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「違うもん。今のブンの頭の中レナのことでいっぱいみたいだから、そのうちあたしのことなんか見えなくなっちゃうんじゃないかなって思ったんよ」
「あー。俺が恋するとパキネが見えなくなっちゃうってやつか」
 それは嫌だ。だってもし、俺が誰かを好きになったら、本当にどんなに近くに居ても、パキネが見えなくなるなんて、そんな生活に俺は耐えられるのか?
 友達、あるいは家族を一人失うようなものだ。信じられないくらい寂しいって思うくらいには、パキネのこと好きだけど、でも、パキネを選択し続ける限り、俺は一生童貞で、恋も出来ないのか。
「レナは、ブンのこと好きって言った」
「そうだな」
「もっとたくさん……何度も何度もレナが好きって言ってきたら、ブンはどうするん?」
「どうしたらいいと思う?」
「だからなんであたしに訊くんよ!」
「仕方がないだろ!お前が一番俺のことわかってんだから!」
「はぁ?あたし、今のブンのこと全然わかんないんよ!だから不安なんよ!」
「不安?」
 パキネは浴槽から出た。服が濡れていた。女性らしい体のラインがハッキリ見えて、俺は思わず、股間を両手で押さえた。
 だけど、ブルブルっと、パキネは犬みたいに体を震わせると一瞬で服が乾いていつものパキネになった。便利な機能だなと思う。
「どうせ、好きになっちゃうよ」
 なんの予感だったんだろう。パキネはそう言って風呂場のドアを通り過ぎて行った。
 服が一瞬で乾いたり、壁をすり抜けたり、やっぱりパキネは人間じゃない。
 守護霊で疫病神だってわかっているけど、俺にとっては幸運の女神だって思う時がある。ずっと一緒にいてくれて、悪戯みたいな不幸ばっかり呼び寄せるし、俺はその不幸にうんざりして見せるけど、本当は俺を笑顔にしたくて意地悪いことばっかりしてくるようで、可愛いなって思ってる。
 でも「どうせ好きになっちゃうよ」パキネは俺がレナちゃんを好きになるって、知ってたみたいに、というか予知していたみたいに、小さく呟いたんだ。

☆☆☆

 入学して初の授業らしい授業が始まった。
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