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8.なかなか会えません

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(な、、なんで会えないのよーー!!)

私は学園の授業を受けているのだが、授業の内容がまったく頭に入ってこない。

それは何故か……
攻略対象者に会えないからだ!

裏庭の件から数日経ったが、私は一度も攻略対象者に会えず仕舞いだ。

この数日、私は攻略対象者が会いに来るのをじっと待っていた訳ではない。
学園の校舎は上級貴族のクラスがある西棟と、下級貴族のクラスがある東棟、図書館や音楽ホールなど共通施設がある中央棟の三棟でできている。三棟は横一例に連なっていて、東棟と西棟を行き来するには中央棟を経由する必要がある。
最初は中央棟で発生するイベントが多いので、授業の合間や寮に帰る前に、各施設を回っているのだが一向に会えない。

な、なんでなの……
流石におかしくないかしら………
もう入学してから日にちが経ってるのに、未だに会えないしイベントが一つも発生しない。
入学式に出なかったから?
もしかしてイベントの発生条件が変わってしまったの?

(どうすればいいのよーーー!!)


ーーーリリアは気付いていないが、実は何度か攻略対象者とすれ違っているのだ。

例えば、、、

図書館では宰相の息子ローランとイベントが発生するはずだが、リリアはよし!と意気込んで図書館で待ち伏せしていたら、目当ての本が見つからず困ってる女子生徒を見つけた。声を掛けて一緒に本を探していたら、思ってたより時間が掛かってしまい、その間にローランは図書館に来て用事を済ませて帰ってしまったのだ。

音楽ホールでは隣国の留学生シモンとイベントが発生するはずが、音楽ホールに向かう際に体調不良で廊下に蹲っている男子生徒を見つけ、校医室まで付き添っていったが、その間にシモンは音楽ホールに来て用事を済ませて帰ってしまった。

といったように、他の攻略対象者が近くまで来ても、タイミングが悪くすれ違ってしまっているのだ。

(こんなに中央棟を彷徨いてるのに、どうして会えないのよ。……………アルフレッド様にも会えないし……)

アルフレッド様と裏庭で出会ってから一度も会えてない。そもそも身分が違うのだから会う機会など殆どない。それは分かってる。なのに少し寂しいと思ってしまうのは何故だろう。

(さ、寂しいなんて!ち、違うわ!ただ確認したいことがあっただけで……だいたいズルイのよ。見た目はちょっと怖いけどとても優しいし。そ、、それに!最後にあんな目でみてくるなんて!)

あの後アルフレッド様が学生寮の少し離れた場所まで送って下さった。少し離れた場所で別れたのは、寮の人達に変な誤解をされない様に配慮して下さったのだろう。そして別れ際のアルフレッド様の眼差しがとても柔らかで優しい……まるで『愛おしい』と伝えるような………

(いやいや、ち、違うわ。ヒロインだからって自意識過剰すぎるわ。もう忘れましょう!アルフレッド様だって婚約者がいるだろうし……)

アルフレッド様を消し去るように頭を左右に振りながら、授業に集中しようと気持ちを切り替える。

学園の授業では一般教養の他に礼儀作法、ダンス、お茶会でのマナーなど貴族として必要な知識を教えてくれる。

ただ、殆どの方達は幼少の頃より家庭教師から教育を受けているし、お茶会だって何度も参加しているだろう。そういう方々は学園では授業より人脈を広げることに勤しんでいる。

私は子供の頃にお茶会に何度か参加しただけで、あまりマナーに自信がない。これからヒロインとして攻略するなら上級貴族に嫁ぐことなる。なので学園でしっかりと学んで少しでも立派な淑女に近づかなければ。

そして今日の授業が終わり、帰り支度をしている時に、エリー様の声が聞こえて私は深く溜め息を吐く。

(はぁーまたやってるのね。)

エリー様が同じクラスメイトのソニア様に不遜な態度で話をしているのだ。

「あら、ソニア様は随分見窄らしい指輪をつけていらっしゃるのですね」

「あ、、あの、これは、、お母様から譲り受けて…」

「えぇー!そんな見窄らしい指輪を?宝石も付いてないじゃない。私だったら恥ずかしくて着けられないわ。」

「エ、エリー様……この指輪は…い、いえ何でもないです。」

「何よ!私に歯向かうの!私はソニア様が恥ずかしい思いをしないように、物の価値を教えてあげてるのよ!感謝してもらいたいぐらいだわ。はぁーこれだから卑しい身分の人は……」

「"卑しい"とはどういう意味でしょうか?」

「リ、リリア様…」

「はぁっ!また貴方なの!」

私はお父様直伝の微笑みを貼り付け、エリー様とソニア様の間に割って入る。

「お話の途中に割り込みしてしまい申し訳ありません。先程からエリー様の煩い声澄んだ声が聞こえて参りましたので気になってしまいまして……。それで"卑しい"とは、どういう意味でしょうか?」

「あら、分からないの?貴方達みたいな人を言っているのよ。数が多いだけの男爵家なんて、、、ねぇ。平民と一緒じゃない。」

エリー様は私とソニア様を見て、嘲笑うように顔を歪ませる。

「成る程。では、エリー様は王家に対して批判的であるのですね。」

「はぁ??何言ってんの?」

「いえ、男爵家を卑しい身分と仰ってましたので。ご存知かと思いますが、現男爵家の殆どが王家より爵位を賜っております。エリー様は王家が卑しい身分に男爵の位を賜ったとお考えなのですね。」

「ち、違うわ、、な、何言ってんのよ……」

「あら?違うのですか?それにソニア様の指輪を見窄らしいと仰ってましたが、これは建国当初から伝わっている伝統技術が施されている指輪ですよ。この美しい彫刻が何よりの証拠ですわ。まさかご存知なかったのですか?」

「う、煩いわね!貴方は生意気なのよ!」

エリー様は顔を真っ赤にして巻くしたてる。
いつもこうなのだ。エリー様はソニア様のように言い返さない相手を選んで攻撃をする。
そこに私が割り込む。そして、、、

「お前あのヴァネッサ様が羨む・・・・・・・・・・・この私になんて態度なの!頭おかしいんじゃなくて。」

これなのだ。
いつもヴァネッサ様の話を出してくるのだ。
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