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私小説

環状列石

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 私はアパートから階段を降りて、その前の道路を南側に歩いてそれから、桜の木が並んでいる小道を進み、二車線の道路に出る。そこを南に歩道沿いに進むと、右手に、池が現れて、「ウガップ」と叫ぶ大きな白い鳥がいる。
 
 横断歩道を渡ると、大きな階段がある公園になっていて、その階段をのぼると、またさらにその上も公園になっているのであるが、そこに環状列石があったのだ。いや、トーテムポールとでもいうべきものだろうか。

 謎である。環状列石というと、イギリスにあるが、あれはドルイドたちが作ったとか。昔の宗教的な祭儀場の遺跡である。ウルティマというゲームでは、そこから次元転送して、フォーセリアという異世界に旅立つのであって、そういう意味ではこの環状列石だって、どこかに繋がっているかもしれないが、私はそういうものは利用しないので、皆さんは安心して欲しい。

 私はこうやって、頑なに歩き続けるだけなのだ。そこにファンタジーの入り込む余地はない。悲しいことに、A子や、四条夏生、会田鉄夫という登場人物を登場させてしまったが、本当は私の中では大いに遺憾なのである。

 本当はこうやって、事物の羅列を語りたいのである。その四本の柱みたいな石は謎であった。いや、あえて、わからせないように作られているのであろう。そこで連想するのは、保坂和志が、「小説の自由」という本で言いたかったのは、「わからない」ということなのである。

 わかるということは、近道なのであるが、わからないということは、近道を拒絶することである。周り道をするということである。下手すると、道を歩かないことである。我々は、結論だけを早く求めたがるが、そこに何があるのだろう。おにぎりをもらって、食べるのを省略して、水洗トイレに流してしまうようなものである。消化しないといけない。

 この場合、つまり、本の場合の消化とは何であろうか。逆に、我々の閉じ込められた心が、本の中に溶け込むということに他ならない。本の場合の消化は、読者が本の中に消えてゆくのである。西田幾多郎が「純粋経験」と読んでいるアレである。

 実は、これはアイドルのファンもそうである。アイドルのファンは、アイドルになっているのだ。少なくとも心象的にはアイドルと一体化してしまっている。これは、エロを醸し出すグラビアアイドルの写真集を読むのも同じで、エロになってしまっている。釣鐘状のオパーイが、ぷるぷるぷるりん、と揺れるのを見て、我々の心は同化している。あそこに漂うエロと、完全に一致してしまっている。そこに心地よさがあるのだ。大いなる陰極と陽極との精神的結合である。
 
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