狐、始めました。

怠惰

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神話時代

神聖王国退場

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「へい……か、申し訳……ありま…せん」

5代目神主が傷を再生させながらそう言った。傷は再生しても服はボロボロ。物凄く痛々しい見た目だ。

「お前ほどの者がどうした。そんなに強いのか?」

 勿論この答えは分かりきっている。

 どの種族でもそうだが何故か初代とそれ以降の神主では絶対的な力の差がある。

 理由は単純に本当の地獄を知っているからだ。我ら初代神主は皆、生まれてすぐに自分のダンジョンとなる場所に転移させられる。

 そこでダンジョンを攻略すると神主になれるのだが、2代目以降の神主は我々初代が育てるか拾ってくるのみ。

 あのダンジョンの最下層のような歩く災害みたいな魔物を知らないのだ。

 そしてそれを乗り越えた初代神主は皆実力はどんなに弱くても災害どころではすまない。
 
 ふと私は膨大な妖力を感じ咄嗟に結界を張った。その瞬間城が消し飛びそこから見えたのは消滅した神聖王国とその跡地にいる巨大な銀色の狐種だった。

 やはり我より恐らく年上。そしてこの気配。我では勝てん。

 周りには上位神たちが血だらけで倒れている。他の神は消滅したのだろう。

❴お前がこの国の王か……❵

 すると頭に直接響いたような、そうでもないような声が聞こえた。
 なので我はしっかりと名乗る。

「そうだ。我が初代元神主アーサーだ。」

❴そうか……なら盛大に苦しめて……ん? ヌシが計画したのではないのか…。❵

 いったい何を見て判断したのか知らないが、我はこの計画本当に知らなかった。

❴何故だ。❵

 我はこの間まで我の主のところにいた。戻ってきたときにはこの計画が進められていなのだ。
 引退した神主は原則として現神主の決定を邪魔してはいけないと言うルールがあるのは知っているだろう。だから止められなかった。

❴お主最上位神の眷属か……。面倒な。ならお主以外を殺せばいいだけのよ話❵

 狐はそう言って私以外の神々を一瞬で凍らせた。そしてそれは直ぐに静かに砕けていく。

--クッ……すまん。後輩共。

❴フン! 悪いのはお主らだ。自業自得と言うやつだ❵

 確かにそのとおりではあるのだが……、というよりも。

「何故先程から我は一言も喋ってないのに会話が成立する!」

❴それは考えていることを読んだからだ。要は済んだ。我はもう帰る。❵




 そうして数秒も経たぬうちにまるで先程居た狐はまるで幻想かのように消え、世界中の異常現象が収まった。
 後にこの災害は神話として語り継がれ、愚かな神聖王国と言う国が、狐の神の住処を奪おうとして返り討ちに合ったと言う話になっている。
 エラは終焉の銀狐と呼ばれ恐れられるようになり、エラ出会った、スカイガーデンと呼ばれていた空島は終焉の銀狐が住まう地として終末の大地と呼ばれるようになった。

 人族はこのときから完全に神の管理から外れ、人族のみで発展するようになった。

 人々は神主や神々のことを忘れ、神主をダンジョンマスターと呼び、神々は、天界に住まう神話の人々とされ、人々から正確な神と言う認識は無くなった。人々は最上位神の女神をこの世界の唯一神と考え、宗教を広めていく神主達や魔物達は化物や素材と認識され、魔族は人類の敵と言う認識が広まり魔王を殺すべしと言う考えを持ち始めた。

 そして人族の国は大きく分けてエルフやドワーフ、獣人などと一緒に生活している共和国と王国、他種族を劣等種として奴隷のように扱う宗教国家、聖王国、どんな種族でも受け入れるが実力主義の帝国が発展を告げた。このときにはエルフやドワーフ、獣人も神々や神主を忘れてしまった。精霊や天使を神の使徒と呼び神聖な生き物として拝めるようになった国もあるようだ。世界は変わった。忘れられる者、生まれる者。世界は常に廻っている。廻る。廻る。
これがエラと上位神達の戦いから5000年後の話だ。
私達神がおさめていた時代を神話時代とし、人々は新しい時代に歩み始めだ。
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