16 / 36
アクシデント2
しおりを挟む
するとポケットの携帯電話が鳴った。
「あ、私だわ」
そう言って、玖生さんを見ながら他の部屋へ行き、携帯の画面を見る。
電話番号だけが出ている。何?
「……もしもし。織原さんのお電話番号でよろしかったですか?こちら都立新宿病院です」
「え?は、はい。織原です」
「先ほど、織原志保さんが救急車で運ばれまして、そのご連絡です。買い物途中に倒れられて、お店のほうから連絡がありました」
「ええ!?そ、祖母は大丈夫なんですか?」
「心臓を押さえて倒れられたようです。以前そういうことはなかったでしょうか?」
「はい。聞いたことがありません」
「……そうですか。とりあえず、入院になりますので病院へおいで頂けますか?」
「すぐに行きます」
私は慌てて電話を切ると、部屋を飛び出した。
玖生さんはそんな私を見て、驚いて立ち上がった。
「どうした?」
「おばあちゃんが買い物先で倒れて病院へ運ばれたの。すぐに行かないと……」
彼はすぐに駆け寄って、私の手を握った。
「落ち着け。送っていくから……震えてるじゃないか」
覆うように抱きしめてくれた。身体が恐怖で震えている。以前も両親が救急車で運ばれて、最初に父が、そして母も追うように亡くなったからだ。
私を抱きかかえて、玖生さんが電話をしている。
「エントランスに俺の車を回した。今日は運転手がいる。それと鷹也にも俺から連絡しておくから、君の控え室の荷物はあとで取りにこさせよう。今はそれで大丈夫か?」
私は彼の腕の中で小さくうなずくしか出来なかった。
すると、彼は鷹也さんの秘書に連絡してくれた。今は丁度レセプションの最中だ。
私の手を握ると部屋を出て、そのままエレベーターでエントランスに出た。
車が入り口に回ってきた。彼が私の荷物を持って車に乗せた。
「病院はどこ?」
「新宿病院よ」
一緒に後部座席へ乗ると運転手に指示した。
「……行ってくれ」
「かしこまりました」
運転手さんはいつもの人だ。
「由花、大丈夫だ。落ち着け、俺がいる」
震えている私の身体を右腕で背中から抱き寄せてくれた。私は彼の肩にもたれているしかできなかった。
おばあちゃん、逝かないで、お願い……気付くとそんな言葉が口から出る。涙が出てきた。
玖生さんは嗚咽をこらえている私のことを抱き寄せて背中をさすってくれた。
病院へ着くと、彼に肩を支えられて受付へ行く。
玖生さんがすべて聞いてくれて、私は彼に手をひかれて行くだけだった。
おばあちゃんはすでに病室へ移っていて、ベッドに寝ていた。
主治医から話があり、狭心症かもしれないとのこと。検査も含めてしばらく入院して下さいと言われた。
手術が必要になるかはまだわからない。
私は命に別状がないとわかった段階で少し安心してぼーっとしてしまい、医師の説明が耳に入っていなかった。
玖生さんが私の代わりに話を聞いてくれていた。後で聞かされて、お礼を言った。
病室へ入り、おばあちゃんの隣に座った。玖生さんは連絡してくると言うと、病室を出て行った。しばらくして、ようやくおばあちゃんの意識が戻った。
「ああ……由花」
「おばあちゃん、びっくりしたよ、うう、うう……」
私は病室でおばあちゃんの布団にすがりついて泣いてしまった。
おばあちゃんはそおっと私の手を触ってくれた。
「心配かけてごめんね。私も歳だわね。気をつけないと……由花、仕事大丈夫だった?」
「うん」
ノックの音がして、玖生さんが入ってきた。
「織原さん。お加減はいかがですか?」
「……あら、どうして?」
「玖生さんもパーティーに招待されていたのでいらしてたの。病院からの電話を受けたとき一緒にいて、ここまでついてきてくれて……私取り乱してしまって……色々助けてもらったの」
「……そうでしたか。ありがとうございました」
「とんでもない。ちょうど助けられて良かったです。彼女ひとりでは精神的にも大変だったでしょう」
「おばあちゃん。後のことはなにも心配しないでね。大丈夫だから、身体のことを一番に考えてね」
おばあちゃんは私を見て微笑んだ。
「ありがとう。由花も無理はしないでね。お稽古は私を理由にしばらくお休みしてもいいから……」
玖生さんが言った。
「織原さん。彼女の受付の仕事をしばらく休ませて家元の代わりをさせたいと思います。彼女のことは気にして見ていますので、ご安心ください」
私は驚いた。振り向いて、彼を見た。彼は私に微笑んでくれた。
「良かったわ。玖生さんがいてくれて……どうかよろしくお願いいたします」
「ええ、お任せ下さい。由花もいいね?」
「……はい」
「あ、私だわ」
そう言って、玖生さんを見ながら他の部屋へ行き、携帯の画面を見る。
電話番号だけが出ている。何?
「……もしもし。織原さんのお電話番号でよろしかったですか?こちら都立新宿病院です」
「え?は、はい。織原です」
「先ほど、織原志保さんが救急車で運ばれまして、そのご連絡です。買い物途中に倒れられて、お店のほうから連絡がありました」
「ええ!?そ、祖母は大丈夫なんですか?」
「心臓を押さえて倒れられたようです。以前そういうことはなかったでしょうか?」
「はい。聞いたことがありません」
「……そうですか。とりあえず、入院になりますので病院へおいで頂けますか?」
「すぐに行きます」
私は慌てて電話を切ると、部屋を飛び出した。
玖生さんはそんな私を見て、驚いて立ち上がった。
「どうした?」
「おばあちゃんが買い物先で倒れて病院へ運ばれたの。すぐに行かないと……」
彼はすぐに駆け寄って、私の手を握った。
「落ち着け。送っていくから……震えてるじゃないか」
覆うように抱きしめてくれた。身体が恐怖で震えている。以前も両親が救急車で運ばれて、最初に父が、そして母も追うように亡くなったからだ。
私を抱きかかえて、玖生さんが電話をしている。
「エントランスに俺の車を回した。今日は運転手がいる。それと鷹也にも俺から連絡しておくから、君の控え室の荷物はあとで取りにこさせよう。今はそれで大丈夫か?」
私は彼の腕の中で小さくうなずくしか出来なかった。
すると、彼は鷹也さんの秘書に連絡してくれた。今は丁度レセプションの最中だ。
私の手を握ると部屋を出て、そのままエレベーターでエントランスに出た。
車が入り口に回ってきた。彼が私の荷物を持って車に乗せた。
「病院はどこ?」
「新宿病院よ」
一緒に後部座席へ乗ると運転手に指示した。
「……行ってくれ」
「かしこまりました」
運転手さんはいつもの人だ。
「由花、大丈夫だ。落ち着け、俺がいる」
震えている私の身体を右腕で背中から抱き寄せてくれた。私は彼の肩にもたれているしかできなかった。
おばあちゃん、逝かないで、お願い……気付くとそんな言葉が口から出る。涙が出てきた。
玖生さんは嗚咽をこらえている私のことを抱き寄せて背中をさすってくれた。
病院へ着くと、彼に肩を支えられて受付へ行く。
玖生さんがすべて聞いてくれて、私は彼に手をひかれて行くだけだった。
おばあちゃんはすでに病室へ移っていて、ベッドに寝ていた。
主治医から話があり、狭心症かもしれないとのこと。検査も含めてしばらく入院して下さいと言われた。
手術が必要になるかはまだわからない。
私は命に別状がないとわかった段階で少し安心してぼーっとしてしまい、医師の説明が耳に入っていなかった。
玖生さんが私の代わりに話を聞いてくれていた。後で聞かされて、お礼を言った。
病室へ入り、おばあちゃんの隣に座った。玖生さんは連絡してくると言うと、病室を出て行った。しばらくして、ようやくおばあちゃんの意識が戻った。
「ああ……由花」
「おばあちゃん、びっくりしたよ、うう、うう……」
私は病室でおばあちゃんの布団にすがりついて泣いてしまった。
おばあちゃんはそおっと私の手を触ってくれた。
「心配かけてごめんね。私も歳だわね。気をつけないと……由花、仕事大丈夫だった?」
「うん」
ノックの音がして、玖生さんが入ってきた。
「織原さん。お加減はいかがですか?」
「……あら、どうして?」
「玖生さんもパーティーに招待されていたのでいらしてたの。病院からの電話を受けたとき一緒にいて、ここまでついてきてくれて……私取り乱してしまって……色々助けてもらったの」
「……そうでしたか。ありがとうございました」
「とんでもない。ちょうど助けられて良かったです。彼女ひとりでは精神的にも大変だったでしょう」
「おばあちゃん。後のことはなにも心配しないでね。大丈夫だから、身体のことを一番に考えてね」
おばあちゃんは私を見て微笑んだ。
「ありがとう。由花も無理はしないでね。お稽古は私を理由にしばらくお休みしてもいいから……」
玖生さんが言った。
「織原さん。彼女の受付の仕事をしばらく休ませて家元の代わりをさせたいと思います。彼女のことは気にして見ていますので、ご安心ください」
私は驚いた。振り向いて、彼を見た。彼は私に微笑んでくれた。
「良かったわ。玖生さんがいてくれて……どうかよろしくお願いいたします」
「ええ、お任せ下さい。由花もいいね?」
「……はい」
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福
ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話。加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は、是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン🩷
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
◇稚拙な私の作品📝にお付き合い頂き、本当にありがとうございます🧡
箱入り令嬢と秘蜜の遊戯 -無垢な令嬢は王太子の溺愛で甘く蕩ける-
瀬月 ゆな
恋愛
「二人だけの秘密だよ」
伯爵家令嬢フィオレンツィアは、二歳年上の婚約者である王太子アドルフォードを子供の頃から「お兄様」と呼んで慕っている。
大人たちには秘密で口づけを交わし、素肌を曝し、まだ身体の交わりこそはないけれど身も心も離れられなくなって行く。
だけどせっかく社交界へのデビューを果たしたのに、アドルフォードはフィオレンツィアが夜会に出ることにあまり良い顔をしない。
そうして、従姉の振りをして一人こっそりと列席した夜会で、他の令嬢と親しそうに接するアドルフォードを見てしまい――。
「君の身体は誰のものなのか散々教え込んだつもりでいたけれど、まだ躾けが足りなかったかな」
第14回恋愛小説大賞にエントリーしています。
もしも気に入って下さったなら応援投票して下さると嬉しいです!
表紙には灰梅由雪様(https://twitter.com/haiumeyoshiyuki)が描いて下さったイラストを使用させていただいております。
☆エピソード完結型の連載として公開していた同タイトルの作品を元に、一つの話に再構築したものです。
完全に独立した全く別の話になっていますので、こちらだけでもお楽しみいただけると思います。
サブタイトルの後に「☆」マークがついている話にはR18描写が含まれますが、挿入シーン自体は最後の方にしかありません。
「★」マークがついている話はヒーロー視点です。
「ムーンライトノベルズ」様でも公開しています。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
諦めて、もがき続ける。
りつ
恋愛
婚約者であったアルフォンスが自分ではない他の女性と浮気して、子どもまでできたと知ったユーディットは途方に暮れる。好きな人と結ばれことは叶わず、彼女は二十年上のブラウワー伯爵のもとへと嫁ぐことが決まった。伯爵の思うがままにされ、心をすり減らしていくユーディット。それでも彼女は、ある言葉を胸に、毎日を生きていた。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
媚薬を飲まされたので、好きな人の部屋に行きました。
入海月子
恋愛
女騎士エリカは同僚のダンケルトのことが好きなのに素直になれない。あるとき、媚薬を飲まされて襲われそうになったエリカは返り討ちにして、ダンケルトの部屋に逃げ込んだ。二人は──。
【完結】やさしい嘘のその先に
鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。
妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。
※30,000字程度で完結します。
(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
---------------------
○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
---------------------
交際0日。湖月夫婦の恋愛模様
なかむ楽
恋愛
「いらっしゃいませ」
「結婚してください」
「はい。いいですよ。……ん?」
<パンののぞえ>のレジに立つ元看板娘・藍(30)の前にやって来たのは、噂では売れない画家で常連客の舜太郎(36)だった。
気前よく電撃結婚をした藍を新居で待っていたのは、スランプ中の日本画家・舜日(本名・湖月舜太郎)との新婚生活だった。
超がつく豪邸で穏やかで癒される新婚生活を送るうちに、藍は舜太郎に惹かれていく。夜の相性も抜群だった。
ある日藍は、ひとりで舜太郎の仕事場に行くと、未発表の美しい女性ただ一人を描き続けた絵を見つけてしまった。絵に嫉妬する。そして自分の気持ちに気がついた藍は……。(✦1章 湖月夫婦の恋愛模様✦
2章 湖月夫婦の問題解決
✦07✦深い傷を癒して。愛しい人。
身も心も両思いになった藍は、元カレと偶然再会(ストーキング)し「やり直さないか」と言われるが──
藍は舜太郎に元カレとのトラブルで会社を退職した過去を話す。嫉妬する舜太郎と忘れさせてほしい藍の夜は
✦08✦嵐:愛情表現が斜め上では?
突如やって来た舜太郎の祖母・花蓮から「子を作るまで嫁じゃない!」と言われてしまい?
花蓮に振り回される藍と、藍不足の舜太郎。声を殺して……?
✦09✦恋人以上、夫婦以上です。
藍は花蓮の紹介で、舜太郎が筆を折りかけた原因を作った師匠に会いに行き、その真実を知る。
そして、迎えた個展では藍が取った行動で、夫婦の絆がより深くなり……<一部完結>
✦直感で結婚した相性抜群らぶらぶ夫婦✦
2023年第16回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました!応援ありがとうございました!
⚠えっちが書きたくて(動機)書いたのでえっちしかしてません
⚠あらすじやタグで自衛してください
→番外編③に剃毛ぷれいがありますので苦手な方は回れ右でお願いします
誤字報告ありがとうございます!大変助かります汗
誤字修正などは適宜対応
一旦完結後は各エピソード追加します。完結まで毎日22時に2話ずつ予約投稿します
予告なしでRシーンあります
よろしくお願いします(一旦完結48話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる