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第二章
楽と悦と努力のカンパニーでハーモニーなセレモニー 〜天汝視点〜 ★★☆
しおりを挟むその建物に怪異が現れたのは、二ヶ月前ほどの話だ。
「きみはもっと気楽に生きたいのだろう?そして、きみを相手にしないこの会社の連中を人間とも思いたくない」
無気力な男性にそう囁く。その美麗な声の持ち主の名は、【偽りの歌姫】。男性が大事そうに、ショーケースに飾っているヴァイオリンに目を向けるルンペイルは、ニコッと透明なケースに反射して映る男性に微笑みかけた。
そんな様子に耐えきれず、部屋に入室してルンペイルの前に立ち、男性への誘惑を遮った。
「よせルンペイル。貴様、こいつを怪異に引き込むつもりだな?」
「大丈夫だよアスモダイオス。あっ、ここでは天汝 狩婬の方がいいんだったっけ?この子は確かに、きみの悪魔の誘いに耐性がある貴重な子ではある。それにこの会社には────」
それも見据えての考えであると、得意げになって話す。
この会社には、すでに二体の怪異が潜伏している。その二体とも天汝の。いや【残念美形の魔将】の生み出した怪異だ。天汝は、悪魔系の怪異を生み出すインフェクターであるが、意志とは関係なく放つ魔の瘴気に当てられた人間を、見境なく怪異に引き込んでしまうため、悪魔系怪異の素質ある人間を眷属や部下の怪異に探させている。
しかし、ここは悪魔系怪異の素質ある人間は居なかったが、隠れ家として最適だったために、手下の怪異を人間に紛れさせていたのだ。ルンペイルが怪異を作ってしまえば、それだけ噂観測課に見つかってしまう可能性が高くなってしまうことを意味していた。
「そうだね。この子が怪異になったら、ここは指図め怪異コーポレーションになるよ♪」
「くっ……。なら、勝手にしろ。オレの部下は近々ここを離れてもらう予定だったからな」
天汝も居座ることの出来る人混みのある場所を失うというのは、少し残念ではあったがここに自身が怪異と出来るものがないのであれば、遅かれ早かれ次の根城を探すことになると、ルンペイルの行動を容認した。
学生の頃からヴァイオリンを引くことが好きで、親の会社を継ぐことが嫌で演奏家になることを夢見て浸っていたが、ある時不慮の事故で指が器用に動かすことが出来なくなり、その道を断念せざるを得なった男性。
会社経営から、テナント経営になった父親の会社を引き継ぐことになった。そんな男性を夢へと、当時の情熱に火を焚きつけるようにルンペイルは、己の唄を聴かせて男性を怪異へと変貌させ、人間の頃に器用さを失った指が自由に動かせるようになった。
それ以来、男性は社内のリラクゼーションルームで、自身のヴァイオリン演奏を披露するが、だれも彼の曲に耳など傾けない。それどころか、彼の演奏を聞いたものたちは以前にも増して労働に精を出すようになった。まるで、働きもせずに人生を謳歌している男性と対照的に努力すらように、せっせと働くようになっていった。
それから、二ヶ月たった現在。天汝はこの会社に、怪異の素質ある人間が居ないことを部下から聞いていた。その会話を目撃してきた旅行会社の女専務。彼女を二体目の怪異にしていたのだ。正確には、怪異になってしまったというべきだが────。
「ねぇ天汝君?今日もぉ♡」
「やめろよ……。オレはそういう気分じゃねぇ……」
アスモダイオスの正体を偽装するための人間態。その姿は、見る人間によって異なって見えるものであった。あるものには美人の女性に見えており、またあるものには亡き家族に見えることもある。
今回、女専務には性の対象となる男性に見えているらしく、瘴気に当てられて魔性に魅入られてから、ずっと夜毎に天汝の体を求めてきていた。
インフェクター【残念美形の魔将】として、傍を離れている時の方が楽に感じていた天汝。
部下に任せている他の目的の方を近くで見守るためにも、簡単に離れることが出来なかった。そんな天汝の気持ちも知らずに、女専務は天汝の下腹部に上半身を下げて、天汝のイチモツを咥える。バキュームして精を搾り尽くそうと、必死にしゃぶりついていた。
「うっ……、くぅぅ……あぁぁ……」
いつもことながら、容赦のない貪りにイく演技を見せて果てる。義務的に吐精して、悦んでいる女専務が飽きるまでしゃぶらせた後、へばっている体を背面から突き犯す。
煩い喘ぎ声を大袈裟に上げ続けている彼女の心の中の声が、ダダ漏れで聞こえてくる。何を言えば悦ぶか。どう言えば絶頂するのか、すべて筒抜けな天汝は望みどおりの言葉を告げるべく、耳元に口を近付けた。
「ほら、……んく、……情けなくイけ。イッて媚びろっ!!」
「はぁいぃ♡♡イきますイきます。貴方のために、盛大に……イくところ、みてぇぇぇぇ!!!!」
ゴリゴリと、抉ってほしい快楽中枢を自ら押し付けてくる下品な女にくれてやると射精する。壊れた笑い袋のように騒ぐ女専務の膣の締め付けが、人間離れした圧力でイチモツを締め上げた。
普通の人間の男性なら、その圧力でねじ切られているかもしれない。にも関わらず、天汝はさっさと終わりにしたいからと、射精中のイチモツを容赦なく子宮口を貫いて、奥に追加で吐き出す。
怪異になっても性欲の強さが増した訳ではない女専務は、すでに全身を痙攣させて気絶していた。その無様な姿には目もくれずに、天汝はアスモダイオスの姿に変身し、建物の屋上へ移動した。
(はぁ、所詮ただの怪異。使い道といっても、眷属となれる人間を探させるくらいだ。それに、物足りないな……)
アスモダイオスにとっては、またしても作ってしまった失敗作に過ぎない。観測課と戦わせて逃げる時間を稼いでもらうくらいにしか、まともな使い道を見出せない。
そして、先ほど観測課の人間がここへやって来たと部下より伝達があり、遂にここを離れることになった。その最後に、この建物から見下ろせる風景を目に焼き付けておきたい────、訳ではないが屋上へ来たアスモダイオスは、目を閉じて瞑想を始めた。
『来たか?』
『はい。ちゃんと暗示の刻に従って来ております。それと、若い男の体をした眷属を下さりありがとうございます』
『ふん。別に構わんさ。なぁ【バフォメット】……。オレの体に打ち込まれた人を愛する刻印のことなんだが、本当にアレに使えるのか?』
悪魔系怪異への素質ある人間を探し出させるために、この会社に潜伏させていた怪異である【バフォメット】は、アスモダイオスのその質問に二つ返事で答えた。
アブノーマルとの戦闘。その時に打ち込まれた刻印に、苦しめられていたアスモダイオスであったが、その刻印を無理矢理押し込めていた。
しかし、それも今から始めさせる儀式。その次のステップで、切り札としようと【バフォメット】の提案を受けて、アスモダイオスは胎内で堕性刻印へと変換させていた。
『よし、では始めろ』
瞑想への意識を更に集中させて、部下達とともに儀式の間へと向かっている悪魔の卵。音雨瑠 空美の深層意識の中に、自身の意識を忍ばせた。
✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳
空美の記憶とリンクした天汝。
あれから幾度となく、身体に教え込まれた敗北セックス。その匂いにあてられて自我を失い、こうして悪魔の怪異である【バフォメット】の誘いを受ける。そして、記憶が消えるまで肌を重ねて欲望を受け止めて、精をすべて下腹部の淫紋が吸い尽くす。
『ん?』
ふと、空美の意識を内側から除く天汝は気に止める。
同調するといっても、今すぐにリアルタイムに接続するのではなく、前後数時間の記憶を録り溜めた録画を観るように覗く。その中に、ここへ来る途中に視界に入ったエレベーター。天汝は録画の停止ボタンを押したように停止させ、そこに映った男のことを見た。
辰上 龍生────。
深層意識が無声音で名前を呼んだ。そうかと天汝は、その名を自身の記憶に焼き付けた。
『あの男……、オレの瘴気で狂わなかった。普通に謝ってきた。だが、怪異をその身に宿している様子はなかった』
考え込みながら、空美の深層意識から送られてくる情報を閲覧する。
天汝。いや、アスモダイオスの瘴気に触れたものは人間であれば、その身に内包する怪異が暴走して怪異化する。もし、怪異を宿していなくとも勝手に憑依して怪異と成り果てる。
噂観測課のように、怪異を操る者であるのなら空美と同様に堕とすことも出来る。だが、辰上には怪異がない。それどころか、全くもって怪異が居座れる余地が見当たらなかった。
こんな人間はこれまでに、ただの一度だって見つけたことはないと天汝は驚いていた。しかし、そんな考察が繰り広げられているとは知らない部下達。【バフォメット】達は、今日も空美を堕とすべく趣向を凝らしていた。
考えるのは後にして、天汝は空美の身体を操った。そして、顳かみに指を当てて記憶改竄の暗示をかける。
「………………。────────はっ!?」
(え?あーし、…………何してたん、だっけ?)
ふと、人格の所有権を空美に返す天汝。しかし、空美は状況が飲み込めないまま立ち尽くした。
薄暗い下水道や地下空洞を彷彿とさせる細道。辺りはブラックライトに照らされ、どう見ても普通じゃない場所に居ることだけは、記憶が混乱しているなかでも分かった。
「ぐあっ!?」
「────っ!!??……誰ッ!?」
暗い細道の奥の方で、男性の悲鳴が聞こえた。
一体、何がどうなっているのか分からない。そんななかでも、警戒心を一気に上げて構える空美。すると、脳に電流が走るようにここへ来た理由が頭の中に駆け巡る。
────怪異調査に来た。そこで、以前取り逃がした怪異を見つけた...。
そうだった。
前回の怪異調査で、報告にあった怪異。【バフォメット】との戦闘中に、突如乱入して来た怪異によって取り逃してしまった。その【バフォメット】がこの施設にいると連絡が入って、単身乗り込んで調査していたのだった。
『さぁ、存分に怒号を発揮しろ。』
━━━行け...。暴力に染まれ...!!
脳裏から聴こえた声が、空美を動かした。咄嗟に【知恵の女神】をガントレットに昇華させ、両腕に装備しながら歩先の行方が見えない暗闇を走った。
「見つけたし、【バフォメット】ッ!!その人を離しなよッ!!」
「ほぉ?此処が嗅ぎつけられてしまったか」
腹部を爪で引っ掻かれて、皮膚から真っ赤な血が流れている男性。空美は迷わずに踏み出し、正拳突きを【バフォメット】に繰り出した。
吹き飛ばされ壁に激突する【バフォメット】。その手から離れた男性を、両腕でお姫様抱っこの形で受け止める。傷が浅いことを確認し、男性が気を失っていることから噂観測課として、殺処分の対象をすることなく済む可能性がある。
男性が意識を取り戻す前に、【バフォメット】とのケリを着ける。深呼吸してから、再び拳を握り出す。起き上がろうとしているところへ、追い討ちをかけに走り出した。
体格差は圧倒的。それでも、大振りな攻撃を喰らう空美ではない。腰を落として横薙ぎを躱し、足払いで体勢を崩させる。倒れ込んだところへ閃光の拳撃をお見舞いするが、尻尾を盾に凌ぎ腹筋に力を込めて起き上がる。
風圧でノックバックする空美に覆い被さるように、【バフォメット】の反撃がくる。ガッチリと肩を掴まれて、身動きが取れない状態になってしまった。
ミチミチと骨が軋むような音が、空美に恐怖を与えていた。しかし、負けるものかと感情を昂らせている空美にまたしても、声が聴こえてきた。
━━━潰せ...、そこに居る悪魔を潰せ...。女神の力を使って、悪魔を討てっ!!!!
地面を蹴り上げて、膝を【バフォメット】の顎に蹴り出す。振動で拘束が解け宙返りをして、地面に着地する。そのまま仰け反った【バフォメット】を押し倒して、マウントを取ってタコ殴りにする。これでもかと拳に力を込め、血走った目をさせながら空美は連撃を繰り出した。
「アハッ♡キャハハハ────、アーッハッハッハッ♡」
狂笑。
その一言に尽きる。
壊れたように、オモチャを手にして喜ぶ子どものように、無邪気さと末恐ろしさを兼ね備えた笑顔で、ただ眼前の敵を殴りつける空美。
顔面には紫色の毒々しい返り血。誰が見ても残忍と言える光景、それでも空美の手は止まらなかった。抵抗すらせず、ピクリともしなくなった“【バフォメット】”を執拗に攻めるなか、空美は心臓の高鳴りに誓うように叫んだ。
「これよ、これ!あーしが欲しかったのは、この暴力と興奮が齎す……快感♡」
更にヒートアップしていく拳撃。そして、遂にトドメのところで空美の拳がピタリと止まった。「へ?」と目の前に広がる光景を目の当たりにし、困惑している声が出ていた。
そっと立ち上がり、よろよろと魂抜け落ちたかのように後退る。いくら取り逃がしたことに焦っていたとはいえ、ここまですることない。それどころか、今笑っていたのは自分ではない何かであると気付く。その恐怖で足が空くんだ。その時────、
ガシッ。
背後から両脇に腕が入ってきた。次の瞬間、グイっと上に持ち上げられ地に足がつかない状態になった。他にも怪異が居たのかと、意識を何とか戦闘モードへと変えていく空美の耳に、聞き覚えのある声がした。そう、【バフォメット】だ。
「────っ!?なん、で……?」
「貴女が殴っていたのは、我らが眷属。つまりは、囮です」
「───────くっ」
羽交い締めされながら、目を向けた倒れている“【バフォメット】”が液体となって姿を消した。すると、空美の身体に付着した紫色の返り血が、その場で蠢き出し足元に湧き水のように紫色の液体が吹き出した。
「ま、まさか……【スライム】!?」
「少し違います。侵入した人間を怪異にしてしまう【スライム】です」
その【バフォメット】の言葉を聞いて、空美は予感する。そして、見事に的中してしまった。なんと、【スライム】は気絶している男性の傷口から体内に入っていったのだ。
男性の傷口がみるみるうちに塞がっていく。同時に苦しみ出した。その場で激しくのたうち回って、口から【スライム】を吐き出す。
「な、なんと!?強靭な精神力をお持ちのようだ。ですが、故に残念ですね……」
「どういうこと……?」
「彼の中にいる怪異が目を覚ましたのです。しかも、【スライム】の堕性によって凶暴化させられて、ね」
治し方は知っている。【バフォメット】はそう得意気に言うと同時に、あまり時間がないことを告げた。
ならば話が早いと、空美は体を揺らして羽交い締めを解くべく抵抗する。やれやれと【バフォメット】は、尻尾を空美の服前に持ってきつつ締め付けを強くした。そして、動ける幅が限られて狙いやすくなったと、尻尾を拳に見立てて振るった。
「おっ……!?」
「まだまだいきますよ。それっ」
「ごっ!?────お゛ぉ゛っ!!??」
(────なに、これ……ッ!?)
空美が身に覚えのないはずの、えも言われぬ感覚に戸惑っているなか、【バフォメット】は空美の下腹部目掛けて尻尾で小突き続ける。
ピィィィン...、ドクンドクン...。
殴られた箇所が心臓のように脈動する。そんな感覚を感じて空美は、全身を震わせていた。そして空美は理解する。これまで何度も、この感覚をその身に受けてきていたことを────、小突れる度に熱くなる子宮。それを形作るように、邪悪に浮かび上がる淫紋を見て思い出してしまった。
「あ……、ぁぁ────、ぁ…………」
「そうです。貴女は何度もこの【バフォメット】に敗北し、その度に気絶するまでこうして快楽を貪っていたのですよ」
嘘じゃない。
これまでに起きてきたこと。数多くの男性の精を受けて、性の悦びを植え付けられて来たこと。いつしか自分が、意志を離れて自分ではなくなっていた恐怖と不快感。思わず嘔吐してしまうほど、脳を破壊するような出来事が一気にフラッシュバックされていく。
『安心しろ。それは、その悪魔が魅せている幻影だ』
意識を手放しそうになるなか、聴こえてきた声に引き戻される。その一言を聞いてか、不思議と全身に力が漲ってきた空美。再び小突いてこようとする尻尾を両脚で挟み、腕の方向を【バフォメット】の顔面に向け、ガントレットの仕込み弾丸をありたっけ撃ち出した。
「ぐぅ!?な、何ぃ!?」
「もう、あったま来たしっ!本気で行くから!!」
振り返った空美は、拳を天井に向ける。そして、天井を突き破ってボウガンが腕に装着されると、【バフォメット】に向けて光を矢を放った。
一撃必中、アテーナー・クラス、タ────ァァァ!!!!
その一撃は、確実に【バフォメット】の中心を穿いた。
「ば、馬鹿な……。アスモダイオス様……、わたしを見捨てると、言うのですか?」
瀕死の最中、それでも倒れずに空美の方へ向けて歩き続ける【バフォメット】。必殺の一撃に全霊を注いだ空美には、もう交戦するだけの力は残っていなかった。
それは【バフォメット】も同様であった。体が塵を霧散させ始めたことで、自分の消滅も間近に迫っていることを悟る。しかし、例え見捨てられることになっても、与えられた役割りは果たすべく空美の後ろで苦しむ男性を指さして、怪異の凶暴化を治す方法を口にした。
「その【スライム】は、我らが主。アスモダイオス様の眷属である。アスモダイオス様の色欲を浄化するには、色欲の堕性を全部取り除くしかない……。あとはどうするべきかは…………」
最後まで言い切らずに消滅した。
苦しむ男性の方を見て、空美はどうすれば男性の怪異を浄化出来るのか。分かっていることが悔しいと思いながらも、男性の肩を持ってその場から姿を消すのであった。
✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳
「んもう、酷いなぁ天汝ちゃんは」
「……?ベルフェゴール、来ていたのか?」
「いやだなぁ♪上芭生 エルだよぉ~、天汝 狩婬ちゃんと一緒♪人間態のぉ、名前ェ♪」
おっとりした目で、ねっとりした口調で上芭生 エルという人間態の名前を持つ、【目覚めずの禁欲】が姿を現した。
正確にはさっきまで、空美の意識のなかに魂を移していたために、肉体の方へ戻ってきたことでそう見えているだけで、ずっと前から隣に居たのだ。
今回、天汝がこの会社内に潜伏させていた部下の怪異。それは【バフォメット】ではなかった。【バフォメット】はベルフェゴール、いや上芭生の部下であった。あまりにも管理を厳かにしていたために、こき使ってくれるアスモダイオスを己の主だと錯覚していたのだ。
「それにしてもぉ~~、天汝ちゃんのせいでルンペイル君がぁ?伝染型の怪異を作る羽目になったんだよぉ~~」
「…………。分かってるさ、んなこと。怪異と人間側のバランス調整のために、【バフォメット】の奴にも消えてもらったんだ」
「【スライム】とルンペイル君が作ってくれた怪異。あとぉ────、天汝ちゃんのイケメンバージョンに惚れちゃったぁ~~、そこの子?」
ニヤニヤしながら、指さす方向に女専務の姿があった。
はぁ、と深い溜め息をついて天汝のもとへ服を脱ぎながら、性行為を目的に近寄ってくる女専務に掌を向けた。
「来るなッ!!貴様にくれてやるものはもうない。さっさと怪異としての仕事を全うしろ……」
「イヤよ。天汝くんのイヂワル♡怪異として、役割を果たせたら……えっちシてくれる?」
全ての悪なる根源。
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「この手は使いたくなかったんだがな。どちらにせよ、ここにはもう用はない。帰るぞベルフェ……、エル……」
「わぁーい♪エルって呼んでくれたぁ♪じゃあ、天汝ちゃんとぼくは帰るからぁ~~、頑張ってね♪────【狐火】ちゃん」
女専務が変貌を遂げた怪異の真名。その名を口にしながら、ゆったりと手を振る上芭真。
やがて、天汝と上芭生が闇夜に陽射しが差してくる時間帯の前触れのように、黒い霧となってその場から姿を消したのであった。
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