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第十四話

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「リアッ!」

がくがくと身体を揺さぶられている感じと、私の名前を呼ぶ声が聞こえて私は目を開けた。

目を開けるとそこにはエディとノア様がいた。

「リア!よかった…」

「ほら、だからただ寝ているだけと」

「リア、大丈夫?どこか調子が悪いとかある?」

「え、えっと…」

何故目の前にエディがいるのだろうか?私が眠る際はいなかったはず。

戸惑っている私にノア様はすかさず教えてくれた。

「エミリア、神子様はエミリアが怪我をしたと聞いて飛んできたそうだ」

「まぁ、そうでしたの…」

「当たり前じゃないか!リアが怪我をしたら飛んでこないはずがない!それより君、少しエミリアに近すぎやしないか?私より一歩後ろに下がってくれ」

シッシッと手でエディはノア様を追い払うようなことをし、私をギュッと抱きしめた。

私たちはもう赤の他人なのに…。

窓の外を見てみれば、あんなに高くにあった太陽がほぼ水平線と同じ高さまで低くなっていた。

もしかして、私かなり寝てた…?

「その、私どれくらい寝てましたか?」

「授業4つ分くらいかな。ぐっすり寝ていたよ。疲れていたのか?」

授業4つ分?!大変、授業ついていけるかしら?

「夢を見ていたので、それが原因かも知れないです」

神様のところに行っていたなんてそんな頓珍漢なことは言えない。頭のおかしい子って認識されてしまうわ。

「ふーん?夢ね…」

私が夢と言ったことに何か引っかかったのかエディは考え込んでいるようだった。

エディは神子様だから、私が寝ている間神様のところにいたとかわかってしまうのだろうか?
いや、そんなことはないと信じてる。だって私が会っていたのはこの国の神様じゃなくて、聖女様がいた国の神様なんだから。

そうよね!きっと気づかれないわ!

「夢か、楽しい夢だったか?」

「ええ!可愛らしい動物に会えましたの」

これはリスちゃんのこと。あんなに可愛らしい動物は見たことないわ!

「それはよかったな。もう遅い、俺の家の馬車で帰ろう。荷物はフローレンス嬢が持ってきてくれた」

「あの、我が家の馬車はどこに行ったのでしょう?」

「サンダース家の馬車なら俺がさっき帰した。最初は寝ているエミリアを待っていたんだが、御者が途中で何を思ったのか、物凄い笑顔で俺にエミリアを送るよう頼んできてな?
まぁ、俺としてはどっちでもいいから許可をしたら御者は手を振りながら帰って行ったぞ」

なるほど…。この間、御者が最近読んだ小説に恋のキューピットという役目を持つ天使がいて、私もそれになりたいですなぁとか言ってたわ。
つまり、御者は私とノア様が婚約すれば良い!私がお嬢様とノア様の恋のキューピットになったんじゃぁ!と高らかに屋敷で発言しているのが目に見えてきた。

違うわよ!ノア様は婚約者よ!それに、未婚、婚約者なしの男女が2人で馬車に乗るなんて社交界で噂になったらとんでもないことになるわよ!

これは、ノア様に大変申し訳ないことをしたわ…。御者は後でお説教よ!

「それは…。我が家の御者が申し訳ございません」

「いや、結局引き受けたのは俺だ。気にするな」

「ですが」

「ねぇ?馬車でリアと2人きりなんて私が許すとでも思う?」

突如この部屋の気温が下がった気がした。

「君はそのまま帰っていいよ?リアは私が送っていく」

「いえ、神子様。これは俺が頼まれたことですので。それに、貴方は聖女様という婚約者がいる身でしょう?そんな貴方がリアを送って行ったらそれこそ火種になりかねません。罰せられるのはリアです」

「うるさいなぁ…。皆私のことは神子と呼ぶ。私の名はエドワードだと言うのに。神子になっていいことなんて何一つなかった。

『皆が羨む神子だ。神子とは特別な存在だ』

皆が羨むのなら皆にくれてやる。私はそんなもの欲しくない。特別な存在?それはそうだ。自由を奪われるからな?勝手に好きな人との婚約を解消され、突然王族に養子に出され、覚えねばならぬことが膨大に増えた。それに、好きでもない聖女などという自分勝手な人間と婚約を結ばされた。

『あれはダメだ。これはダメだ。お前は神子だから。神子だからどうにかしろ。神子という立場はいいよな、神子というだけでもてはやされて』

好き勝手言う周りの人間。そんなに言うならこの立場あげるよ。
神子なんて立場私にはいらない。私に神子の能力なんてないよ」

エディの口から沢山の愚痴が溢れた。
目が今までにないほど濁っている。これは良くない。

私は力なく離れていったエディをギュッと抱きしめた。

「頑張ったのね、エディ。私はねエディが神子様になってからエディの幸せを願っていたの。神子様って素晴らしい特別な存在だからきっと幸せだと思ってたの。でも、それは違ったみたい。
特別にあるために周りからの圧に耐えてる。大変よね、辛いわよね。私今までエディの悪い噂なんて聞いたことなかったから、エディ物凄い努力したのね!さすがだわ」

ぽんぽんと背中をゆっくり叩いてあげる。
エディは自分の中に溜め込みやすい性格だから、前にも一度溜め込みすぎて爆発してしまった時があった。その時に私がギュッと抱きしめてあげたら静かに泣いていた。

「ッ…」

今もハラハラと声を押し殺して泣いている。

成長して溜め込む姿が見えないから、頑張り屋のエディを支えてあげる役目はもう私にはないと思っていたけど、やっぱりこういう役目の人が聖女様になるまで私がこうしてエディの愚痴を聞く係になりましょう。

そうしないとエディが壊れてしまうかもしれないわ。

「大丈夫、エディ。エディの頑張りはいつも私が見ているわ」

エディが泣き止むまで私は背中をさすり続けた。
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