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第五章 二人の決意

エピローグー2

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 翌日。

 通常業務をしているときに、隣に気配がした。

「里沙さん」

「あ、京子さん……」

「眉間にしわ寄せてどうしたの?」

 隣の席に座ると、私を顔をのぞき込んで言った。

「このシステムの入力がまだうまくできなくて……専務はどうされたんですか?」

「うん、今日は外出なの。こっちの仕事をまとめようと思って戻ってきたのよ」

「そうだったんですね。秘書と両方って忙しくないですか?」

「うーん。そうね……まあ、私は前からこっちの仕事も鈴村さんが私に預けてしまうからやっていたところもあって、あんまり変わらないかな。この部屋へ入るのに、今はこそこそしないでいいから助かってる」

「じゃあよかったですね、こちら所属になって……」

 京子さんが長い髪を手で払いながら私を見た。

「この間まで研修に来ていた俊樹さんのお相手もいずれここに入りながら彼の秘書をやっていくはずよ」

「……そうなんですね」

「あなたもいずれ彼を助ける立場になるから同じ道を行くことになると思う」

「え?」

「しばらくはうちの業務になれるまでここにいて、そうしたら彼の秘書もやればいい。あなたは秘書経験もあるし、問題ないわ」

 なるほど。そうか……そうすればいいんだわ。

「ふふふ。斉藤さんもいずれそうなるわ。お相手の彼は役員候補だもの」

 小さい声で付け加えた。斜め前で仕事をしている彼女は気がついていない。

「うちは、大抵秘書と結婚しているの。だから例外はほとんどないので周りも認めてくれる。やりやすいのよ、そういう意味では……」

「そういえば、社長の奥様も社長秘書だったそうですね」

「その通り。でもあなたを狙う役員候補も逆に言うと大勢いる。彼はそれも心配なんだと思うのよ」

「……そんなことはないですよ」

「あらあら、知らぬは本人ばかりなり。あなたは美人で、すでに噂の的よ。あなたのイライラの原因である秘書室にはあなたのライバルになるほどの娘がいないけど、あなたの周りは有望な男性ばかり。彼はきっと心配しているわ」

 そうだったのかな?私は少し気持ちが落ち着いてきた。

「よく話し合って仲良くね。鈴村さん、あなたが文也さんの手伝いに社長のせいで借り出されてから、機嫌が悪くて周りが最近迷惑してるらしいから、頼むわよ」

 耳元で囁かれ、肩を叩かれた。

 結局、私が文也さんの仕事をたまに手伝うようになってしまってから、賢人はずっと機嫌が悪いのだ。

 なんだかんだ言って、スリルがあって、うまくいくとやみつきになる。文也さんのいるところでお手伝いするので、危ないことからは守ってもらえる安心感もあるのだ。

 そうは言っても社内で顔が売れてくるとそれもおしまいだろう。あの店は氷室の人が出入りする場だからだ。

 昼休み。

 今日は斉藤さんが午後半休。京子さんは家が近いので専務もいないことから一旦家に帰るという。家が近いとそういうことも出来るんだなあと思う。

 京子さんに挨拶をして立ち上がったところで同僚の相模さんから声をかけられた。

「北村さん。斉藤さんもいないようだし、今日は僕とランチにいかない?美味しい洋食屋さんを紹介するよ」

「……そうですね。わかりました」

 誰かと食事に行くときは必ず連絡しろと彼から言われていた。今日は突然だし、いいかなと思った。

 十分後、昼になった。ふたりで出ようとしたら後ろから声がする。

「北村さん、ちょっといい?」

 ドアのところにもたれて両腕を組んでこちらを見ている賢人。びっくりした。どうして?

「……あの」

「あれ、鈴村取締役。もう、昼休みですよ。休み時間終わってからでもいいんじゃないですか?僕これから彼女とランチに行く所なんです」

 相模さんが賢人に言ったら、賢人が身体を起こして私の所へ来た。

「相模君。申し訳ないけどね、彼女は売約済みだ」

 そう言うと、賢人は私の腕をつかんだ。

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