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第二章 恋愛と仕事
同期
しおりを挟む昼休み、社食へ下りると業務部のメンバーが集まっているテーブルを発見した。
同期の巧を発見。
A定食を持って、奴の後ろから近づくと隣にいた奈々ちゃんが巧の小皿に醤油を入れてあげていた。
「やだ、森川先輩。そんなところでどうしたんですか?」
どうしたもない。社食なんだから、食事に決まってるでしょう……。
反対の開いている椅子に座る。
「おー、秘書様ごきげんよう」
「奈々ちゃん、相変わらず巧を甘やかして、だめだよ」
「先輩、邪魔です。私の大切な時間に割り込まないで」
唐揚げを食べようと大きな口を開けた私は、睨む奈々ちゃんを無視。
「菜摘。お前、秘書室勤務になったのにそんなでかい口開けて唐揚げ食ってるのはだめだろ。そばでもすすってろよ」
「うるさいわね、巧。秘書室は体力と気力の勝負よ。業務の仕事より変な疲れが多くて、食べないとストレス解消できない」
「確かに食ってる割には、ちっとも太らねーな、お前」
「失礼ね、相変わらず」
「確かに忙しそうだもんな。この間もオフィスをハイヒールで走ってたしな」
「森川先輩。巧先輩のことはすっかり忘れて下さい。私が全部お世話しますから」
奈々ちゃんが巧を見つめて話す。ハートが後ろに飛ぶ目を見つめると、奈々ちゃんはこちらに向かってにっこりした。
「渋谷、お前本当にいい加減にしてくれ。お前は部下でしかない」
「巧先輩。そんなこと言って、お前は菜摘よりも口答えせずに何でもやってくれるから助かるってさっきも言ってたし」
は?聞き捨てならない。巧の耳をつかむと、イテテと悲鳴を上げた。
「菜摘、たまには飲みにいこうぜ。連絡くれよ。こっちの忙しい時期は把握してるだろ」
「……確かに。そうね、月中ならそっちもイベント後だから大丈夫かな」
「おお、多分」
なぜか、社食に永峰取締役の姿が見えた。今日は確か外で食べてくるって……。こちらを見ると、真っ直ぐ進んでくる。何?午後の外出の書類?頭の中で急速に仕事の内容を思い出す。
「森川さん、食事終わったらすぐに部屋へ来て。外出の書類足りないもの出してほしい」
じろっと、巧達を見たと思うと急に例の笑顔になり話しかける。
「イベント楽しみにしてるから、2人ともしっかり頼んだよ」
「「はいっ!」」
ふたりは声をそろえて返事した。
「はあ……永峰取締役、今日も素敵ですね。でも、巧先輩のほうが若くてかっこいいです」
巧をちらりと見ると赤くなって嬉しそう……。私は残りの唐揚げを口に入れると、お茶を飲んだ。
「じゃあね、ふたりとも。お先」
「身体気をつけろよ」
「ありがと。あなたもね」
巧、あんなことがあったのに相変わらず優しいな……彼に笑顔で返した。睨まないでよ、奈々ちゃん。巧とは今更どうにもならない。理由は公表できないけれど……。
取締役室をノックして入ると、ドアの横にいた彼がすぐに鍵をかけて私を後ろから抱きしめた。
「何してるんだ。食事するのに、どうして彼のところにいるんだ?」
「巧は同期で、一緒に仕事をしていた相棒です」
「そしてお前に告白した相手だ」
「昔のはなしです。今は、あなたしか私は見えない。他の人に何を言われても変わりませんから」
彼は、私のことをぎゅっと抱きしめ、胸を触ると首筋に頭を埋めた。うなじを吸い上げられて、キスマークをつけられる。
これで髪をおろさないといけなくなった。こんなことしなくても大丈夫だって言っているのに、どうしてなんだろう。
「見えるところにしないでって言ってるのに……」
「わざとだよ。お前が思う以上に俺はお前を……外出から帰ったら今日も一緒にマンションへ帰るからな。仕事片付けておけよ」
頼まれた内容の契約書を自分のパソコンから彼のパソコンのフォルダに入れたあと、念のためプリントアウトして書類に入れる。
ハイヤーの運転手に確認して、駐車場へ下りるよう彼に声をかけた。彼が帰るまであと4時間。書類の整理やスケジュール変更、他部署との交渉など時間内に終わるとは思えない。
仕事を持って帰るのは厳禁だし、明日のスケジュールに支障がない範囲のことだけやろうと切り替えた。
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