意味が分かったとしても意味のない話

韋虹姫 響華

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第二章

砕けた愛剣 ★★★

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    その日、音雨瑠 空美は精密検査を受けるべく、匿名医のもとへ赴いていた。採血から心電図、レントゲン。果ては怪異の異常性がないかの確認する装置で、数値を測ることまでしていた。
    検査員の前で衣服をすべて脱ぎ、裸のままで体表に皮膚異常が起きていないかを、全方位角からレーザー投射でスキャニングを行い、CT検査をする装置と同じく円形の検査機の輪をくぐって全身を細部まで調べた。
    結果は診察室でおこなう、と声をかけられて脱いだ服を着衣し始めた。着替えを終えた空美は検査結果を聞きに診察室の椅子に腰かけた。

「検査の結果、特に異常は見られません。メンタルバランスへの感傷を受けたものの、その回復がまだ完全ではないのかと思われます」
「はい……、そうですか」
(無駄な時間食っただけだし。あーし、気分ももう問題ないし。このまま龍生先輩との調査には支障出ないし……)
「────ですので、くれぐれも……」

    医師の説明、その大半を聞くことのない空美は、テキトーに相槌を打って居なしていた。その目が覚束ないものであるのを医師も理解していたのか、早めに話を切り上げて検査を終了させて、空美を解放するのであった。検査表を見ても至って健康体である数値やデータが出ている以上、精神的な問題以外には考えられないと、診察口で精神科へカウンセリングに行くことを念のため打診するが、「結構です」と不貞不貞しい声であしらって病院を立ち去った。

──熱い。
──行かなきゃ...。

    脳内で自分に言い聞かせると、タクシーを捕まえて自宅ではなく反対方向にあるホテル街の場所を伝えて走らせた。到着するまでの間、運転手からやれ天気がどうだとか、こないだのお客さんが面白かった等話をかけられても、魂の抜けたような返事を返すのみ。

──ウザイな。
──こっちは、熱くて、熱くて...ウズウズしてんのに...。

    つまらなさそうに空を見つめる。そして、右手を臍の下辺りに中指と薬指でフェザータッチするように薄皮膚を撫で回すと、空美にしか見えない刻印が訝しげな黒紫の耀きを放つ。空美はその耀きを目に焼きつけるように見つめると、瞳孔に僅かに差していた光が完全に消え失せて生気のない瞳へと変わった。
    それを待っていたのかというタイミングでスマホの通知音が鳴る。取り出してロック画面に出ているメッセージ通知を見て、フフッ♡、っと薄気味悪い笑みを零した。
    目的地に着いたタクシーに過剰なまでの代金を、押し付けるように差し出し下車すると、運転手が代金の超過分を返そうと声をかけているのも耳に入れることなく、ラブホテルの受付に向けて歩いていた。

「いらっしゃいませ。おや?またいらっしゃったのですか?」
「うん。パーティーフロア、貸切のとこ……」
「すでにご予約は承っております。しかし、お客さま?」
「────大丈夫♡1人も余さずに、ちゃんと堪能するし♡」

     フロントスタッフからカードキーを受け取ると蠱惑な笑みを向けて、狡くウィンクをするとVIP会員しか利用できないエレベーターで、パーティーフロアへと向かった。

     エレベーターのドアが開く音を聞きつけた先客が、一斉に空美の方を見た。先客の男達は、空美の入室に歓声を上げていた。
     本来、乱交を目的としたパーティーフロアに女は、空美だけの状態での貸切。フロアの中央に立った空美は直ぐにボタンを外し、精密検査のためにノーブラであったことなど関せず乳房を晒して言った。

「ねぇ♡今日は何人、あーしのカラダ目当てで来てくれたの?────あれ?この前よりも人数少なくない?」
「そ、そりゃあ……まぁ。さ、ささっ!本日、アミちゃんを抱きたいと会員料金をお支払いいただいてお集まりいただいた皆さま!どうぞ、心ゆくまで楽しんでください」

    一人だけ怯えていた刺青をした男性の号令を聞いた野次馬が、一斉に空美を包囲するように駆け寄った。そして、空美も下も脱衣して全裸になりポーズを取り始めた。
    パーティーフロアにやって来る男性は、空美の体目当てで性コンテンツのクラブ会員になった人達で、参加料を別途で払えば誰でも参加出来るという催しごとを知って駆けつけていたのだ。空美は療養休暇中に、【残念美形の魔将】アスモダイオスに刻み植え付けられた淫紋の呪中じゅちゅうにかかり、渦き出す性衝動を解消することに悩んでいたところ、見つけたこの場所をしたかのように舌を出して、要求される下品な格好も受け入れていた。

「さぁ♡あーしのこと見て、早く射精出来た人とシようかなぁ♡♡」

    会員のルールは至って簡単なもので、誰でも空美の体を抱くことが出来る訳ではなく主催者側が設けた予選を勝ち抜けたものだけが、パーティーフロアの上層階で空美のことを抱けるというもの。一次予選では、空美に触れることは許されない中での射精、つまりは自分のモノをシゴいて達する必要があった。
    空美は四方八方が生殖器を剥き出しにして必死に前後に擦り、興奮を高めていく様を見て、キュンキュンと疼いている子宮の熱を冷ますように慰めていく。早く、早く欲しいと口に出しながら指の愛撫を加速させていき、野次馬も昂った欲望を更に焚きつけるオカズとして、空美の自慰行為オナニーを眺めて果てた。
    逃げ場のない体液の雨に晒される空美は、身体中に生暖かくて獣の臭気を漂わせている空間で、声を立てずにブルブルと身震いさせて絶頂してみせる。野次馬もその様子に興奮する火を消さずに、ドロドロになったモノを再度擦り始めていた。

──無理...全っ然、収まらない...。

    仰向けに寝転んでいる空美に追い討ちのように、二発目を浴びせてくる野次馬。その噎せ返る精液の匂いを嗅ぎながら、空美は満たしきれない言いようのない感覚に悶えていることしかできなった。

    一次予選の時点で、へばった連中と落選者を追い出すと残った人数は主催者を含めて六人の男だった。二次予選へと進行しようとする男のマイクを持つ手を握り、マイクを自分の口に近付けて「もう、全員相手したげる」と言って、上層階の巨大ベッドへと向かわせるのであった。
    全員がシャワーを浴びる休憩時間に、主催者が用意した特注の精力剤を飲んだ男達は予選で射精したのが嘘のように、血管が浮き出るほどに勃起していた。その光景を見慣れているせいか、怯えていた主催者の男性は内心恐怖していた。何故なら、この人数はだからだ。
    主催者のこの怯えようと、フロントスタッフの空美に対する困り果てたような言動。最初、空美をかもにするつもりで「バカなギャルが釣れた」と思って主催者の男とこのラブホテルは手を組んでいた。
    しかし、空美の人間離れした性欲に集った男達は例外なく気絶するまで行為が続き、死者が出るのも時間の問題ではないのかと恐怖を感じていたのだ。

「あん♡アアッ♡いい……、そこっ…………、ほぉら♡もっと、ガンガン突いてよォ♡あーしのオマンコ、ぶっ壊れるくらい乱暴していいからさぁ♡♡」
「ぐ、ぐぅ────、も、もう……無理…………」
「ええ?まだイけるっしょ♡」

    すでに三人目が気絶していた。備え付けの男性避妊具コンドームを全て使い尽くしても、快楽を貪る空美の腰突きは止まらず男性側が達していく一方で、自分が絶頂出来ていないことを焦るように、離れようとするモノを逃がさないように両脚でホールドして萎えることも許さず、膣内に押し戻すように抽挿を再開する。

──なんで?なんで、イけないの?気持ち良く...ない!?

     気絶した男の頬を叩いて起こす。起きなくても犯すのを止めない空美は、気持ち良さを求めるあまり快感を得られない自分を確認して、焦りで頭がいっぱいになった。その時、今一番聞きたくない。だけど強制絶頂オーガズムが味わえる声が脳内を犯すように伝播した。

︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎━━『誰が本当のご主人様か...』━━

︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎━━『貴様はもう怪異しか愛せない...』━━

︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎━━『大人しく、オレのものになっておけ』━━

︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎━━━ 果てろイけッ!! ━━━

「───ッうぐッ!?────────ッッッッ♡♡♡♡」
「が、ハッ…………ぁ…………」

     騎乗位のまま腰を斜面から突き刺すように落とし、海老反り状態になる程の快楽の波動が下腹部の淫紋を核に全身を駆け巡る。脳の毛細血管、その末端に至るまでに書き換えられていく、電流に打たれたような強張りは、気を失いかけていた男にも伝わっていた。
    膣圧で無理矢理り出さされた精液を、搾りあげるように伸縮を繰り返す。射精のリズムに拍車をかける圧力のかけ方で追い詰められた男は、泡を吹いてその場に絶命してしまった。
    それと同時に、淫紋が成長してしまうほどの快楽をその身に受けた空美も、意識の糸が切れて言葉にならない呻き声を上げながら、だらしなく閉まらない口から涎を垂れ流して気絶していた。

    とうとう死人が出てしまったと、主催者とフロントスタッフが顔を見合わせていると、そこへ赤紫色の髪をしたセミロングの女性が声をかけてきた。VIP会員しか利用できないエレベーターは、カードキーがないとそもそも起動しないことを知っていた二人は、女性が何処から現れたのかを尋ねた。
    そんなことはどうでもいい、と言って二人の前に立つとこの事を警察に通報するのかと聞いてきた。勿論通報する。そして、自分達のしたことも告発して足を洗うと答えた。

「それは困る。オレの植え付けた淫紋のレベルがようやく上がったんだ。貴重な逸材をで終わらせられるのは忍びない」
「な、何を言っている────うっ……」

     口答えをしようとしたフロントスタッフが、白目を剥いて倒れた。後に続くように主催者の男もその場に眠るように倒れた。どちらも、心臓を焼き殺されたとも知らずに、意識を暗黒に落としたのだ。
    女性は、三つの死体をパーティーフロアの中央に投げ捨てると指を鳴らし、怪異を呼び付けた。そして、死体を食べるように命じことにした。

「もう行っていいぞ。オレの見立てじゃ、あの女神を宿した女が次に調査するのはお前だろうから、精々消されないようにな」
「はい────、【残念美形の魔将】アスモダイオス様」

    膝まづいてすぐ姿を霧のように消した怪異を見送り、螺旋階段側から気配を感じたアスモダイオスが視線を向けると、空美が立っていた。
    しかし、空美としての意識はなく、淫紋を施した主人を感じ取った身体が勝手に動いているだけに過ぎなかったことを察して、手をかざして暗示をかけ始めた。

───今から、シャワーでその汚い体液を洗い流せ。それと、淫紋が次の段階へと進めば...晴れてだ。それまでは、今日までの1週間の記憶を淫紋が発眼はつがんするまで封印しておけ。

───っといっても、淫紋の呪中にかかっている時の記憶はそもそもないんだがな。とりあえず、自宅に帰って寝室のベッドで目を覚ましたところから音雨瑠 空美としての意識と記憶で過ごせ。

    声に出していない暗示に「──はい……」と静かに返答し、生気のない眼でシャワールームへと向かい体を清めた後、フラフラと落ち着かない足取りで自宅へと姿を消す空美。それを見送ったアスモダイオスは、次の一手を考えながら胸部に浮かび上がっている、アブノーマルに打ち込まれた印を掻き毟るように皮膚を摘んでいた。

□■□■□■□■□

    合同での怪異調査。だというのに、噂観測課極地第1課のほとんどが不在であることを聞かされた辰上。そこにもう一つ、悲しい知らせがあった。

「えっ?長期休暇、ですか?」
「はい。先日のガイヤァルというインフェクター、かなりの強敵でした。それも、龍生様助けがあったことと持ち込んだ武器が【陽炎を纏いし一閃】アン エクレール デ リュミエールでなければ……確実に負けておりました」

    ガイヤァルとの戦いに完全な敗北感を味わった麗由は、修行のため長期休暇を貰って霊力を高められる場所に山籠りをすることを決心した。そこで、ディフィートやトレードができる、力を身につけてくると、気合いは充分な意気込みの表情で辰上の両手を握った。
    それでしばらく逢えなくなるから、ガイヤァルと遭遇した日の夜。麗由は積極的なアプローチで、出勤時間ギリギリまで肌を重ねていたのかと思い、一人運転席に項垂れていた。

    へこんでいる辰上が居る運転席の窓を、コンコンとノックする音に反応する。そこには空美が、元気満天の笑顔で手を振っていた。直ぐ助手席に駆け込みシートベルトを着け、「そぉれしゅっぱぁ~つ♪」と上機嫌に言い放った。
    しかし、辰上は空美がアスモダイオスとの戦闘以来、不調が続いていたと第1課のメンバーから伝えられていた。
    明らかにテンションが情報と違うため、心配になって休暇中に英気を養えたのかを質問した。人差し指と親指をくっ付けてOKの形を作り、バッチリとニンマリ笑顔で返した。

「ただ、精密検査はしてたはずなんだけど。あんまり覚えてなくてね……。あ、でも大丈夫大丈夫♪ジョギングとかして体力は落とさないよう、最低限のトレーニングはしてたから」
「そうなんだ。空美さんがそう言うなら────ん?」
「空美って言ってください♪あーし、後輩なんですからぁ」

    そうは言われても困る、と辰上は自身の性格上呼び捨ては難しいと返答した。
    不器用な振る舞いは健在であったことを確認した空美は、クスリと笑いながら乗り込む前に落ち込んでいたのは麗由と喧嘩でもして落ち込んだのかと思い、冷やかし気味につついた。しかし、返ってきた内容はその逆。付き合ってからの関係は良好で、事務所を経つ前にしばらく会えないことを告げられて、この前過ごした二人きりの時間をもっと大切に感じて過ごすべきだったと、へこんでいたことを説明された。

──何それ?龍生先輩はあーしのもんだし。チョー、ムカつくんだけど?

「え?」

    誰の声なのか分からない。けど、自分の心の声をにしたものが聴こえた気がした空美は、辰上に向けて声を出していた。何か不味いことでも言ってしまったかとキョトンとしている辰上の姿を見て、気のせいだったと思うことにした。
    気分を変えようと、窓の外に目を向けた。そして、窓に反射して写る龍生の太腿。その間から膨らみをみせているのが目に止まり、思わず運転している本人の下半身を見た。勃起はしていない。でも、さっき反射していた窓には大きく腫れ上がったようにズボンを盛り上げていたソレが見えていた。

ズキンッ!!

    不意に下腹部が熱した金属に触れたような熱さを発した。それをトリガーに、さっきまでの流れから意識はそうなるはずもないのに動悸が上がり出す。
    空美は嘘でしょと心の中で戸惑いを隠せずにいた。そう、この場に居ない神木原 麗由第三者の話を聞かされて、気分は良いはずがないのにしていたのだ。乳房は張り、子作りをすることになってもいいようにと代謝を良くしていく。あまりソワソワすると、尿意に襲われているのかと思われるため最小限の動きに留めているが、膣からも分泌液が受け入れる準備を整えていた。

    なんとか諭されないように必死に取り繕っている間に、目的地に駐車し外へ出ることが出来た。息も乱れないように必死に押し殺していた空美は車を飛び出すなり、深呼吸をしてウォームアップするように全身を弾ませた。
    辰上はそれを、復帰一発目の仕事に気合い入れを入念にしているものだと特に気にする事はなく、空美を乗車させる前に現場に立ち寄って得た情報をまとめた資料を確認して、作戦を立て空美に共有することにした。
    怪異の真名は【グール】。一般的に人を捕食する悪魔とされており、怪異としても死体処理をする謎の存在と称する都市伝説が多くあるとされていた。その大半がこの【グール】によって引き起こされており、【グール】は複数体の怪異で今回目撃されているのは、少なくとも四体だった。

「ただ、【グール】は捕食した人間の死体も仲間にする事が出来るんだぁ。つまり龍生先輩が行った現場で見つからなかった遺体分も居るってこと?」
「いや、向かった現場では警備の人が目撃したため犯人は逃走どのことだから、おそらくは一人も捕食は出来ていない。けど、根城にしているこの廃墟に来る途中に捕食している分に関しては想像出来ない」

    目撃された四体に加えて何体かは仲間が潜んでいるはずだと、忠告を入れて辰上と空美は廃墟の中へと入った。どうやらお出迎えしていたようで、【グール】達はいきなり入ってきた二人に襲いかかった。

    神々しい輝かきの中から、ガントレットを装備した空美が飛び出す。闇に紛れて二匹、空美の急所を目掛けて飛びかかる。裏拳で一つ。しゃがみ避けて背中に蹴りを入れて二つ倒し、腰に両腕並ばせて覇気を入れてジャブ、浮き上がった体に続いて襲ってくる増援目掛けてストレート。瞬く間に四匹打ち倒す。

「まだ3匹居るみたいだし。龍生先輩、屋上に1匹。そっち戦わなくていいから抑えといて欲しいし♪あーしはこっちの2匹を屋上まで追い込むし♪」
「了解。一応、拳銃は燈火から貰っているから、これでやれるところまでやってみる」

    サムズアップを向けて、走って逃げていく【グール】を追いかけた。
    まるで鬼ごっこを楽しんでいるように、空美に向けてベロベロバーと舌を出して逃げ回る【グール】の一匹を見た空美はガントレットの仕込み弾を打ち出して撃破する。残りの一体を屋上へと続く、非常扉ごと蹴破って仕留めた。顔を上げた先に拳銃で応戦している辰上に反撃しようとする【グール】にも、弾丸を拳を突き出して放ち撃破した。
    これにて、確認した怪異は消滅し呆気なかったとルンルン気分でステップする空美であったが、あははと頭を搔く辰上の拳銃。その銀縁に反射して写った出入口屋根に、もう一匹隠れているのを見逃さなかった。しかし、飛びかかってきた【グール】に気付くのが遅かった辰上は、取っ組み合いになって転がった。

──あーしの、先輩に何してるし?ザコのくせにッ!!

    またしても心の声を直接的に表現した声が聞こえて、今度は理性の糸がプッツリと切れた。目の前で辰上に馬乗りになっている【グール】に飛びついて、空美が馬乗りになった状況で【グール】の顔面を叩き潰す。ドス黒い返り血を顔に浴びるも、殴る手を止めない。
    原型なんてもう留めていない【グール】に対して、執拗に打撃を加えていく。何度も、何度も、何度も、何度も────。暴力的行為のはずなのに、楽しい。いや、愉しい。好きでもない男とになって、交ぐ合っているときにも似た快感。空美はそれを今、【グール】を蹂躙することに見出していた。

「もういいって、空美さんっ!!」
「──────はっ!?あ、あーし……何やって…………!?」

     辰上の声で我に返った空美は、両手がドス黒い血に染まっていた。その手を震えた眼で見ながら硬直していると、【グール】の消滅と同時に浴びた血も塵となって、風の中へ消えていった。凍った表情のまま辰上の方を見る。
     嫌われたくない、軽蔑されたくない。そんな不安が失意のどん底へと、空美を引きずり落とそうとしていた。
    しかし、辰上は空美の心配をして近寄る。それを見て安心した空美が手を伸ばそうとしたその時、身に覚えのある重圧を感じ取った。それは辰上も同じく感じ、警戒して辺りを見渡す、姿が見えないのなら姿を持たないタイプの怪異であることも視野に入れ、仕込み弾をリロードした。

「ふあぁぁ…………、んんっ……眠いなぁ……」
「?あ、あいつも……インフェクターなのか?」
「でも、そうとしか言えないっしょ?あの子以外に、こんなデカいプレッシャー放ってるのいないと思うし」

    そもそも廃墟に普通の人間。ましてやの容姿をした子が、一人で迷い込むことなんて考えにくいことだ。それも呑気に欠伸をして、今にも眠りにつきそうな雰囲気で屋上まで上がってくるだろうか。
    いろいろと考えている二人を、ようやく視認した幼女。その見た目は耳当てサイズの角巻をした頭角に、チェック柄のオーバーサイズシャツを着ている。肌の色合いは、白が強めで見ようによっては悪魔と言われても信じられるほどには、人間味のないものであった。

【目覚めずの禁欲】ベルフェゴール
「え?それが、あんたの名前?」
「そう。わたしぺオルのインフェクターとしての名前。でもぉ、上芭生かみばな エルってぇ~、呼んで欲しいなぁ~~……」

    おっとりとした口調で上体をゆらりゆらりとスローモーションで、横に振りながらそう言うと、床と垂直になったところで動きを止めて再び欠伸をして、眠そうに口をむにゃむにゃと動かした。
    その様子に、本当に彼女がインフェクターなのかと疑問を感じていた辰上。その反面で、空美は有無を言わさず突っ込んでいた。拳を容赦なく突き出して、ベルフェゴールを殴った。

「嘘ッ……!?」
「なにぃ?今ぁ~、もしかしてぇ~~?攻撃、したのぉ?」

    ジト目でゆったりと空美を見上げるベルフェゴールと空美の間に、巨大な肉球の盾が割り込んで、空美の拳の一撃を防いでいた。ベルフェゴールは指揮するように手で空に描くと、空間が歪みはじめ中からもう一つの肉球盾が、空美目掛けて落ちてきた。
    身軽に躱し、フットワークで盾を追い越してもう一撃。少し距離を置くようにベルフェゴールが、下がるだけで間に入り込んでくる肉球盾に、またしても弾かれる。それならと、力を込めて思いっ切り殴りつけて盾ごと押し切ろうと、拳を突く。

「ふあぁぁ~~~、……むにゃむにゃ……。がんばれ、がんばれ♪」
「くっ……!?この盾、鬱陶しいし。それなら……」

    連続で繰り出す打撃も受け付けない肉球盾に弾丸を打ち出して、爆風を利用して後退した空美は勢いよく吹き飛んで、後退したあとに再びもとの距離を走り抜ける。右拳に光を集約させ、【知恵の女神】ミネルヴァの力を使った。

━━ブリッド・オブ・フィストォォォ!!!!

    渾身の一撃と肉球盾が衝突する。
    その衝撃波に辰上は手摺りにしがみついて耐えた。ドカンと一際大きな振動を巻き起こし、しばらくして光は止んだ。シュゥゥゥーッと、煙を上げる空美の右拳。その後に遅れて煙の中から姿を現す肉球盾は、それすらも外傷となるに至っていなかった。何度目かの欠伸に目を閉じかけているベルフェゴールは、ようやく終わったと重い腰を起こして、立ち上がって言った。

「ねぇ?もっと、面白いのぉ~~、あるんだよねぇ?」
「なっ!?空美さんの技が効いてない?」
「────。」

──何なんだよこのガキ。腹立つ...壊してやる...。
──めちゃくちゃに壊して、犯して、支配してやるッッ!!!!

    頭に血が登ったように血管を浮き出して両方の拳に力を込めて、連続でブリッド・オブ・フィストを繰り出して、肉球盾をサンドバッグのように殴りつけた。されど意味ない足掻きであるというかのように、健全な肉球盾は交互に打撃を受け止めて、手と手を合わせて遊んでいるように空美の連撃を受け流していた。

何度も、何度も、何度も────。
何度も、何度も、何度も────。
何度も、何度も、何度も────。

    涙すら流して、一撃すら与えられないベルフェゴールのことを睨む。それにジト目で見つめ返すだけのベルフェゴールを見て、空美の中のに火が灯る。同時に脳にノイズが走って記憶が───、封じ込まれた空白を埋めるように、記憶が流れ込んできた。

『なんだよ、元気そうならいいんだけどよ?』
「教官……。うっ!?その前って、あーし……何してたんだっけ?」

    拳の強撃を続けてぶつけているなか、意識が暗黒に閉ざされた。


────────────


「アァン♡そこっ、あっ、アッ、アァァ────、うっ……くぅ」

    思い出された記憶の断片。見知らぬ男に囲まれて、膣内なかにモノを挿入してゴム越しの熱を子宮で感じ取る。絶頂してぐったりしたからだを、次の男に持ち上げられて、またゴム越しの熱を感じるまでからだが揺れる。
    空美は思い出した。この数日間、刻まれた刻印。淫紋が耀くたびにからだが疼き、性への渇望をしてしまってどうしようもなかったこと。
    人相手には欲情出来なくなっていく感覚が恐くて、揉み消すように抱いた。いや、抱かれていたのだ。
    好きでもない男の体液を全身で浴びて、膣奥の気持ちいいと自分で知っている箇所に、ゴリゴリと押し当てて子宮イキしてからだを、壊れたバネのように弾けさせて嬌声を上げる。

「イクイク、イ゛ク゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛────────ッッッッ!!!!!!」

    イキ癖した秘部Gスポットを刺激するように懇願して果て続けた。

何度も、何度も、何度も────。
何度も、何度も、何度も────。

    それでも、満たせなかった。状態へとカラダの変換が完了したことを意味していた。それでも、認めたくない一心でせめてもの抵抗で、何人もの男に抱かれて人の快楽で自分を留めようとしていた。

に過ぎない。

    記憶の封印が解かれていくなか、空美の知らない思惑が流れ込んできた。それはアスモダイオスが淫紋に込めた、空美を堕とすために籠絡した狡猾な呪術刻印。

怪異と共生できた者を堕落させるのは難しい。
特に使と組んでいる怪異使いは、一筋縄ではいかない。
だから、考えた試みを空美こいつで試してみることにする。
淫紋に抵抗して行う行為こそが、ものとすれば、自らの手で堕ちる。

「くあぁぁ、イッく♡イク、イクイクイク……。お願い…………、もう膣内なか射精してぇ~~~ッ!!」

    乱交がエスカレートすることによって、空美は自ら堕天への道を早めていたことを思い知らされた。

    暗黒の中で蘇った記憶にまたしてもノイズが走り頭の中から、解かれた記憶が再び封印されていく。風に飛ばされた砂のように、真っ白に何も残らない脳内から引きずり出される。

────────────

「んもうぉ、危ないなぁ。せっかく天汝あまなちゃんに封じてもらったのに、自分から解放するなんてさぁ~~……」
「ぁぁ……、────ぁ…………」

    攻撃の手を止めて倒れそうになった空美の背中を支えて、額に手をかざして催眠術をかけて怒りの精神を鎮めたベルフェゴールは、死にきった瞳で思考停止している空美を見つめて、どうしたものかと頭を悩ましていた。
    空美の力加減のない攻撃が放つ衝撃で辰上が、屋上から振り落とされてしまった。しかし、死んではいないと生命力を感じ取ったベルフェゴールは、どうしたものかと考えあぐねていると、強い気配が猛スピードで接近して来ていることを感じ取り、眠気が覚めたように目を見開いた。

□■□■□■□■□

━ 数分前 ━

    空美の異常なまでに、固執的な戦闘を止めに入ろうとした辰上であったが、周りなんて眼中にないと配慮も加減もしない拳撃の波動に、ぐわっと身体を取られ宙に舞い上がり屋上から吹き飛ばされてしまった。
    周りに木々こそあれど、いきなりのことでは対処出来るはずもなく、一度【ヘンゼルとグレーテル】の時に奇跡的に蘇生することは出来たが、今回こそ命を落としたと覚悟を決めかけた時、スーツの衿もとに衝撃を受けて木に打ち付けられた。

「よぉオトシゴちゃん。大丈夫かぁ?」
「え?えぇ、なんとか……」

    何が起きたのか分からないと、キョトンとしているところに現れたディフィートを見て、衿もとを貫いた剣を目に入れて理解した。ディフィートの【最後の審判】ドゥームズデイが飛翔して、辰上の身体に傷つけないように、木に張り付かせたのだ。加わった別の力によって、ダメージが最小限に済んだ辰上を降ろして、ディフィートは事情を聞いた。
    やっぱり応援に来てみて正解だったと、言い残して一人廃墟に入っていった。辰上がいると、庇いきれない可能性がある相手だから撤収準備をして待っているようにとだけ告げて、階段を飛び登っていった。

     屋上へ辿り着いたディフィートは、視界に捉えるなりベルフェゴールに斬りかかった。インフェクターであることは辰上から聞いているからと、容赦のない剣撃を繰り出し、掴んでいた空美を引き剥がして距離取った。

「ディフィート……先輩……?」
「なんだ、意識はあるか。悪ぃけど、自分で下まで降りてくれ。あたしはこいつの相手すっからよ」

    座り込んでいる空美の肩をトンっと叩き、前へと出る。
    肉球盾に亀裂が生じていることを欠伸しながら見ているベルフェゴールは、眠そうな雰囲気のまま、静かにパチパチと拍手をディフィートに送った。

「凄い凄い。そっちのグローブ着けてるお姉さんはぁ~、傷1つ付けられなかったのにぃ。いま来たお姉さんはわたしぺオルの反応が遅れたとはいえ、一撃で肉球さんに傷付いちゃったぁ~♪ん?」

    のほほんとした喋り方で、賞賛した相手の姿が見えない。逃げたのかと考えてもみたけど、それなら空美を担いで逃げるはず。空美が置き去りにしている時点で、そんなわけはないのだろうと推測した。
    キョロキョロと辺りを見渡していると、ベルフェゴールの全身が宙に浮き上がっていた。

「てめぇ……、喋りがねっとりしてて気持ち悪いぞ?」

    初対面の感想を告げて、再び姿を消した。すると、放物線を描いた斬撃が同時に、四方向からベルフェゴール目指して伸びた。ガチンッと音が鳴るより先に地面に叩きつけられたベルフェゴールは、肉球盾をクッションに衝撃をカットしていた。あまりの速さに目で追えなかったと、残念そうにしていた顔は歪む。肘が頬をぶった。
    衝撃を受け流しながら体勢を保つところにドロップキックが飛び、遅れてから浮遊する肉球盾を踏み越えて追跡を続ける。ディフィートの殺気以外を削ぎ落とした眼光に捕らえられたベルフェゴールは、更に追加で空間を歪ませて盾を飛び出して防御に備えた。

━━縦列した盾終わりを砕いて、決定打始まりを刻めッ!ドゥームズ、デェェイ────ッッ!!

    切っ先に赤雷の雷切纏う一撃で瓦割りする。一枚、二枚、三枚と容易く破壊していき、最後の一枚を突破し本体に激突する。
    砂煙のなか、地面に片手をついて後退りするディフィート。その後を追うように煙を抜き去って、新たな姿を晒すベルフェゴール。その小柄には身に余る大きさの爪を生やし、悪魔の手と化した両手でディフィートに襲いかかる。
    チィィ、と舌打ちをし愛剣で受け止めて反撃に出る。身のこなしは盾を操っていた時よりも素早く、攻撃形態となった事で機動性を手に入れていた。その戦いを盾を壊すことが出来たディフィートを見て、ようやく遊べるオモチャと出逢えたと、満面の笑みで楽しんでいた。

「クフフフ♪楽しいね?お姉ぇさ~ん」
「こっちはちっとも楽しくねぇってのっ!!」

    右、左と肉眼で見れる速さを越えた爪の一撃を捌く。対してディフィートも、目にも止まらないスピードの打ち出しで迎え撃ち、両者一歩も引かない接戦となった。それもあって、ディフィートにはすでに周りを気にしている余裕はないため、空美の方を見ることも出来なかった。
    両手拳で重い一撃を与えて屋上を壊そうとするベルフェゴールを止めるべく、腕を上げて隙だらけになった両脇に蹴りを入れ、体勢を崩すことに成功した。追い討ちに愛剣を突き立てるも、両手拳を激突させて衝撃で弾き飛ぶ両者。
    そのまま、息を整えて直ぐに打ち合うために構えて走り出す。すると、そんなディフィートの前に空美がスッと割り込んだ。

「あ、あぶねえぞ!!────なっ!?」
「────。」

ガチ───ンッ...。

「…………何のつもりだ、お前?」

    突如、ガントレットで殴りかかってきた空美に驚いた。質問を投げかけたが、その目は意志を持っていない様子に眉をひそめた。ほどなくして、目に光が戻った空美は「あれ?あーし、また……」と戸惑っていた。
    そんな隙を見せていられるやつを相手に、戦闘をしていたわけじゃない。ディフィートは空美の肩を掴み、背後に隠すように身を引き込み、向かってくるベルフェゴールの攻撃を防いだ。

バキ...カン、カラコ────ン......。

    それはディフィートの愛剣【最後の審判】ドゥームズデイが砕ける音であった。愛剣の刀身を砕く一撃は、ディフィートと空美を屋上の端においやるほどの余波を発生させていた。空美を抱き抱えたままのディフィートは、地面に背中を擦らせながら、ベルフェゴールの方を睨んで念じる。
    武器を失ったディフィートにトドメを刺すべく、追撃をしてきていたベルフェゴールであったが、ピンッと背筋を伸ばして硬直した。そして、ゆっくりと顔を歪ませて、身震いしながら涙を溜めて声を上げた。

「いったぁ~~~~~~いっっっ!!!!」

    兎のようにぴょんぴょんと、飛び跳ねるベルフェゴール。一体何が起きたのかと空美がベルフェゴールのお尻を見ると、そこには折れて床に転げ落ちたはずのドゥームズデイ。その刀身が突き刺さっていた。愛剣を折られて吹き飛ばされた瞬間、ディフィートはいつも呼び出す時と同じようにドゥームズデイを操作して、ベルフェゴールの背後をついたのだった。
    突き刺さったドゥームズデイを引き抜いて、裂傷箇所を再生させて押さえていた。しかし、すっかり傷口も痛みも引くとまた欠伸をして、眠気全開のやる気のない状態に戻った。

「ん~~、天汝ちゃんに怒られるとメンドーだからぁ。今日のところはかぁえろっと♪バイバイ♪剣のお姉さん♪またねぇ~~♪」

    悪魔の羽を生やして空を飛び、闇夜に消えるように姿を消した。

    何とか見逃してくれたことに肩の緊張を解いて、折れてしまった愛剣の刀身を回収する。そんなディフィートに、折れてしまった原因は自分にあると空美が声をかけた。すると、謝罪の言葉を聞く前に、折れた刀身を握って切っ先を空美の首筋に当てた。
    薄皮膚に当たり、冷たい血が刀身を伝って地面に落ちる。それよりも更に冷たい風、冷たい視線が空美に向けられていた。

「なぁ?まさかとは思わねぇけど────、アレとも分かり合えるなんて……思ったんじゃねぇだろうな……?」

    初めて怪異以外に、殺意のみを宿した態度を見せるディフィート。その眼は、返答次第ではこの場で首を刎ねることも有り得る殺気を向けていた。ただ、空美の怪異と人間が共存することが出来ると信じている心意気に関しては、一目を置いていたからこそ、確認として聞いた。しかし、「そ、それは……」と口を噤んだ様子を見ると、舌打ちしてケースに収めずに愛剣を持って廃墟の外へと出た。

    愛剣が砕けてしまったことを涙するディフィートであったが、トランクケースに剣を納めてバイクのエンジンをかけて、辰上にサインして現場を後にした。屋上で何があったか詳しくは聞けなかったものの、ディフィートのドゥームズデイが砕かれるほどの強敵であったこと。それを知ったことは大きな収穫であった。

    麗由が修行に出たように、自分にも何か出来ることがあるかもしれないと、考えながら運転席に座った。助手席に座っている空美が俯いて泣いているのが、目に止まる。
    明らかに戦闘中の様子がおかしかったことも見ていた。しかし、調子が悪いというよりがないように思っていた辰上は、そっと泣いている空美の背中をさすって言った。

「インフェクターは強敵だ。それを2体も目の当たりにしたんでしょ?」
「うん……。でも、あーし……」
「足手まといって思ってるのかい?」
「……え?」

    足手まといは辰上のほうが長く痛感している。空美に助けられたのは、初対面の時。【ヘンゼルとグレーテル】に会った時も、突如現れた怪異から助けてくれた。それでいて、人間と怪異は分かり合えるかもしれないと思える怪異との出逢いを果たして、そう信じていることは他の観測課には考え至らないものであると慰めの言葉をかけた。
    すると、辰上の胸に頭を擦り寄せて鼻を啜って涙が出なくなるように、お願いごとをした。今だけは頭を撫でてほしいと告げると、一瞬躊躇するも頭に手を添えて優しく撫でた。
    不思議と辰上に対して抱いてしまっていた、抑えようのない衝動も起きずに気持ちを落ち着かせることが出来ると目を閉じて、心身ともに疲れていたこともあってすぐに意識を落とし眠りについた。眠っている空美の頭をそっと背もたれに置き、シートを倒してあげた。

    やがて、エンジンをかけて走り出した車内で調査報告を見直しながら時折空美の方を見つめては、『麗由さん、ごめんなさい』と届きもしない懺悔をするのであった。
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