花の香りに誘われて

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第一声は父さんのだった。

「……何もしてやれなくてごめんな。」


「やめてよ、僕は謝罪がほしくて帰って来たわけじゃないんだから。
僕だって父さんや母さんには沢山迷惑をかけたんだ。
謝るのは僕の方だよ。ごめんなさい。」


「匡の親は翠と…榊葉さんだよな。」


僕は小さく頷いた。


「翠が連絡先を変えた日から榊葉さんが何度もうちに訪ねて来たよ。
翠に会わせてほしいて。

家を出たのは独り立ちがしたいからと言っていたけど本当は榊葉さんと関係があるんじゃないか？」


やっぱり家に来たんだ。
もし匡の存在が榊葉さんに知られたら？
別に親として認知をしてほしいわけじゃない。
できることなら榊葉さんと会うことだけは避けたい。


「榊葉さんには婚約者がいたんだ。
その人と一度会ったんだけど、僕はその人と榊葉さんの関係を壊したくないんだ。それってその人を不幸にするってことでしょ？
僕はそんなことしたくない。
僕には父さんや母さん、瑞樹。そして匡がいる。それだけで充分だよ。」


「俺達は翠の味方だ。
会いたくないのなら俺達は協力するよ。」


ありがとう。父さん、母さん。