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「あ、うん。俺は時田文太。こっちの偉そうなのが守護霊で疫病神のパキネ。近くに居るだけで不幸をよぶから、別に仲良くするメリットないけど、見えてるなら……逃げた方がいいかも」
「なん……」
 レナちゃんが『なんで?』を言い終えるより早く、窓から強い風が入ってきて、彼女が読んでいた小説がペラペラとめくり上がり、栞らしきものが床に落ちた。
パキネがやったんだと、すぐにわかる小さな嫌がらせだった。
実際、パキネの口元を確認すると『フー』と息をかけている顔をしていた。こうやって、息を吐くと、パキネは厄を呼び寄せることが出来る疫病神なのだ。
「貴様!なんて卑劣な奴だ!読んでいる途中の本から栞を抜き取るなんて!」
 うるさい天使は疫病神に怒った。だけど、レナちゃんは、普通に床に落ちた栞を取り、ペラペラと本をめくって、また栞を挟んだ。
「パキネ。マジで他人様に迷惑かけんな」
 頭の中で、強く呟くと、パキネが俺とレナちゃんの間に立った。
「守護霊が天使だろうと、あたしには関係ない!疫病神としてブンの隣で不幸をまき散らすのが仕事なの!ブンと仲良くなりたいならレナ!あなたも覚悟しなさい!」
「そう。じゃあ、長い付き合いになりそうね」
「は?」
 レナちゃんの言葉に、パキネは拍子抜けしたような顔をした。
「もしかしたら、私がブンくんに恋をするかもしれない。その時、デートについてくるあなたを見るのが楽しみ」
「え?」
 俺が、驚いていると、弓美レナは俺に挑戦的な笑顔で微笑んでいた。
「高校デビューで隣の席。しかも同じ守護霊が見える者同士。恋が芽生えない方が不思議だもの」
 品の良い笑い声。ほんのりと血色のいい頬。ぱっちり平行二重のパキネを今まで世界一ビジュアルがいいと思っていたけど、初めて、一重の切れ長の瞳のレナちゃんを美しいと思った。
「許さん!絶対認めないぞ!疫病神が付いた男となんて絶対恋愛なんかさせない!俺がレナを守るんだ!」
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