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第四話
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朝、本来であればとても気持ちのいいさわやかな風が開けた窓から入り込み、その窓に近づいて朝日を十分に浴びたことだろう。
しかし私はベッドに座り込みうなだれていた。
ああ…… 学校行きたくない。
まるで登校拒否児のような事を思いつつダラダラとしていたが、やがてルカがやって来た。
「おはようございますお嬢様。 あら? もう起きていらしたんですね。」
「おはようルカ。 ええ目が覚めてしまって。」
学校が待ち切れなかったんですか。 とルカが可笑しそうに言う言葉をスルーして学校指定のブレザーに着替え、朝食を取りに食堂へ向かう。
このブレザー、もちろん地球のブレザーそのものでこの世界の服とはあきらかにデザインから違う訳だが、誰も疑問に思わないらしい。
まあ元々乙女ゲーもそうだったし、それが元になったであろうこの世界が歪なのは仕方ない事なのだろうか?
食堂はこれまた品のいい調度品がセンスよく配置され、テーブルの中央にライ麦パンが置かれ各椅子の前にはコーンスープ、新鮮なサラダなどが用意されている。
給仕の者が引いた椅子に座りお父様に挨拶する。
「おはようございますお父様。」
「おはようヴィー。 よく眠れたかい?」
お父様は私をヴィーと呼ぶ。 これは亡くなったお母様の愛称でもあった。
それから静かに食事が進む。 食事のマナーとして音を立てないのは基本だ。 私はヴァネッサの記憶でなんとか乗り切っているけどね。
そして食後のティータイム。 談笑の時間ともいうわね。
ルカが淹れた紅茶を飲んでいる時にお父様から声が掛かった。
「ヴィー、これから色々とある事だろう。 辛いこともね。 でも学校生活を楽しむ事を忘れないでいなさい。 つねに私達が見守っている事も。」
お父様……
本当にいい人である。 私にはもったいないくらいの。
「ありがとうございますわお父様。 いってまいります。 長期休暇には戻ってきますわね。」
「いってらっしゃい。」
言い忘れていたけれど学園は寮生活だ。
荷物その他はすでに寮に運び終えている。
玄関に留めてある馬車に乗り込みむ。 ルカも一緒である。
学園では使用人を付ける事が許可されている。 上級貴族ともなれば沢山の使用人を連れまわしたいであろうが、さすがに学園に入りきらないという事で5人までとなっている。
まあ私はルカふくめ3人連れていく事になっている。
本当は私一人でもいいのだが、貴族としての体面という物があるのだ。
馬車の中でルカが残りの二人に小人数での注意点や、学園についたらどうするかなどを説明している。
とりあえずルカが私に付き二人は寮の部屋で待機となったようだ。
それにしても、顔合わせか。
たしかその時、ヴァネッサがハルト王子に一目ぼれするんだったかしら?
うーむ、実際に私が惚れてしまったら問題よね。
ものの話に聞く強制力とやらがあるのかどうかわからないけど、注意するべきね。
王都は広く、一時間かけてようやく学園にたどり着いた。
学園は王都の端に位置し、半ば城壁に組み込まれているようにも見える。
宵闇の学園とも呼ばれる、王立ヴィ=ラングレン学園。
そもそもは5代前の王が多彩な才能を伸ばすために設立した物だ。 その後は歴代の王が資金運用し、まあ寄附もあるが今に続いている。 市井向けに国立の学校も幾つかあるが読み書き算数程度のものがほとんどだ。
学園の敷地内に馬車は入れられないので、皆校門の前で降りていて渋滞になっている。
しかし私が降り立つとざわめきが起こりザッと人ゴミが割れ道ができた。
……おおう。
私の名前がささやかれ色々な視線が私を襲う。
頬がひきつけそうになるのをなんとか堪え皆に声を掛ける。
「皆さまおはようございます。 道を譲っていただきありがとうございます。」
そう言ってニッコリと笑う。
これで幾分敵意の視線が減ったわね。
サッサと行ってしまおうと足を踏み出した時、校門の前に新たな馬車が留まるのが見えた。
馬車の横にある紋章が見える。 あれは…… ヴァルシェリア家の、ハルト王子かっ!?
「ルカいきましょう。」
「え? あ、はい。分かりました。」
ルカはハルト王子の馬車をチラチラ見ながらも私に付いてくる。
こんな人の多い所で不意遭遇戦なんてできるか! ここは戦略的撤退よ。
そそくさと歩き去りながら、ふと振り返るとハルト王子が一人の女生徒とぶつかっている所だった。
日の光を浴びて眩く輝くハニーブロンドの髪。 小柄だが活発な印象の少女だ。
その子が王子にペコペコ頭を下げている。
あれは…… ヒロインね!
そうだ、あれは初遭遇イベントだわ。
やっぱりいるのねヒロイン。
しかし、あの髪色はどうみても平民の物じゃないわよねぇ。
明らかにどこかの貴族の落胤としか思えないわ。
まあいいわ。 私達は先輩方の誘導にしたがい入学式の会場へ向かうのだった。
入学式はつつがなく終わり、そうそう新入生挨拶はハルト王子だったわ。
各クラス分けに従って教室へ向かう。
あと二歩で曲がり角という所で私は突然立ち止まる。 そのときルカの肘を掴んで止めるのも忘れない。
「え? お嬢様なにを……」
ルカがそう言い掛けた所で曲がり角から勢いよく誰かが飛び出してきた。
その誰かは飛び出し、私達が目に入ったのだろう慌てて立ち止まる。
その誰かとは……
「ごきげんよう王子殿下。」
そうハルト王子だった。
「きみは、ヴァンプリージェ公爵令嬢……」
王子は驚き目を開いていたが、私を確認するとその目を細め半ば睨み付けるように見て来た。
「おい、言っておくがなれ「では急いでおりますのでこれで。」あ、ちょっ!」
なにやら言いかけた王子を遮るように言い置いてその場を後にする。
あのまま進んでいれば曲がり角でぶつかっていただろう。
昔の感が衰えてないようで安心したわ。
そのまま私達は指定のクラスへと到着した。
たしか、王子とアリシアは隣のクラスだったかしら? ああ双子もか。
公平を保つために私は5公家とは同じクラスにはならない。
実にいい。少なくとも授業中は平穏に過ごせる訳だ。
クラスは大体15人前後。 とはいえ使用人が付くので部屋はかなり大きい。
後ろにはその為のイスとテーブルが用意されている。
その内担任が現れ、連絡事項を説明して今日は解散となった。
さっそく寮に向かい、僅かにあった残りの荷物を仕舞いながらまったり過ごす。
さてそろそろかしら?
その時部屋の扉がノックされ、ルカがそれに対応する。
戻って来たときは手紙を手にしていた。
「ルカそれは?」
ルカは私に手紙を差し出しながら答える。
「お嬢様に、招待状だそうです。」
手紙を開封して読んでみると例の顔見せの招待だった。
時間は夕方の、場所はやっぱり多目的ホールね。 簡単な地図も書いてあるわね。
差出人は、リーヴァスね、やはりそつがないわね生徒会長さん。
「ルカ、紅茶をもう一杯もらえるかしら?」
なんにせよ時間まではのんびりしておこう。
夕方、約束の時間が近づいてきたので出かけることにする。
ルカを連れだって多目的ホールに向かう途中、ホール側の植え込みの陰に誰かが隠れているのを見つけた。
素人ながらよく隠れている方だとは思うけど、私にはバレバレである。
その誰かとは……
夕暮れの光にハニーブロンドの髪がよく映える。
まあ、ヒロインな訳だけど。
彼女はなにやらホールを見ているようだ。
ふむ……
私は今朝の事を思い出す。
王子にぶつかってオロオロしながら謝っている時、不安そうな表情をしながらもニヤけそうになる口元を必死に抑えていた。 今もニヤけながらホールを窺っている。
これはあれね。 この子転生者だわね。
勤めて植え込みの方を見ない様にしながらホールに向かいつつ、計画を微修正する必要を感じるのだった。
続く
しかし私はベッドに座り込みうなだれていた。
ああ…… 学校行きたくない。
まるで登校拒否児のような事を思いつつダラダラとしていたが、やがてルカがやって来た。
「おはようございますお嬢様。 あら? もう起きていらしたんですね。」
「おはようルカ。 ええ目が覚めてしまって。」
学校が待ち切れなかったんですか。 とルカが可笑しそうに言う言葉をスルーして学校指定のブレザーに着替え、朝食を取りに食堂へ向かう。
このブレザー、もちろん地球のブレザーそのものでこの世界の服とはあきらかにデザインから違う訳だが、誰も疑問に思わないらしい。
まあ元々乙女ゲーもそうだったし、それが元になったであろうこの世界が歪なのは仕方ない事なのだろうか?
食堂はこれまた品のいい調度品がセンスよく配置され、テーブルの中央にライ麦パンが置かれ各椅子の前にはコーンスープ、新鮮なサラダなどが用意されている。
給仕の者が引いた椅子に座りお父様に挨拶する。
「おはようございますお父様。」
「おはようヴィー。 よく眠れたかい?」
お父様は私をヴィーと呼ぶ。 これは亡くなったお母様の愛称でもあった。
それから静かに食事が進む。 食事のマナーとして音を立てないのは基本だ。 私はヴァネッサの記憶でなんとか乗り切っているけどね。
そして食後のティータイム。 談笑の時間ともいうわね。
ルカが淹れた紅茶を飲んでいる時にお父様から声が掛かった。
「ヴィー、これから色々とある事だろう。 辛いこともね。 でも学校生活を楽しむ事を忘れないでいなさい。 つねに私達が見守っている事も。」
お父様……
本当にいい人である。 私にはもったいないくらいの。
「ありがとうございますわお父様。 いってまいります。 長期休暇には戻ってきますわね。」
「いってらっしゃい。」
言い忘れていたけれど学園は寮生活だ。
荷物その他はすでに寮に運び終えている。
玄関に留めてある馬車に乗り込みむ。 ルカも一緒である。
学園では使用人を付ける事が許可されている。 上級貴族ともなれば沢山の使用人を連れまわしたいであろうが、さすがに学園に入りきらないという事で5人までとなっている。
まあ私はルカふくめ3人連れていく事になっている。
本当は私一人でもいいのだが、貴族としての体面という物があるのだ。
馬車の中でルカが残りの二人に小人数での注意点や、学園についたらどうするかなどを説明している。
とりあえずルカが私に付き二人は寮の部屋で待機となったようだ。
それにしても、顔合わせか。
たしかその時、ヴァネッサがハルト王子に一目ぼれするんだったかしら?
うーむ、実際に私が惚れてしまったら問題よね。
ものの話に聞く強制力とやらがあるのかどうかわからないけど、注意するべきね。
王都は広く、一時間かけてようやく学園にたどり着いた。
学園は王都の端に位置し、半ば城壁に組み込まれているようにも見える。
宵闇の学園とも呼ばれる、王立ヴィ=ラングレン学園。
そもそもは5代前の王が多彩な才能を伸ばすために設立した物だ。 その後は歴代の王が資金運用し、まあ寄附もあるが今に続いている。 市井向けに国立の学校も幾つかあるが読み書き算数程度のものがほとんどだ。
学園の敷地内に馬車は入れられないので、皆校門の前で降りていて渋滞になっている。
しかし私が降り立つとざわめきが起こりザッと人ゴミが割れ道ができた。
……おおう。
私の名前がささやかれ色々な視線が私を襲う。
頬がひきつけそうになるのをなんとか堪え皆に声を掛ける。
「皆さまおはようございます。 道を譲っていただきありがとうございます。」
そう言ってニッコリと笑う。
これで幾分敵意の視線が減ったわね。
サッサと行ってしまおうと足を踏み出した時、校門の前に新たな馬車が留まるのが見えた。
馬車の横にある紋章が見える。 あれは…… ヴァルシェリア家の、ハルト王子かっ!?
「ルカいきましょう。」
「え? あ、はい。分かりました。」
ルカはハルト王子の馬車をチラチラ見ながらも私に付いてくる。
こんな人の多い所で不意遭遇戦なんてできるか! ここは戦略的撤退よ。
そそくさと歩き去りながら、ふと振り返るとハルト王子が一人の女生徒とぶつかっている所だった。
日の光を浴びて眩く輝くハニーブロンドの髪。 小柄だが活発な印象の少女だ。
その子が王子にペコペコ頭を下げている。
あれは…… ヒロインね!
そうだ、あれは初遭遇イベントだわ。
やっぱりいるのねヒロイン。
しかし、あの髪色はどうみても平民の物じゃないわよねぇ。
明らかにどこかの貴族の落胤としか思えないわ。
まあいいわ。 私達は先輩方の誘導にしたがい入学式の会場へ向かうのだった。
入学式はつつがなく終わり、そうそう新入生挨拶はハルト王子だったわ。
各クラス分けに従って教室へ向かう。
あと二歩で曲がり角という所で私は突然立ち止まる。 そのときルカの肘を掴んで止めるのも忘れない。
「え? お嬢様なにを……」
ルカがそう言い掛けた所で曲がり角から勢いよく誰かが飛び出してきた。
その誰かは飛び出し、私達が目に入ったのだろう慌てて立ち止まる。
その誰かとは……
「ごきげんよう王子殿下。」
そうハルト王子だった。
「きみは、ヴァンプリージェ公爵令嬢……」
王子は驚き目を開いていたが、私を確認するとその目を細め半ば睨み付けるように見て来た。
「おい、言っておくがなれ「では急いでおりますのでこれで。」あ、ちょっ!」
なにやら言いかけた王子を遮るように言い置いてその場を後にする。
あのまま進んでいれば曲がり角でぶつかっていただろう。
昔の感が衰えてないようで安心したわ。
そのまま私達は指定のクラスへと到着した。
たしか、王子とアリシアは隣のクラスだったかしら? ああ双子もか。
公平を保つために私は5公家とは同じクラスにはならない。
実にいい。少なくとも授業中は平穏に過ごせる訳だ。
クラスは大体15人前後。 とはいえ使用人が付くので部屋はかなり大きい。
後ろにはその為のイスとテーブルが用意されている。
その内担任が現れ、連絡事項を説明して今日は解散となった。
さっそく寮に向かい、僅かにあった残りの荷物を仕舞いながらまったり過ごす。
さてそろそろかしら?
その時部屋の扉がノックされ、ルカがそれに対応する。
戻って来たときは手紙を手にしていた。
「ルカそれは?」
ルカは私に手紙を差し出しながら答える。
「お嬢様に、招待状だそうです。」
手紙を開封して読んでみると例の顔見せの招待だった。
時間は夕方の、場所はやっぱり多目的ホールね。 簡単な地図も書いてあるわね。
差出人は、リーヴァスね、やはりそつがないわね生徒会長さん。
「ルカ、紅茶をもう一杯もらえるかしら?」
なんにせよ時間まではのんびりしておこう。
夕方、約束の時間が近づいてきたので出かけることにする。
ルカを連れだって多目的ホールに向かう途中、ホール側の植え込みの陰に誰かが隠れているのを見つけた。
素人ながらよく隠れている方だとは思うけど、私にはバレバレである。
その誰かとは……
夕暮れの光にハニーブロンドの髪がよく映える。
まあ、ヒロインな訳だけど。
彼女はなにやらホールを見ているようだ。
ふむ……
私は今朝の事を思い出す。
王子にぶつかってオロオロしながら謝っている時、不安そうな表情をしながらもニヤけそうになる口元を必死に抑えていた。 今もニヤけながらホールを窺っている。
これはあれね。 この子転生者だわね。
勤めて植え込みの方を見ない様にしながらホールに向かいつつ、計画を微修正する必要を感じるのだった。
続く
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