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 目からルキの指が抜けた瞬間、嘘みたいに痛みが消えた。
 何もなかったみたいに、境内の中は静まり返っていた。
「終わった?」
「ふはは!完璧だ!」
「まだわからないわ。ブンくん。外、見てみるといいわ」
 レナちゃんにそう言われて、弱ったパキネの肩を抱き上げ、二人で境内の外に出たら、VRとかARのゲームで見るような、可愛い灰色の綿の塊みたいのが二匹ふわふわと浮かんでいた。黒々とした目はフクロモモンガみたいに大きくて可愛くて、俺はソレを初め悪霊だとは思えなかった。
「二匹いるのぅ。ブン殿ちゃんと見えるか?」
 ルキの言葉に俺は黙って頷いた。
「可愛いね」
「見た目はそうね。割と大きいのが二匹いるけど、小さいのは街のそこら中にいるわ」
 レナちゃんは石畳まで歩き、漂っていた灰色の綿みたいな悪霊に近づいて、触れないくらいに手を伸ばすと、煙のようになって悪霊は消えた。
「ブンくんもやってみて」
「あ、うん」
 もう一匹に慎重に近づいて、手を伸ばしながら頭の中で嫌なことを思い浮かべた。
 今朝、まだ使って一カ月経っていない新しいワイヤレスイヤホンの片耳を駅で落として結局、見つからなかった。
 思い出した瞬間、手のひらがピリっとしたと思ったら悪霊が煙みたいになって消えた。
「成功?」
 こんなことで悪霊を消せたのか?こんなんでいいのか?
「凄いじゃない。初めてで成功するなんて」
 微笑んでくれたレナちゃんの横で、偉そうに腕を組んでルキがニヤニヤとしていた。
「まだ感謝の言葉をいただいていないのは気のせいだろうかのぅ?」
「あ、ルキ、ありがとう。マジで痛かった。もうちょっと練習した方がいいぜ?」
「な!せっかく悪霊が見える目を授けてやったと言うのに!なんだその物言いは!」
「はは。冗談。マジでありがとう」
「ふん!初めからそう言いたまえ!」
「ブン……もう限界。おんぶ」
 そう言って勝手に両肩を背後から掴んでジャンプし、パキネは俺の背中に収まった。触れるだけあってそれなりに重い。だけど人間で言ったら多分この身長とスタイルに合わないくらいには軽い。なんとなく小学生の時、ランドセルを背おっていた時を思い出す。
「ったく。歩けないのか?」
「テキーラのショット十本くらい一気飲みした感じで気持ち悪い」
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