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 数時間ほど馬車を走らせると、国境にある検問所が見えてくる。

 ……どうしたんだろう? ギルは検問所から少し距離のある所で馬車を止めて、何か考えるているようだ。

「ギル? どうしたの?」

「いや……どうやって検問所を抜けるかな。ドミニク、何か考えがあったのか?」

 ギルが馬車の中のドミニクに声をかけると、窓から顔を出したドミニクは申し訳なさそうな顔をしている。

「も、申し訳ございません。クローディア様の追放は検問所にも通達されてるので問題なく通れるかと思っていたのですが……」

「襲われた今となっては危険すぎるな。ふむ……」

 検問所を通れなければ、迂回して森の中を抜けないといけない。でも今まで通った道と違って、道の整備がされていないから、馬車が走るのは難しい。

 どうすれば……(ガサッ、ザザ)

「えっ!?」

 突然聞こえた音に体を硬らせると、ギルは冷静に音がした方に目を向けた。

「……クライヴ、遅かったな」

「遅れまして申し訳ありません」

 な、なに!? この人達は……?
 
 ギルの声に応えるように木の影から、馬に乗り外套を着た男達が現れた。

「クローディア、皆は俺の仲間だから怖がることはない」

「ギルの仲間?」

 ギルの仲間なら騎士なのかしら?みんな威圧感というか……大柄というか……外套の上からでも鍛えあげられた体躯が分かるし、一様に鋭い目つきをしている。

 私がギルの仲間達を見つめていると……
 
「…クローディア、俺以外の男を見つめるなど……妬けてしまうな」

「ふ、ふぇぇッ!!」

 なんで、なんで舐めるの??

 拗ねた声をしながら後ろから抱きしめてきたギルがペロリと私の耳を舐める。
 
 ひ、人前で! 人前でやめてください!

「もしや、そちらのご令嬢が……」

「ああ、俺の番だ。クライヴ、検問所はどうした?」

 ふ、普通に話し始めた!?
 お願いだから普通に話し始めないで!

「ギ、ギル、離して……」

 恥ずかしいから離してほしいと訴えているのに、なぜかギルはニヤリと笑いながら私の耳に口づけを落としてくる。

「後でお仕置きだな」

 お、お仕置き? な、なんで??

 耳にかかるギルの吐息で顔が赤くなる。クライヴと呼ばれた男の人は、さっきから私を見ないようにしているし……。いえ、違うわ、クライヴ様だけでなく、他の人達も目を逸らしている……こ、これは居た堪れないわ。ど、どうにかしないと……
 
「検問所の人間は薬で眠らせております」

「……追っ手も検問所も程度が低いな。よし、急ぎ国に戻るぞ」

「ハッ、承知致しました」

 私がアタフタしている間にギルとクライヴ様は話が済んだのか、ギルは仲間の馬に乗り換えるために私を連れて御者台を降りた。馬車は仲間の一人が動かしてくれるらしい。

「お待ち下さい、へ……ギ、ギル様、安全の為に外套を羽織り下さい」

「ふむ。まぁ、しょうがないか。よし、俺の外套の中においで、クローディア」

 ギルは蕩けるような笑みで私に手招きする。

 なにが『よし』なのだろう?

 ギルが手渡された外套は翼を隠す為なのか、かなり大きめで私も一緒に覆うこともできそうだけど……。

 えっ? 私も一緒に入るの?
 
 咄嗟にクライヴ様に目線を向けて訴えてみたが、とっっっっても申し訳なさそうな顔で「言う通りにして」と訴える様に深く頷いた。

 これは……断ってはいけないわ。 
 うん……分かりました。

 ぎこちなくギルの元に駆け寄ると、フワリと馬に乗せられ後ろからギルが外套で覆い隠してくれる。

「さぁ行こう、クローディア。あと一息だ」

「えっ…えぇ」

 ギルは満足そうに私に笑いかけながら、馬の腹を蹴り検問所を駆け抜け、クライヴ様達も後に続いた。

 
 ……遠ざかっていく……。 
 産まれてから十八年間暮らしていた国。
 水の王国が遠ざかっていく……。

 遠ざかる国を見つめながら、心に宿るこの気持ちは故郷を離れることへの哀愁なのか、それとも喜びなのか。もしかしたら、どちらもかもしれない。

 複雑な気持ちを抱えながら、私は馬の進む方向に目を向けた。


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