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 この時、後ろに立つパキネがどんな顔をしているか振り返って確認してあげればよかった。だけど、パキネのリアクションを、知りたいのに、知ってはいけないような気がした。
 俺は無意識に肩まで手をあげて、指先をパキネの方に向けた。すると、暖かくも冷たくもない、パキネの手が俺の手を掴んだ。
 勝手な思い込みかもしれないけどパキネに『いいよ』って言われたような気分になった。
「ありがとう。だけど、俺は、きっとレナちゃんを恋人扱い出来ないよ」
「いいのよ」
 レナちゃんは口をモゴモゴ動かすと、唇の淵が切れて血が出ていた。その血を人差しで拭き取るように指先につけると、その血を鈴につけた。その鈴は、何もなかったみたいに血が染み込んでいった。金属が液体を吸収するのを初めて見た。
「私たちもっと傍にいたら、もっちゃんが邪神を察知してくれる。それって凄くいいでしょ?」
「だったら、別に恋人にならなくたっていいんじゃない?」
「それは嫌」
 そうレナちゃんが言い切った瞬間、やっとルキが正気に戻った。
「だ、ダメだ!恋仲になるなんて、この俺が許さない!レナにはもっと素晴らし相手がいるはずだ!こんな疫病神付きで邪神に狙われているような、眠そうな目の男!絶対!ダメだ!」
 だけど、レナちゃんは、大声のルキの言葉に耳も貸さなかった。
「別に今は私のこと好きじゃなくてもいいの。でも、私、ブンくんとの未来を最近想像しちゃうの。これってきっと恋だとおもうから、私の気持ちは伝えていくわ。返事はいつでもいい。パキネさんと話しあった方が良さそうだし」
 俺との未来。そんなこと考えてくれた女子は、きっと初めてだ。だけど、うっかりレナちゃんに恋したら、パキネが見えなくなる。
 そりゃ、レナちゃんは凄く美人で魅力的だと思う。でも、パキネが見えない俺に面白みなんてない。わかっているんだ。それくらい俺はつまらない人間だって。ちゃんとわかってる。パキネのいない人生なんてつまらないって。
「ごめん。俺のなにがいいの?」
「理由なんてないの。だけど頭の中にブンくんが住み着いていて、一緒に色んな所へ出掛けたり、お話してみたことがいっぱいあって、守ってあげたいなって思ってるの」
 だから恋人になりたいのか?
「付き合えばいいんよ」
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