クワンティエンの夢

多谷昇太

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吉野の桜

放すものかは、わが究極の姫を…

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両の手が身体を這いまわる、この身を確かめるかのように。そこかしこを這いずりまわる。なんという美しい娘…この私。なんという美の造型…私の身体。乳房をもたげ、横腹をさすり、内股を、腰を撫で、究極の官能の場所へとたどりつく…。すると、手がいつしか何者かに変わり、娘に代ってそこを愛撫し始める。ハッとばかり娘は目が覚めて、必死になってその何者かを退けようとするが、しかしそのあやかしは、まさしくそこにこそ執着し、触覚の極限の悦びを娘に与え続けて止まない。逆らえぬ、力強い両の手があやかしに生えて、娘の両脚をひろげ、そしてついにあやかしは己の本性本体を現しつつ、中へと…

こんどこそ本当に目が覚めた。レースのカーテンから差し込む朝のひかりをまぶしげに見つめる。やるせなげにため息をついてまだ火照りが残る身体をなでまわすが、しかし次の瞬間いまいましげに舌打ちして自分の両の手を交互に払いのけた。常々なさけないこと、いまいましいこととみずからに禁じていた自慰のしぐさが、ここに来てなぜか夢中とは云え止められなくなってきた。まるで何かの予兆のように、拒んでも拒んでも毎夜この身体に来たっては全身をもてあそぶ。これと同じことがちょうど今から3年前にも起こったのだが、今の世の少なからぬ女性たちが為すという、処女マリアへのみずからの贖いをすることで、また(ある)道に精進することでようやくその悪癖を払い退けたばかりだった。しかるにまた…ということで少なからず娘の心は苛まれざるを得ない。特に今日という日は彼女にとっては神聖で、今日これからある聖所詣でに出発するのだったが、この様ではそこにおわします聖人に言いわけができず、また集う仲間たちにも面目が立たなかった。せめて身体だけでも清めて行こうと思い立ち、寝具をはらいのけて、朝シャンならぬ朝シャワーを使うべく娘は風呂場へと向かう。ここのところ春らしからぬ寒さが続いていて、彼の聖人と聖所になくてはならない桜の開花が娘の住む東京では遅れていた。聖地がある関西地方はどうなのだろう?風呂場の小窓を開けて外を見たが春どころか冬のくもり空が広がっていた。雪さえも降って来そうだ。先が思いやられたがそれを振り払うかのように、娘は寝間着も下着も勢いよく脱ぎ捨てて全裸となり、禊をするようにシャワーを使い始めた…。
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