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学内実戦実習編
沙織の心配
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女子組のリーダーの手にはおにぎり。
おそらくもっと食べると思って持ってきてくれたのだろう。
「あぁ~えーと……」
名前が出てこない。普段健治のクラスメイトとか女子チームとか適当に括ってて覚えてない。
基本的に彼女と会うのが実習や訓練の時がほとんどなので名前で呼ばれてるのを聞いたことがない。
名前も相手を知る貴重な情報なので名前で呼ばないのが普通だ。
「沙織です、いい加減覚えてください。」
これで何回目だと思ってるんですか、と沙織はプリプリ怒っている。
あれ?そんなに自己紹介されたっけ?
「あぁ、悪い悪い。」
俺は笑ってごまかした。
沙織はジトっとした目で俺を見ていたが何か諦めた様な顔をして隣に座り俺におにぎりを渡し、自分も食べ始める。
「それでひとりでぶつぶつどうしたんですか?」
「あぁ、いや近くに来てる第三勢力についてちょっとな」
一応、ここにいる全員が雨宮について知っているが、あまり大っぴらに話すことでもないので少し濁した。
「あぁ、あの猫被りですね、聞いた話じゃ呪詛に目覚めたとか?竜と呪詛とか少しキツすぎな気がしませんか?」
沙織が心配そうに俺に聞いてくる。
「例え学生の素人だとしても、物が軍の最終兵器レベルだからな。向こうが殺す気で来れば死人が出るかもしれない。」
まぁ雨宮は100%俺を殺しにくるだろうし、それにあたり周りに気を使うとも思えない。
沙織は死人というワードに反応してさらに暗い表情になる。
「逃げられないのですか?」
「ん~、倒すにしろ逃げるにしろ情報がいるから、1回ぐらいは遭遇戦をしなければならいと思う。心配するな遭遇戦は健治たち主力が前衛を務める、後ろで仕事をする、、沙織は周りの警戒と得意の弓で援護だ。」
「別に私や健治君やコンちゃんの心配はしてないの、私は後ろだし2人とあとメイドさんは強いの知ってますし。」
ん?じゃあ何を心配そうな顔をしてるんだ?
俺がよくわからないと首をかしげると、沙織の心配そうな表情がさっきと同じジトっとした目で軽蔑する様に俺を見る。
「俺?」
やっと気づいたかと、沙織が口を開く。
「そうよ!貴方は知識や発想は彼らの様に凄いけど、実力は私達と大して変わらないじゃないですか!」
正論すぎて耳が痛い。
「言いたい事はわかるけどさ、俺には一応秘密兵器があってだな」
そう言って俺は2種類の術札を取り出しひらひらさせる。
「そんなこと聞いてるんじゃなくて、はぁもういいです。」
沙織はすっと立ち上がる。
彼女が俺にどんな返答を求めてたのかよくわからなかった。
「あぁ、そうだ。せっかくだから、これを持っていけ。」
俺は2枚の術札を渡す。
「なんの術が入ってるのですかこれは?」
どうやら、彼女はこれらの術式を見たことがないらしく、わからない。
「呪い移しと断絶結界だな」
「とんでもなく貴重品じゃないですか!」
呪い移しはその名の通り取り憑いた呪詛を他の場所に移す物で、断絶結界は張られた結界の中の空間をこの世から切り離す物。
もっと簡単に説明すると、結界の中の空間が霊体の様に物理干渉が不可になる。
「貴重っちゃ貴重だけど、これは俺が術式調べて作ったものだから、ほらストックあるし。」
そう言ってもう何枚か取り出してみせる。
術式自体秘匿にされてるものではないので簡単に手に入った。
けどこれらの術札が貴重なのは発動する為に膨大な妖力が必要で、妖力量が化け物のコンですら、妖力を自身の内包量最大に使って1枚できる程度だ。
俺がいつ作ったかって?
そりゃ前回の実習の時には作っていたよ。
あの全く妖力がない頃にね。
常に少量ずつ術札に妖力を貯め続けて1週間。
ようやく一枚ってところだ。
仙術による妖力を外部から取り込む方法もあるにはあるのだが、それをやる場合片手間には出来ず、さらにそれでも1日はかかる。
いくら貴重な術札だとしてと1日中制作に費やす時間はない。
「まぁくれるなら貰いますね。」
さっきまで驚いていた沙織が意外とすんなり受け取ってくれた。
「そうしてくれ、それがあるからって無理するなよ?」
俺の言葉を聞くと呆れ返った様な顔で
「八雲さんも無茶はしないでね。」
そう言葉を残してみんなの元へ戻っていった。
おそらくもっと食べると思って持ってきてくれたのだろう。
「あぁ~えーと……」
名前が出てこない。普段健治のクラスメイトとか女子チームとか適当に括ってて覚えてない。
基本的に彼女と会うのが実習や訓練の時がほとんどなので名前で呼ばれてるのを聞いたことがない。
名前も相手を知る貴重な情報なので名前で呼ばないのが普通だ。
「沙織です、いい加減覚えてください。」
これで何回目だと思ってるんですか、と沙織はプリプリ怒っている。
あれ?そんなに自己紹介されたっけ?
「あぁ、悪い悪い。」
俺は笑ってごまかした。
沙織はジトっとした目で俺を見ていたが何か諦めた様な顔をして隣に座り俺におにぎりを渡し、自分も食べ始める。
「それでひとりでぶつぶつどうしたんですか?」
「あぁ、いや近くに来てる第三勢力についてちょっとな」
一応、ここにいる全員が雨宮について知っているが、あまり大っぴらに話すことでもないので少し濁した。
「あぁ、あの猫被りですね、聞いた話じゃ呪詛に目覚めたとか?竜と呪詛とか少しキツすぎな気がしませんか?」
沙織が心配そうに俺に聞いてくる。
「例え学生の素人だとしても、物が軍の最終兵器レベルだからな。向こうが殺す気で来れば死人が出るかもしれない。」
まぁ雨宮は100%俺を殺しにくるだろうし、それにあたり周りに気を使うとも思えない。
沙織は死人というワードに反応してさらに暗い表情になる。
「逃げられないのですか?」
「ん~、倒すにしろ逃げるにしろ情報がいるから、1回ぐらいは遭遇戦をしなければならいと思う。心配するな遭遇戦は健治たち主力が前衛を務める、後ろで仕事をする、、沙織は周りの警戒と得意の弓で援護だ。」
「別に私や健治君やコンちゃんの心配はしてないの、私は後ろだし2人とあとメイドさんは強いの知ってますし。」
ん?じゃあ何を心配そうな顔をしてるんだ?
俺がよくわからないと首をかしげると、沙織の心配そうな表情がさっきと同じジトっとした目で軽蔑する様に俺を見る。
「俺?」
やっと気づいたかと、沙織が口を開く。
「そうよ!貴方は知識や発想は彼らの様に凄いけど、実力は私達と大して変わらないじゃないですか!」
正論すぎて耳が痛い。
「言いたい事はわかるけどさ、俺には一応秘密兵器があってだな」
そう言って俺は2種類の術札を取り出しひらひらさせる。
「そんなこと聞いてるんじゃなくて、はぁもういいです。」
沙織はすっと立ち上がる。
彼女が俺にどんな返答を求めてたのかよくわからなかった。
「あぁ、そうだ。せっかくだから、これを持っていけ。」
俺は2枚の術札を渡す。
「なんの術が入ってるのですかこれは?」
どうやら、彼女はこれらの術式を見たことがないらしく、わからない。
「呪い移しと断絶結界だな」
「とんでもなく貴重品じゃないですか!」
呪い移しはその名の通り取り憑いた呪詛を他の場所に移す物で、断絶結界は張られた結界の中の空間をこの世から切り離す物。
もっと簡単に説明すると、結界の中の空間が霊体の様に物理干渉が不可になる。
「貴重っちゃ貴重だけど、これは俺が術式調べて作ったものだから、ほらストックあるし。」
そう言ってもう何枚か取り出してみせる。
術式自体秘匿にされてるものではないので簡単に手に入った。
けどこれらの術札が貴重なのは発動する為に膨大な妖力が必要で、妖力量が化け物のコンですら、妖力を自身の内包量最大に使って1枚できる程度だ。
俺がいつ作ったかって?
そりゃ前回の実習の時には作っていたよ。
あの全く妖力がない頃にね。
常に少量ずつ術札に妖力を貯め続けて1週間。
ようやく一枚ってところだ。
仙術による妖力を外部から取り込む方法もあるにはあるのだが、それをやる場合片手間には出来ず、さらにそれでも1日はかかる。
いくら貴重な術札だとしてと1日中制作に費やす時間はない。
「まぁくれるなら貰いますね。」
さっきまで驚いていた沙織が意外とすんなり受け取ってくれた。
「そうしてくれ、それがあるからって無理するなよ?」
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