いた。 優斗たちの手には、お酒の入ったグラスが持たれている。 フィルとフィンはジュース。 2人はお酒を飲まない。 あれから異世界へ落とされて3年が経っていた。
優斗たちは、異世界での生活の中で、皆が無事に20歳を迎えられたら、お祝いしようと話し合っていた。 優斗たちに刷り込まれていた『お酒は20歳になってから』が気持ち的に解禁され、初めてのお酒を口にしていた。 リビングのソファーで寛ぎながら、ビールを片手に天井を見上げる瑠衣がしみじみと言った。
「無事に20歳になって良かったよなぁ。 俺らって普通なら絶対に何回も死んでるはず」
瑠衣の言葉に今までの事を思いだして、優斗たちの頬が引き攣った。 瑠衣がしんみりしているのを他所に、仁奈が優斗と華に問いかける。
「そんな事よりさ、王子と華はいつ結婚するの?」
優斗と華が同時にお酒を吹き出した後、優斗がしどろもどろになりながら『あ、えと、それはまだ……』と答えた。 優斗の答えに、仁奈が細めた目は『相変わらずヘタレだな』と言っており、優斗の隣に座る華がそっと優斗のフォローをした。
「私たちまだ、20歳だし。 普通に考えたら、元の世界だとまだ学生だよね、きっと」
「そうだよね。 大学生かぁ。 私はあんまり勉強好きじゃなかったから、行ってないかも」
隣で座る仁奈に、瑠衣が呆れた声を出す。
「大学行かずに働くの? それ、きついだろう」
「学歴社会反対!!」
「仁奈、それいつの時代だよ」
優斗からは乾いた笑い声しか出なかった。 優斗と華には、使命がある。 子をなして、子孫をエルフと結婚させるという使命が、優斗と華の肩にのしかかっている。 しかし優斗は『無理にエルフと結婚させなくてもいいよな』と思っていたりする。
初めてお酒を飲んで分かった事、優斗たちは今後、お酒を飲まない方がいいという事だ。 華以外はだが。 仁奈は一口飲んで眠ってしまい、見た目で強そうだった瑠衣は、2杯が限界だった。
華は、ザルだった。 全く顔色が変わらない上に、酔ってもいない様だった。 優斗はというと、頑張って3・4杯だった。 優斗が覚えているのは、華に連れられて部屋へ戻った事。 覚束ない足元が縺れて、華をベッドへ押し倒し、何か呟いた事だ。 その後は、酔いつぶれて眠ってしまい、何も覚えていない。
酔いつぶれた朝の頭に、監視スキルの声が響く。 二日酔いなのか、ズキズキと痛む頭に、監視スキルの声は堪えた。
『【花咲華を守る】スキル、【透視】と【傍聴】スキルを開始します。 就寝中の危険はありませんでした。 今朝の花咲華の映像を送ります』
(ん? どうした? 最近は、いつも実況中継だけだったのにっ。 二日酔いだからか? 制御が出来なくなってるのか?)
優斗の脳内に、華の映像が流れ込んで来たと同時に、優斗の直ぐ後ろで人の気配がする。 背中に感じる人の気配が寝返りをうつと、優斗の脳内の映像の華も寝返りをうった。
(まさか、あのまま一緒に寝たのかっ! 俺、何もしてないよなっ!)
隣で寝ている華を起こさない様に、そっと掛け布団を捲って、ホッと安堵の息を吐いて、またそっと華を起こさない様に掛け布団を掛けた。
(良かった! 2人とも部屋着のままだ。 酔った勢いなんて最悪だしな。 でも、華に何か言ったような気がするんだけど。 ダメだ、何も思い出させない)
『昨晩の就寝前の映像を流しますか?』
優斗は暫く考え、再生する事にした。 脳内で昨晩の映像が再生されると、優斗の喉が鳴った。 映像は、お酒が入っている所為か、ゆらゆらと揺れていて、たまに途切れてしまう。 優斗が華に連れられて、自身の部屋へ入ると、よたよたとベッドまで近づく。
(俺、めちゃかっこ悪いなっ。 もっとしっかり歩けよっ)
優斗の足が縺れ、華をベッドへ押し倒し、華のアップが映し出された。 華の瞳は潤んでいて、顔は真っ赤に染まっている。 優斗が発した言葉に、華の瞳が大きく開かれる。
『華、結婚しよう。 お互いが死ぬまで、ずっと一緒にいよう。 もし、俺が先に死ぬ時が来たら、俺の全魔力を、華を守る監視スキルに全振りしてから死ぬよ。 そしたら、俺が先に死んでも、俺の魔力が切れるまでは、華を守れるから』
『たかな、優斗くん?!』
華はあれから、3年も経つのに、呼び方が『小鳥遊くん』と『優斗くん』を行ったり来たりしている。 一向に『優斗』と呼ばない華に焦れた優斗が黒い笑みを浮かべる。
『華はいつになったら『優斗』って呼んでくれるんだ?』
そう言うと、華に覆いかぶさる。 華が『たかっ』と優斗を呼ぶ声が途中で切れ、映像も切れた。 ここで眠ってしまったらしい。 優斗は深い溜め息を吐いて、両手で顔を覆う。
(最悪だ! 酔った勢いでプロポーズって! いくら何でも、それはないだろう)
隣で寝ている華が、いつの間にか起きていて、優斗の脳内の映像に流れてくる。 優斗は直接、華の顔が見られなった。 優斗の様子に、何処まで察しているのか分からないが、映像の華はにっこり微笑んだ。
「おはよう、優斗」
華の笑顔と、初めて求めていた呼び方で呼ばれ、優斗が撃沈したのは言うまでもない。 優斗が無しだろうと思われたプロポーズが、何故か華には響いていて、返事は『私も優斗が先に死なない様に全力で守るよ』だった。
(やっぱり、華はズレてるな。 普通は、酔っぱらってプロポーズなんて、怒るところなのにっ。 本当に華は、面白くて可愛いな)
優斗がくしゃりと顔を細めて微笑むと、華と唇が重なる。 突然のキスに、華は瞳を大きく開いて驚いていた。 後日、優斗が納得いかないので、プロポーズの仕切り直しをした。
優斗たちが細々と始めたお店は、皆で協力しながら運営して、赤字にならない程度には稼げていた。 勿論、冒険者も続けながら、異世界生活に馴染んでいった。 優斗と華が結婚した後も、隠れ家での4人の生活は変わらなかった。 優斗と華の子供が生まれる頃、瑠衣と仁奈も結婚し、ひ孫が生まれる頃には、隠れ家は小さい村にまで発展していた。
優斗と華の子供と、瑠衣と仁奈の子供が結婚したり、優斗たちのひ孫が、何故かレアなエルフと出会った。 そして、セレンとの約束通り、結婚した。 優斗たちは元の世界に戻る事無く、異世界生活を満喫して、寿命を全うし、優斗の酔っぱらってしたプロポーズの約束も果たされた。
――「君の寿命は尽きた。 私の管理する世界の所為で、君の運命を変えてしまった事、本当に申し訳なく思っている。 その代わりに次の人生は、君が生まれ変わりたいものに変えて上げよう。 何が良いかな?」
主さまが目の前に立ち、しわがれた声で微笑んでいる。 相変わらず年齢と性別が分からない姿をしている。 瑠衣は全てが真っ白な世界にいた。
「もしかして、元の世界で生まれ変わるのか?」
「うん、そうだよ。 私の作った身体から抜け出した君の魂は、元の世界、日本で生まれ変わる」
瑠衣は主さまの話を聞き、考えて答えを出した。
「なら、答えは一択だ。 元の世界に帰れるなら、優斗と華ちゃんと一緒に帰る。 俺の勘だけど、優斗はまだ、こっちの世界に残るんだろう?」
(主さまの言う事が本当なら、仁奈はもう、日本で生まれ変わってるだろうな)
「ふふっ、君のその感情は本当に友情なのだろうか?」
「友情に決まってる。 俺は優斗と華ちゃんを連れて帰るよ。 あいつは華ちゃんを置いて帰れないからな」
主さまは瑠衣の言葉を聞くと、面白そうに笑った。
「そう、本当に君たちは面白いね。 そうだよ、彼らはまだ、元の世界には戻れない。 次の生を全うして、魂に帰る事で、元の世界に帰れる。 君たちの魂は、あちらで生まれたのだからね。 君の望みを叶えよう。 どうせだから、オプションも付けてあげるね。 君にとっても必要だろうしね。 丁度まだ、生まれ変わるのを待っている状態だし、ふふっ、賭けは私の負けのようだ。 最初から分かってたけどね」
主さまがにっこり笑うと、瑠衣の意識が遠のき、光の粒に包まれると、鳥籠の様な物に入れられる。 籠の中には、色とりどりの光の粒に包まれた光る球体が2体、並べて置かれた。
「その時になったら、目覚めさせてあげる。 それまではおやすみ。 この子と一緒にね」
主さまは、しわがれた声でそう言うと、独りでに白いカーテンが閉められた。
――数千年後。
「俺は寿命を全うしたはずなんだが、何がどうしてこうなった?! 何で、俺、エルフに生まれ変わってるんだ!!」
優斗は今、今世の父親であるエルフ(アンバー似)が牽く馬車に乗せられている。 父親は、優斗がむくれている事が面白く、クスクスと笑っている。 揺れる馬車の窓からは何処までも続く草原が拡がっていた。
「いつまでもむくれてないでよ。 服が皺になるから寝転ばないで! ちゃんと座りなさい!」
優斗に声を掛けてきた今世の母親であるエルフ(セレンティナアンナ似)が優斗の行儀の悪さを注意する。 優斗は母親を見ると、口を尖らせて抗議した。
「どうして、エルフに生まれ変わってるか説明してよ」
優斗は最近になって、前世を思い出した。 きっかけは今朝、倉庫の中だ。 何故、木刀があるのか分からなかったが、木刀に触れて全て思い出した。 実はひ孫がエルフへ嫁ぐ時、思い出にと優斗の木刀を持って来てたのだ。 ひ孫が嫁いだ時には、優斗は亡くなっていたので、記憶がないのは当たり前だ。
「あなたに飲ませた薬はね、転生が出来る薬なのよ。 その薬に血液を混ぜるか、一緒に飲むかしたら、その血液の種族に生まれ変われるのよ。 でもね、いつ生まれ変われるか、記憶を持って生まれるかは選べないのよ。 だから、こんなに揃うなんて稀なのよね。 もしかしたら、誰かが手を入れたとかかしらね」
セレンとアンバーは、セレンの悪戯により、幼い頃に2人とも誤って薬を飲んでしまったらしい。
(誰かって言われたら、1人しか思いつかない。 まさか、主さまが? まさかな)
「でも、華がいない世界に生まれ変わってもしょうがない! どうせなら、華のいる時代が良かった!」
(瑠衣がいないのも、少し寂しいけどな)
優斗の今の年齢は12歳だ。 生まれ変わっていて記憶があっても、実際の年齢に感情が引っ張られ、少々我儘になっている。
「あら、言ってなかった? 今日は、ハナちゃんの婚約者を決める日なのよ。 グラディアス家の親族の中から選ばれるのよ。 良かったわね、末端の遠縁でも、グラディアス家の親族に生まれ変わっていて。 親族じゃなかったら門前払いされてたわよ」
「それ聞いてないよ!!」
(それで、こんなチャラチャラした服を着せられたのか。 つまり今日は、華が集団見合いする日なのかっ)
優斗は白を基調としたフロックコートで、貴族のような恰好をしていた。 優斗の様子を見て、母親は意地悪な笑みを浮かべる。
「頑張んなさいよ。 ハナちゃんに選ばれないと、婚約者になれないわよ」
「華が覚えてる可能性は?」
無言で微笑んだ母親の様子に、優斗は全てを察した。 溜め息を吐いて、窓の外を見ると、いつの間にか草原から森の奥深くに景色が変わっていた。 大きな木が無作為に生えていて、木の上というか、ツリーハウスの様に家が何軒も建っていた。 馬車は、ツリーハウスの中でも一番大きな木の前に止まった。
大木の周囲に、人が1人通れるかどうかの狭い階段が、巻き付くように作られており、最上階まで上がり扉を開ける。 そこは大広間になっていた。 当然だが皆、エルフである。 白い肌に白い髪、耳が尖っていて、瞳は銀色だ。 優斗の容姿は前世と同じで、色が変わっただけで、髪質も柔らかいままだ。
(うわぁ、皆、真っ白だ! 前世で出会う事がレアって言ってたけど、こんなにいるのか)
優斗は今世の両親と別行動をして、華の姿を探した。 中々、見つからず、もしかしたら容姿が変わってるかも知れないと、今更ながらに気づいた。 情けなくて溜め息しか出ない。
もう、見つからないんじゃないかと、諦めかけた時。 直ぐ後ろから聞き覚えのある声が優斗の耳に届き、心臓が大きく跳ねた。
「あら、あなた大丈夫? 顔が真っ青よ」
聞き覚えのある声に胸が高鳴り、振り返った視線の先に居たのは、記憶の中にある華を幼くした姿だった。 色は優斗と同じ様に変わっていて、華は優斗と視線が合うと、目を見開いて驚いた顔をした。
「えっ! あれ、私、は」
華は、真っ白なたっぷりのレースを使ったドレスを着ていて、周囲には優斗と同じような格好をした同じくらいの少年たちが、華を取り囲んでいた。 優斗は少年たちを見ると、目を細めて黒い笑みを向ける。
優斗の黒い笑みに、『虫除けスプレー、噴射したい』と、ありありと出ている事が分かったのは、華だけだった。 青くなった華が優斗の手を取り、周囲の制止の声を聞かずに、ずんずんと進んだ。
大広間を飛び出し、中庭の奥の庭園まで来た華は、振り返って『信じられない』という表情をした。
「小鳥遊くん、だよね?」
優斗は、何処かで聞いた事のある華のセリフに、にっこり笑って返した。 優斗の返答に、華は驚愕の表情を浮かべて絶叫した。
「花咲だよな」
「なんで~~~! どうなってるの~?!」
庭園にある噴水のそばのベンチに座り、優斗がセレンの所業を説明した。 華はぽか~んと口を開けて、何も言えないでいる。 華は優斗の顔を見て、前世の記憶を思い出したらしい。 優斗は改めて、華の姿を見つめた。
「華、綺麗だね。 12歳の華が見られるとは思わなかった」
優斗の褒め言葉に、華は頬を染めたが、華も優斗をじっと見つめる。
「優斗も可愛いね。 小さい王子さまみたい。 それに、優斗の少し高い声がくすぐったい」
「まだ、声変わりしてないんだよ」
華はキラキラとした瞳で優斗を見つめた。 優斗は、既視感に懐かしさを覚えて、目を細めた。 そして、今日が華のお見合いだと思い出し、先手を打つために華の手を取る。
「華、今世は、前世よりも長いけど、ずっと一緒にいてくれる?」
華が優斗をじっと見つめて微笑んだ。
「うん。 私も、今世も優斗とずっと一緒にいたい」
優斗と華の視線が絡まると、華が瞳を閉じる。 唇に柔らかい感触が触れ、今世で初めてのキスをした。 微笑み合うと華を抱きしめる。 優斗と華は、お見合いが終わる頃に大広間へ戻り、2人の婚約が成立した。
――優斗と華の成人を祝う会。
華が集団お見合いをした大広間で、今日は優斗と華の成人の祝いが行われていた。 華をエスコートして、大広間へ入場する。 2人とも今日は、伝統的な民族衣装の正装をしている。
2人が中央まで進み出ると、足元で魔法陣が展開された。 光の粒が2人を包むと、魔法陣に穴が開いて優斗と華は、穴の中へ落ちた。 優斗は華を抱き寄せ、光の中を落ちながら、既視感に主さまを思い出し、頬を引き攣らせた。 優斗たちは大木の中を落ちていき、柔らかい草地でバウンドして、川べりまで転がっていった。
「まじかっ! ここって」
華が優斗の上でむくりと起き上がり、周囲を見回すと、目を見開いて驚いた。
「ここって」
優斗も起き上がり、華を腹の上から膝の上へ移動させてから華を抱えると、こめかみをピクリと動かした。
「まさかの世界樹ダンジョンだな」
「だよね」
優斗と華が渇いた笑い声をあげていると、背後から弾力のある跳ねる音がする。 優斗と華が振り向く前に、背中に2つの衝撃がぶつかり、軽く空気の破裂する音が鳴る。 背中でシャラシャラと、鈴の鳴るような音がした。 華の膝の上へ銀色の何かが飛び乗ると、銀色のワンピースの裾がひらりと揺れる。 背中から、聞き覚えのある小さい男の子声がした。
「ユウトだ! 主さまの言う通りだった!」
「ハナ! 元気だった? 主さまが言ってたの。 2人がエルフに生まれ変わって、時期に会えるって」
「やっぱり、主さまがなんかしたのかっ」
「フィン! フィル! 会いたかったよ」
「ユウトはもしかして、ぼくたちと会いたくなかったの?」
フィルが眉を下げて、悲しい気に見つめてくる。
「そんな訳ないだろう! 会いたかったよ。 出来れば、別の場所でな」
フィルとフィンは、不思議そうに首を傾げていた。 優斗と華は、フィルとフィンに先導され、世界樹の下へと連れていかれた。 世界樹の根元に、主さまが優し気に微笑んで座っていた。
「やぁ、来たね。 元気そうでなりよりだ」
優斗は頬を引き攣らせ、主さまを見つめる。 主さまが優斗を見ると、にっこりと微笑んでしわがれた声で宣った。
「2人とも、使い慣れてる力の方がいいよね?」
主さまがそう言うと、足元で魔法陣が展開され、突風が吹き上がる。 優斗は声にならないさけび声を上げた。 また、誰にも言えない力を授かり、今世では一体どんな無茶ぶりを主さまにされるのかと、頭を悩ませる優斗だった。 優斗の耳には、華の慰めの言葉も届かなかった。
再び魔王が生まれるのか、次はダークエルフが相手かは分からないが、優斗と華には拒否する権利がないのかと、項垂れるしかなかった。 フィルとフィンが、また優斗たちと旅ができると楽しそうに騒いでいる。
「君たちの今世の使命は、エルフの魔族退治事業の復活だからね」
「えっ! でも、主さま言ってませんでしたか? 世界樹ダンジョンは、魔王を倒す為の力を授かるダンジョンだって、だから魔王退治する為に呼ばれたんじゃ?」
「うん、だからね。 前回みたいに魔王が生まれる前に倒す方が、相手も弱くて楽でしょ? だから、今回もそうしてもらおうと思って♪ それとは別に、魔族退治事業を並走してやってもらおうと思ったんだよ」
「主さまは、基本、不可侵なんじゃっ!!」
「うん、でも、君たちを見るのは、面白そうだから♪」
主さまは、にっこり笑って、楽しそうに宣った。 もう1つ、主さまが仕掛けたサプライズに、優斗と華は驚愕した。 理由を訊くと、とても奴らしくて、優斗の胸が熱くなった。 優斗たちの受難は、まだまだ続きそうだ。 なんせ今世は、800年位は、寿命があるのだから。
「「何か分からないけど、取り敢えずおめでとう!!」」
リビングに明るい声が響いた。 優斗たちの手には、お酒の入ったグラスが持たれている。 フィルとフィンはジュース。 2人はお酒を飲まない。 あれから異世界へ落とされて3年が経っていた。
優斗たちは、異世界での生活の中で、皆が無事に20歳を迎えられたら、お祝いしようと話し合っていた。 優斗たちに刷り込まれていた『お酒は20歳になってから』が気持ち的に解禁され、初めてのお酒を口にしていた。 リビングのソファーで寛ぎながら、ビールを片手に天井を見上げる瑠衣がしみじみと言った。
「無事に20歳になって良かったよなぁ。 俺らって普通なら絶対に何回も死んでるはず」
瑠衣の言葉に今までの事を思いだして、優斗たちの頬が引き攣った。 瑠衣がしんみりしているのを他所に、仁奈が優斗と華に問いかける。
「そんな事よりさ、王子と華はいつ結婚するの?」
優斗と華が同時にお酒を吹き出した後、優斗がしどろもどろになりながら『あ、えと、それはまだ……』と答えた。 優斗の答えに、仁奈が細めた目は『相変わらずヘタレだな』と言っており、優斗の隣に座る華がそっと優斗のフォローをした。
「私たちまだ、20歳だし。 普通に考えたら、元の世界だとまだ学生だよね、きっと」
「そうだよね。 大学生かぁ。 私はあんまり勉強好きじゃなかったから、行ってないかも」
隣で座る仁奈に、瑠衣が呆れた声を出す。
「大学行かずに働くの? それ、きついだろう」
「学歴社会反対!!」
「仁奈、それいつの時代だよ」
優斗からは乾いた笑い声しか出なかった。 優斗と華には、使命がある。 子をなして、子孫をエルフと結婚させるという使命が、優斗と華の肩にのしかかっている。 しかし優斗は『無理にエルフと結婚させなくてもいいよな』と思っていたりする。
初めてお酒を飲んで分かった事、優斗たちは今後、お酒を飲まない方がいいという事だ。 華以外はだが。 仁奈は一口飲んで眠ってしまい、見た目で強そうだった瑠衣は、2杯が限界だった。
華は、ザルだった。 全く顔色が変わらない上に、酔ってもいない様だった。 優斗はというと、頑張って3・4杯だった。 優斗が覚えているのは、華に連れられて部屋へ戻った事。 覚束ない足元が縺れて、華をベッドへ押し倒し、何か呟いた事だ。 その後は、酔いつぶれて眠ってしまい、何も覚えていない。
酔いつぶれた朝の頭に、監視スキルの声が響く。 二日酔いなのか、ズキズキと痛む頭に、監視スキルの声は堪えた。
『【花咲華を守る】スキル、【透視】と【傍聴】スキルを開始します。 就寝中の危険はありませんでした。 今朝の花咲華の映像を送ります』
(ん? どうした? 最近は、いつも実況中継だけだったのにっ。 二日酔いだからか? 制御が出来なくなってるのか?)
優斗の脳内に、華の映像が流れ込んで来たと同時に、優斗の直ぐ後ろで人の気配がする。 背中に感じる人の気配が寝返りをうつと、優斗の脳内の映像の華も寝返りをうった。
(まさか、あのまま一緒に寝たのかっ! 俺、何もしてないよなっ!)
隣で寝ている華を起こさない様に、そっと掛け布団を捲って、ホッと安堵の息を吐いて、またそっと華を起こさない様に掛け布団を掛けた。
(良かった! 2人とも部屋着のままだ。 酔った勢いなんて最悪だしな。 でも、華に何か言ったような気がするんだけど。 ダメだ、何も思い出させない)
『昨晩の就寝前の映像を流しますか?』
優斗は暫く考え、再生する事にした。 脳内で昨晩の映像が再生されると、優斗の喉が鳴った。 映像は、お酒が入っている所為か、ゆらゆらと揺れていて、たまに途切れてしまう。 優斗が華に連れられて、自身の部屋へ入ると、よたよたとベッドまで近づく。
(俺、めちゃかっこ悪いなっ。 もっとしっかり歩けよっ)
優斗の足が縺れ、華をベッドへ押し倒し、華のアップが映し出された。 華の瞳は潤んでいて、顔は真っ赤に染まっている。 優斗が発した言葉に、華の瞳が大きく開かれる。
『華、結婚しよう。 お互いが死ぬまで、ずっと一緒にいよう。 もし、俺が先に死ぬ時が来たら、俺の全魔力を、華を守る監視スキルに全振りしてから死ぬよ。 そしたら、俺が先に死んでも、俺の魔力が切れるまでは、華を守れるから』
『たかな、優斗くん?!』
華はあれから、3年も経つのに、呼び方が『小鳥遊くん』と『優斗くん』を行ったり来たりしている。 一向に『優斗』と呼ばない華に焦れた優斗が黒い笑みを浮かべる。
『華はいつになったら『優斗』って呼んでくれるんだ?』
そう言うと、華に覆いかぶさる。 華が『たかっ』と優斗を呼ぶ声が途中で切れ、映像も切れた。 ここで眠ってしまったらしい。 優斗は深い溜め息を吐いて、両手で顔を覆う。
(最悪だ! 酔った勢いでプロポーズって! いくら何でも、それはないだろう)
隣で寝ている華が、いつの間にか起きていて、優斗の脳内の映像に流れてくる。 優斗は直接、華の顔が見られなった。 優斗の様子に、何処まで察しているのか分からないが、映像の華はにっこり微笑んだ。
「おはよう、優斗」
華の笑顔と、初めて求めていた呼び方で呼ばれ、優斗が撃沈したのは言うまでもない。 優斗が無しだろうと思われたプロポーズが、何故か華には響いていて、返事は『私も優斗が先に死なない様に全力で守るよ』だった。
(やっぱり、華はズレてるな。 普通は、酔っぱらってプロポーズなんて、怒るところなのにっ。 本当に華は、面白くて可愛いな)
優斗がくしゃりと顔を細めて微笑むと、華と唇が重なる。 突然のキスに、華は瞳を大きく開いて驚いていた。 後日、優斗が納得いかないので、プロポーズの仕切り直しをした。
優斗たちが細々と始めたお店は、皆で協力しながら運営して、赤字にならない程度には稼げていた。 勿論、冒険者も続けながら、異世界生活に馴染んでいった。 優斗と華が結婚した後も、隠れ家での4人の生活は変わらなかった。 優斗と華の子供が生まれる頃、瑠衣と仁奈も結婚し、ひ孫が生まれる頃には、隠れ家は小さい村にまで発展していた。
優斗と華の子供と、瑠衣と仁奈の子供が結婚したり、優斗たちのひ孫が、何故かレアなエルフと出会った。 そして、セレンとの約束通り、結婚した。 優斗たちは元の世界に戻る事無く、異世界生活を満喫して、寿命を全うし、優斗の酔っぱらってしたプロポーズの約束も果たされた。
――「君の寿命は尽きた。 私の管理する世界の所為で、君の運命を変えてしまった事、本当に申し訳なく思っている。 その代わりに次の人生は、君が生まれ変わりたいものに変えて上げよう。 何が良いかな?」
主さまが目の前に立ち、しわがれた声で微笑んでいる。 相変わらず年齢と性別が分からない姿をしている。 瑠衣は全てが真っ白な世界にいた。
「もしかして、元の世界で生まれ変わるのか?」
「うん、そうだよ。 私の作った身体から抜け出した君の魂は、元の世界、日本で生まれ変わる」
瑠衣は主さまの話を聞き、考えて答えを出した。
「なら、答えは一択だ。 元の世界に帰れるなら、優斗と華ちゃんと一緒に帰る。 俺の勘だけど、優斗はまだ、こっちの世界に残るんだろう?」
(主さまの言う事が本当なら、仁奈はもう、日本で生まれ変わってるだろうな)
「ふふっ、君のその感情は本当に友情なのだろうか?」
「友情に決まってる。 俺は優斗と華ちゃんを連れて帰るよ。 あいつは華ちゃんを置いて帰れないからな」
主さまは瑠衣の言葉を聞くと、面白そうに笑った。
「そう、本当に君たちは面白いね。 そうだよ、彼らはまだ、元の世界には戻れない。 次の生を全うして、魂に帰る事で、元の世界に帰れる。 君たちの魂は、あちらで生まれたのだからね。 君の望みを叶えよう。 どうせだから、オプションも付けてあげるね。 君にとっても必要だろうしね。 丁度まだ、生まれ変わるのを待っている状態だし、ふふっ、賭けは私の負けのようだ。 最初から分かってたけどね」
主さまがにっこり笑うと、瑠衣の意識が遠のき、光の粒に包まれると、鳥籠の様な物に入れられる。 籠の中には、色とりどりの光の粒に包まれた光る球体が2体、並べて置かれた。
「その時になったら、目覚めさせてあげる。 それまではおやすみ。 この子と一緒にね」
主さまは、しわがれた声でそう言うと、独りでに白いカーテンが閉められた。
――数千年後。
「俺は寿命を全うしたはずなんだが、何がどうしてこうなった?! 何で、俺、エルフに生まれ変わってるんだ!!」
優斗は今、今世の父親であるエルフ(アンバー似)が牽く馬車に乗せられている。 父親は、優斗がむくれている事が面白く、クスクスと笑っている。 揺れる馬車の窓からは何処までも続く草原が拡がっていた。
「いつまでもむくれてないでよ。 服が皺になるから寝転ばないで! ちゃんと座りなさい!」
優斗に声を掛けてきた今世の母親であるエルフ(セレンティナアンナ似)が優斗の行儀の悪さを注意する。 優斗は母親を見ると、口を尖らせて抗議した。
「どうして、エルフに生まれ変わってるか説明してよ」
優斗は最近になって、前世を思い出した。 きっかけは今朝、倉庫の中だ。 何故、木刀があるのか分からなかったが、木刀に触れて全て思い出した。 実はひ孫がエルフへ嫁ぐ時、思い出にと優斗の木刀を持って来てたのだ。 ひ孫が嫁いだ時には、優斗は亡くなっていたので、記憶がないのは当たり前だ。
「あなたに飲ませた薬はね、転生が出来る薬なのよ。 その薬に血液を混ぜるか、一緒に飲むかしたら、その血液の種族に生まれ変われるのよ。 でもね、いつ生まれ変われるか、記憶を持って生まれるかは選べないのよ。 だから、こんなに揃うなんて稀なのよね。 もしかしたら、誰かが手を入れたとかかしらね」
セレンとアンバーは、セレンの悪戯により、幼い頃に2人とも誤って薬を飲んでしまったらしい。
(誰かって言われたら、1人しか思いつかない。 まさか、主さまが? まさかな)
「でも、華がいない世界に生まれ変わってもしょうがない! どうせなら、華のいる時代が良かった!」
(瑠衣がいないのも、少し寂しいけどな)
優斗の今の年齢は12歳だ。 生まれ変わっていて記憶があっても、実際の年齢に感情が引っ張られ、少々我儘になっている。
「あら、言ってなかった? 今日は、ハナちゃんの婚約者を決める日なのよ。 グラディアス家の親族の中から選ばれるのよ。 良かったわね、末端の遠縁でも、グラディアス家の親族に生まれ変わっていて。 親族じゃなかったら門前払いされてたわよ」
「それ聞いてないよ!!」
(それで、こんなチャラチャラした服を着せられたのか。 つまり今日は、華が集団見合いする日なのかっ)
優斗は白を基調としたフロックコートで、貴族のような恰好をしていた。 優斗の様子を見て、母親は意地悪な笑みを浮かべる。
「頑張んなさいよ。 ハナちゃんに選ばれないと、婚約者になれないわよ」
「華が覚えてる可能性は?」
無言で微笑んだ母親の様子に、優斗は全てを察した。 溜め息を吐いて、窓の外を見ると、いつの間にか草原から森の奥深くに景色が変わっていた。 大きな木が無作為に生えていて、木の上というか、ツリーハウスの様に家が何軒も建っていた。 馬車は、ツリーハウスの中でも一番大きな木の前に止まった。
大木の周囲に、人が1人通れるかどうかの狭い階段が、巻き付くように作られており、最上階まで上がり扉を開ける。 そこは大広間になっていた。 当然だが皆、エルフである。 白い肌に白い髪、耳が尖っていて、瞳は銀色だ。 優斗の容姿は前世と同じで、色が変わっただけで、髪質も柔らかいままだ。
(うわぁ、皆、真っ白だ! 前世で出会う事がレアって言ってたけど、こんなにいるのか)
優斗は今世の両親と別行動をして、華の姿を探した。 中々、見つからず、もしかしたら容姿が変わってるかも知れないと、今更ながらに気づいた。 情けなくて溜め息しか出ない。
もう、見つからないんじゃないかと、諦めかけた時。 直ぐ後ろから聞き覚えのある声が優斗の耳に届き、心臓が大きく跳ねた。
「あら、あなた大丈夫? 顔が真っ青よ」
聞き覚えのある声に胸が高鳴り、振り返った視線の先に居たのは、記憶の中にある華を幼くした姿だった。 色は優斗と同じ様に変わっていて、華は優斗と視線が合うと、目を見開いて驚いた顔をした。
「えっ! あれ、私、は」
華は、真っ白なたっぷりのレースを使ったドレスを着ていて、周囲には優斗と同じような格好をした同じくらいの少年たちが、華を取り囲んでいた。 優斗は少年たちを見ると、目を細めて黒い笑みを向ける。
優斗の黒い笑みに、『虫除けスプレー、噴射したい』と、ありありと出ている事が分かったのは、華だけだった。 青くなった華が優斗の手を取り、周囲の制止の声を聞かずに、ずんずんと進んだ。
大広間を飛び出し、中庭の奥の庭園まで来た華は、振り返って『信じられない』という表情をした。
「小鳥遊くん、だよね?」
優斗は、何処かで聞いた事のある華のセリフに、にっこり笑って返した。 優斗の返答に、華は驚愕の表情を浮かべて絶叫した。
「花咲だよな」
「なんで~~~! どうなってるの~?!」
庭園にある噴水のそばのベンチに座り、優斗がセレンの所業を説明した。 華はぽか~んと口を開けて、何も言えないでいる。 華は優斗の顔を見て、前世の記憶を思い出したらしい。 優斗は改めて、華の姿を見つめた。
「華、綺麗だね。 12歳の華が見られるとは思わなかった」
優斗の褒め言葉に、華は頬を染めたが、華も優斗をじっと見つめる。
「優斗も可愛いね。 小さい王子さまみたい。 それに、優斗の少し高い声がくすぐったい」
「まだ、声変わりしてないんだよ」
華はキラキラとした瞳で優斗を見つめた。 優斗は、既視感に懐かしさを覚えて、目を細めた。 そして、今日が華のお見合いだと思い出し、先手を打つために華の手を取る。
「華、今世は、前世よりも長いけど、ずっと一緒にいてくれる?」
華が優斗をじっと見つめて微笑んだ。
「うん。 私も、今世も優斗とずっと一緒にいたい」
優斗と華の視線が絡まると、華が瞳を閉じる。 唇に柔らかい感触が触れ、今世で初めてのキスをした。 微笑み合うと華を抱きしめる。 優斗と華は、お見合いが終わる頃に大広間へ戻り、2人の婚約が成立した。
――優斗と華の成人を祝う会。
華が集団お見合いをした大広間で、今日は優斗と華の成人の祝いが行われていた。 華をエスコートして、大広間へ入場する。 2人とも今日は、伝統的な民族衣装の正装をしている。
2人が中央まで進み出ると、足元で魔法陣が展開された。 光の粒が2人を包むと、魔法陣に穴が開いて優斗と華は、穴の中へ落ちた。 優斗は華を抱き寄せ、光の中を落ちながら、既視感に主さまを思い出し、頬を引き攣らせた。 優斗たちは大木の中を落ちていき、柔らかい草地でバウンドして、川べりまで転がっていった。
「まじかっ! ここって」
華が優斗の上でむくりと起き上がり、周囲を見回すと、目を見開いて驚いた。
「ここって」
優斗も起き上がり、華を腹の上から膝の上へ移動させてから華を抱えると、こめかみをピクリと動かした。
「まさかの世界樹ダンジョンだな」
「だよね」
優斗と華が渇いた笑い声をあげていると、背後から弾力のある跳ねる音がする。 優斗と華が振り向く前に、背中に2つの衝撃がぶつかり、軽く空気の破裂する音が鳴る。 背中でシャラシャラと、鈴の鳴るような音がした。 華の膝の上へ銀色の何かが飛び乗ると、銀色のワンピースの裾がひらりと揺れる。 背中から、聞き覚えのある小さい男の子声がした。
「ユウトだ! 主さまの言う通りだった!」
「ハナ! 元気だった? 主さまが言ってたの。 2人がエルフに生まれ変わって、時期に会えるって」
「やっぱり、主さまがなんかしたのかっ」
「フィン! フィル! 会いたかったよ」
「ユウトはもしかして、ぼくたちと会いたくなかったの?」
フィルが眉を下げて、悲しい気に見つめてくる。
「そんな訳ないだろう! 会いたかったよ。 出来れば、別の場所でな」
フィルとフィンは、不思議そうに首を傾げていた。 優斗と華は、フィルとフィンに先導され、世界樹の下へと連れていかれた。 世界樹の根元に、主さまが優し気に微笑んで座っていた。
「やぁ、来たね。 元気そうでなりよりだ」
優斗は頬を引き攣らせ、主さまを見つめる。 主さまが優斗を見ると、にっこりと微笑んでしわがれた声で宣った。
「2人とも、使い慣れてる力の方がいいよね?」
主さまがそう言うと、足元で魔法陣が展開され、突風が吹き上がる。 優斗は声にならないさけび声を上げた。 また、誰にも言えない力を授かり、今世では一体どんな無茶ぶりを主さまにされるのかと、頭を悩ませる優斗だった。 優斗の耳には、華の慰めの言葉も届かなかった。
再び魔王が生まれるのか、次はダークエルフが相手かは分からないが、優斗と華には拒否する権利がないのかと、項垂れるしかなかった。 フィルとフィンが、また優斗たちと旅ができると楽しそうに騒いでいる。
「君たちの今世の使命は、エルフの魔族退治事業の復活だからね」
「えっ! でも、主さま言ってませんでしたか? 世界樹ダンジョンは、魔王を倒す為の力を授かるダンジョンだって、だから魔王退治する為に呼ばれたんじゃ?」
「うん、だからね。 前回みたいに魔王が生まれる前に倒す方が、相手も弱くて楽でしょ? だから、今回もそうしてもらおうと思って♪ それとは別に、魔族退治事業を並走してやってもらおうと思ったんだよ」
「主さまは、基本、不可侵なんじゃっ!!」
「うん、でも、君たちを見るのは、面白そうだから♪」
主さまは、にっこり笑って、楽しそうに宣った。 もう1つ、主さまが仕掛けたサプライズに、優斗と華は驚愕した。 理由を訊くと、とても奴らしくて、優斗の胸が熱くなった。 優斗たちの受難は、まだまだ続きそうだ。 なんせ今世は、800年位は、寿命があるのだから。
10
お気に入りに追加
29
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
【本編完結】異世界転移したら……。~瑠衣はこういう奴である~
伊織愁
恋愛
こちらの作品は『[改訂版]異世界転移したら……。』の番外編です。 20歳以降の瑠衣が主人公のお話です。
自己満足な小説ですが、気に入って頂ければ幸いです。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
異世界転移したら……。~色々あって、エルフに転生してしまった~
伊織愁
恋愛
前世で勇者召喚に巻き込まれ、友人たち共に異世界転移を果たした小鳥遊優斗。 友人たちと従魔と力を合わせ、魔王候補を倒し、魔王の覚醒を防いだ。 寿命を全うし、人生を終えた優斗だったが、前世で知らずに転生の薬を飲まされていて、エルフとして転生してしまった。 再び、主さまに呼ばれ、優斗の新たな人生が始まる。
『【改訂版】異世界転移したら……。』『【本編完結】異世界転移したら……。~瑠衣はこういう奴である~』を宜しければ、参照してくださいませ。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる