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 窓から入る日差しがレナちゃんの白い肌を輝かせていた。多分、レナちゃんから俺は逆光で暗く見えているんだろうなって、ぼんやり思った。
 俺はポケットに手を突っ込んだ。出てきたのは何日か前に行ったコンビニのレシートだけで、鞄の中にも隅々まで何か大切にしていたようなものがないか調べた。
 だけど、新品の教科書に返された小テストくらいしか出てこなかった。
「あ、ウチそれにだったら憑りついてやってもいいよ」
 そうもっちゃんが指を刺したのは財布だった。けれど、この財布は高校の入学祝に年の離れた従兄弟のお姉さんにもらった新品同様のものだった。
「財布?」
「それについてる鈴のキーホルダー」
 財布に鈴をつけているのは、パキネが悪戯に財布を隠すから、見つけやすいように、小学生の時に百均で買ってつけたものだった。二センチもないくらいのただの鈴で金のメッキも剥がれて綺麗とは言えないけど、もっちゃんはそれが気に入ったらしい。
「じゃあ、これにもっちゃんが憑りついて、それをレナちゃんにプレゼントすればいいってこと?」
「そーそー。レナもさ、もう誰にもウチのこと取られたくないなら、もらった後に鈴に血をつけるといいよ。そしたらウチらずっと一緒だから」
 随分物騒なこと言うなぁと思っていたけど、レナちゃんの手からヒョイっと飛び立ち、もっちゃんは鈴に触れると姿が消えた。
 揺らしてないのに鈴がチュリンと鳴った。
「上手く憑りつけたから、ブンだっけ?あんたこの鈴レナにプレゼントしてよ」
 拒否権はないなと思った。俺がハンカチに血をつけてしまったせいで、何日も野良付喪神をやらせてしまった罪悪感もあるし、レナちゃんがもっちゃんを気に入っているし、別に物凄く思い入れがあるわけじゃないけど、十年近く使っていた鈴に少しだけ愛着があったのは確かだった。
 俺は財布から鈴を取り外して、レナちゃんに差し出した。
「ありがとう。そのハンカチ、よかったらもらってくれる?この鈴と交換子ってことでいいかしら?」
「ハンカチもらっちゃっていいの?」
「いいの。大切にしてたけど、ブンくんの役に立ててよかったって思ってるから」
「なんかごめんね」
「いいのよ」
 レナちゃんはうっとりと鈴を見つめ、俺の手からそっと鈴を受け取った。
 すると、もっちゃんが鈴から上半身だけ出てきた。
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