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参の章 学校ノ怪談 十不思議編
四の話
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その後静流と別れ、秋華は恵夢と一緒に教室へ入って行った
静流は一年の教室へと姦しく騒ぎながら入って行く二人を見送ると、自身の教室がある二階へと足を向ける。
二段飛ばしでせわしなく駆け上がる同級生や、階段の踊り場で友達とおしゃべりに勤しむ子達を横目に見ながら今朝秋華から聞いた話、学校外で現れた悪霊について考えていた。
詳しく調べないと分からないが、過去このような事件が起きた事があったろうか?
少なくとも静流は見た事も聞いた事もない。
そもそもそれでは結界システムに支障がある事になる。
いや…… すでに支障が出ているではないか。 自分はその現象に出会っている。
《眷属》、黄泉迷宮の奥深く”アレ”の側にしか現れない存在が学校に顕現した。
それは結界にほころびが生じている事の現れではないのか?
封縛の、そして供犠の巫女の候補すら現れていないこの状況。
封印戦まで3カ月を切った。
それぞれに呪血の義を行なうのに1ヶ月ほどかかることを考えるに残り2ヶ月。
時間が足りない、静流は知らず拳を痛いほど握りしめた。
最悪、志乃が巫女に選ばれてしまう。
燕子花やその分家である六家の者としての使命。
分かってはいる。 だが、なぜ自分は男なのか…… 女であれば呪血を受け入れる事が出来、どちらかの巫女になれたかもしれない。
姉弟それも双子として生まれ、絆を育んできたかけがえのない存在。
それが命を落とすかもしれない。 それが静流にはどうしようもなく恐ろしかった。
それを言う立場でない事は重々承知の上で、ともすれば叫び出してしまう、しまいたいくらいには……
放課後になり秋華は恵夢と共にオカ研に寄った。 そのまま軽く資料を整理した後、恵夢に言って音楽室が見える教室へもう一度向かう事にした。
その後は帰っても構わないとの言質も恵夢からもらっておいた。
秋華としては、昨日の今日でなにが変わるわけではないが、ある程度は信ぴょう性を持たせた方がいい気がする。
なので印象深いなにかがないか、それを探そうと思い教室へ来た訳であったが。
「うーん。 特にない…… ですよねぇ」
現在は放課後であるために、部活で使用する特別教室ならともかく今は教室に人はおらず、窓から見える音楽室からは吹奏楽部の物と思われる楽器の音が聞こえるのみであった。
普段は普通に3年の教室として使用されているここは、怪談の発生場所としては不向きでは? そう思うのだが、とはいえ他に候補も思いつかず秋華はしばし悩む。
「アれ? ナナキリさん、ドうしました?」
教室の中に入らずその入り口でウンウン悩んでいる秋華の背後から、カソック姿のジョンが声を掛けてきた。
その声に驚きながらも振り向き秋華はジョンに挨拶する。
「あ、ど、どうもジョンさんお疲れ様です」
「おつかれサマですナナキリさん」
しばし二人はペコペコと頭を下げる。 今日はジョン一人のようで挨拶合戦は続いた。
それも終わり、どちらからともなく笑いあった後、再びジョンからどうしたのか聞かれたため秋華は考えを聞いてもらう事にした。
その秋華の考えを聞いたジョンはやはり悩みだした。 言われてみれば確かに現在使用されている教室で霊が出るというのは難しい。 とはいえ目ぼしい候補は他になく、と秋華と同じような事を思い悩んだ。
そうやって二人してウンウン唸っていると、呆れたような声がかかる。
「何やってるのよ二人とも」
声と同じように呆れたような目で二人を見つめる志乃と、その後ろを歩く静流が秋華達に合流した。
ジョンは助っ人が来てくれたと笑顔で志乃に話し出した。
とはいえ、志乃にもいい案が浮かぶことはなかった。
そもそもそういった事が得意ならオカ研に頼る必用はないのだ。
三人でウンウン唸っていると、しかたないと中莉に静流が案を出してくる。
「あー、あれだ。 聞き込みをしてみてはどうかな?」
「ききこみ?」
それを聞いた志乃はオウム返しに聞き返した。
そんな志乃に対して静流は説明する。
「正確には聞き込みのような印象操作…… といったほうがいいかな? この教室に霊が出るようだけど聞いた事はあるか? とかさ」
つまり、この教室に霊が出ることが前提の聞き方をしてそれをオカ研の研究として学校に広める。 そういう事らしい。
それを聞いた秋華は頭の中を整理しながらそれを口に出した。
「えーと、つまりこの教室に霊が出るようですが、あなたは見た事がありますか? っといった風な?」
秋華がそこまで口にした時、キイイインッとまるで硬い金属を叩きつけたような音が一度響いた。
そしてその音は件の教室の中から聞こえてきた。
四人が教室に目を向けたその時、今日の窓際、音楽室がよく見える位置にソレは現れた。
ソレは暫し音楽室を見つめるとゆっくりと四人を振り返り…… 消えた。
「なんで……」
志乃が茫然と呟く。
「”固定化”? 馬鹿なっ!? まだ大した噂にもなってないのに?」
”固定化”? 続けて発せられた静流の初めて聞く言葉に秋華は訝しんだ。
そのことに気付いたのか、大きく息を吸い冷静になった静流が秋華の疑問に答える。
「ああ、説明してなかったかな。 ”固定化”って言うのは、ある程度霊の噂が広まって姿や能力なんかが確定する現象のことだよ」
「後は、出現場所なんかもね」
同じく、静流と同じような動作で冷静になった志乃が補足する。
「トりあえず、場所を移しませんカ?」
ジョンの勧めで秋華達は一旦ここから離れる事にした。
小会議室、通称”懺悔室”へ向かう途中、志乃はスマホで教師に連絡を取った様で「後でこっちくるって」と一行に伝える。
続
静流は一年の教室へと姦しく騒ぎながら入って行く二人を見送ると、自身の教室がある二階へと足を向ける。
二段飛ばしでせわしなく駆け上がる同級生や、階段の踊り場で友達とおしゃべりに勤しむ子達を横目に見ながら今朝秋華から聞いた話、学校外で現れた悪霊について考えていた。
詳しく調べないと分からないが、過去このような事件が起きた事があったろうか?
少なくとも静流は見た事も聞いた事もない。
そもそもそれでは結界システムに支障がある事になる。
いや…… すでに支障が出ているではないか。 自分はその現象に出会っている。
《眷属》、黄泉迷宮の奥深く”アレ”の側にしか現れない存在が学校に顕現した。
それは結界にほころびが生じている事の現れではないのか?
封縛の、そして供犠の巫女の候補すら現れていないこの状況。
封印戦まで3カ月を切った。
それぞれに呪血の義を行なうのに1ヶ月ほどかかることを考えるに残り2ヶ月。
時間が足りない、静流は知らず拳を痛いほど握りしめた。
最悪、志乃が巫女に選ばれてしまう。
燕子花やその分家である六家の者としての使命。
分かってはいる。 だが、なぜ自分は男なのか…… 女であれば呪血を受け入れる事が出来、どちらかの巫女になれたかもしれない。
姉弟それも双子として生まれ、絆を育んできたかけがえのない存在。
それが命を落とすかもしれない。 それが静流にはどうしようもなく恐ろしかった。
それを言う立場でない事は重々承知の上で、ともすれば叫び出してしまう、しまいたいくらいには……
放課後になり秋華は恵夢と共にオカ研に寄った。 そのまま軽く資料を整理した後、恵夢に言って音楽室が見える教室へもう一度向かう事にした。
その後は帰っても構わないとの言質も恵夢からもらっておいた。
秋華としては、昨日の今日でなにが変わるわけではないが、ある程度は信ぴょう性を持たせた方がいい気がする。
なので印象深いなにかがないか、それを探そうと思い教室へ来た訳であったが。
「うーん。 特にない…… ですよねぇ」
現在は放課後であるために、部活で使用する特別教室ならともかく今は教室に人はおらず、窓から見える音楽室からは吹奏楽部の物と思われる楽器の音が聞こえるのみであった。
普段は普通に3年の教室として使用されているここは、怪談の発生場所としては不向きでは? そう思うのだが、とはいえ他に候補も思いつかず秋華はしばし悩む。
「アれ? ナナキリさん、ドうしました?」
教室の中に入らずその入り口でウンウン悩んでいる秋華の背後から、カソック姿のジョンが声を掛けてきた。
その声に驚きながらも振り向き秋華はジョンに挨拶する。
「あ、ど、どうもジョンさんお疲れ様です」
「おつかれサマですナナキリさん」
しばし二人はペコペコと頭を下げる。 今日はジョン一人のようで挨拶合戦は続いた。
それも終わり、どちらからともなく笑いあった後、再びジョンからどうしたのか聞かれたため秋華は考えを聞いてもらう事にした。
その秋華の考えを聞いたジョンはやはり悩みだした。 言われてみれば確かに現在使用されている教室で霊が出るというのは難しい。 とはいえ目ぼしい候補は他になく、と秋華と同じような事を思い悩んだ。
そうやって二人してウンウン唸っていると、呆れたような声がかかる。
「何やってるのよ二人とも」
声と同じように呆れたような目で二人を見つめる志乃と、その後ろを歩く静流が秋華達に合流した。
ジョンは助っ人が来てくれたと笑顔で志乃に話し出した。
とはいえ、志乃にもいい案が浮かぶことはなかった。
そもそもそういった事が得意ならオカ研に頼る必用はないのだ。
三人でウンウン唸っていると、しかたないと中莉に静流が案を出してくる。
「あー、あれだ。 聞き込みをしてみてはどうかな?」
「ききこみ?」
それを聞いた志乃はオウム返しに聞き返した。
そんな志乃に対して静流は説明する。
「正確には聞き込みのような印象操作…… といったほうがいいかな? この教室に霊が出るようだけど聞いた事はあるか? とかさ」
つまり、この教室に霊が出ることが前提の聞き方をしてそれをオカ研の研究として学校に広める。 そういう事らしい。
それを聞いた秋華は頭の中を整理しながらそれを口に出した。
「えーと、つまりこの教室に霊が出るようですが、あなたは見た事がありますか? っといった風な?」
秋華がそこまで口にした時、キイイインッとまるで硬い金属を叩きつけたような音が一度響いた。
そしてその音は件の教室の中から聞こえてきた。
四人が教室に目を向けたその時、今日の窓際、音楽室がよく見える位置にソレは現れた。
ソレは暫し音楽室を見つめるとゆっくりと四人を振り返り…… 消えた。
「なんで……」
志乃が茫然と呟く。
「”固定化”? 馬鹿なっ!? まだ大した噂にもなってないのに?」
”固定化”? 続けて発せられた静流の初めて聞く言葉に秋華は訝しんだ。
そのことに気付いたのか、大きく息を吸い冷静になった静流が秋華の疑問に答える。
「ああ、説明してなかったかな。 ”固定化”って言うのは、ある程度霊の噂が広まって姿や能力なんかが確定する現象のことだよ」
「後は、出現場所なんかもね」
同じく、静流と同じような動作で冷静になった志乃が補足する。
「トりあえず、場所を移しませんカ?」
ジョンの勧めで秋華達は一旦ここから離れる事にした。
小会議室、通称”懺悔室”へ向かう途中、志乃はスマホで教師に連絡を取った様で「後でこっちくるって」と一行に伝える。
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