25 / 106
私小説
説得のプロ
しおりを挟むそれから数日後、またいつもの蕎麦屋で彼女に会うと
「けど、どうしちゃったの?あなた、説得のプロなのっ」
と私が秋葉を動かしたことを、夏生は褒め称えているみたいであった。
「いや、何か、そういう特技があるんだよ。私は昔から、『こうして欲しい』というと願いが叶うタイプなんだ」
「へえ」
「だから、あなたとも付き合いたい」
「そうなんだ」
「うん」
「でも、そうなってない」
「これは多分、理由があると思うんだ。つまり、私の中で、何か、あなたへのストッパーのようなものが働いているのかもしれない」
「ほう。私のせいではなくて」
「うん。多分、原因は私の中にあるんだ。何かがあるんだ。それは何なんだろう、というのがこの小説の眼目なんだよ」
「この小説」
彼女は怪訝そうな顔をする。いや、それは完全に私だけの問題である。
「あいや。何でもない。こっちの話だよ」
「そう」
と彼女は答える。それから少したわいのない世間話をしてから、私は彼女と別れた。日常というやつはこうやって、記述してゆくと延々と記述できるが、果たして、読者はこんなものを読んでいて楽しいのか、私は心配になってきた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)
俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。
だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。
また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。
姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」
共々宜しくお願い致しますm(_ _)m
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる