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第八章 天国と地獄のサスペンス(1)
ミキの言葉を暗誦してみせる
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俺はわずかに沈黙したあとでやおらこう返事をしてみせる。
「そうだな、山ちゃん、もしそうだとしてもさ、俺だっていつかは死ぬんだ。その映画の、その…異人側になる分けだよ。そのことに何も拘泥はしないさ。ただ…」
「ただ…何だよ」
「ただな、俺はミキの、あ、いや、だからその✕✕✕✕✕✕✕さんの無念を、彼女が今いる闇を晴らしたいんだ。彼女に入れ込んでそう云う分けじゃなくて(でもないか?)、そうすることが彼女ばかりか俺自身の、もっと云えば我々万人の闇を晴らすことにつながると思うんだ」
いつの間にか入れ替わってしまった本醸造の徳利を盃に注ぎ旨そうに飲み干してから、俺は思い切ってミキの言葉を山口の前で暗誦してみせる。
「あのバーで✕✕✕✕✕✕✕さんは俺にこう云ってたんだぜ。〝そう!そう!そうなの!田村さん…わたしは本当に寂しいのよ!そして怖いのよ!廻りは真っ暗っ!…何もありゃしないし、何も見えない。怖くって、寂しくって、悲しくって…それで堪えられなくなった時に、アイツからお誘いが来るのよ〟ってな」
「(呆れ顔で)よー覚えやがったな。ところでそのアイツって誰よ?」
「(失笑して)その言葉が強烈に心に残ったんでな。それで、そのアイツってえのはМAD博士、さっき云ったバーの会計係、渋谷の道玄坂で、遠ざかる車の中に見たやつだよ。しこうして実際はどこかの大学の医学博士…じゃないかと思っているんだ。МAD博士ってのは俺が命名したんだよ」
「そうだな、山ちゃん、もしそうだとしてもさ、俺だっていつかは死ぬんだ。その映画の、その…異人側になる分けだよ。そのことに何も拘泥はしないさ。ただ…」
「ただ…何だよ」
「ただな、俺はミキの、あ、いや、だからその✕✕✕✕✕✕✕さんの無念を、彼女が今いる闇を晴らしたいんだ。彼女に入れ込んでそう云う分けじゃなくて(でもないか?)、そうすることが彼女ばかりか俺自身の、もっと云えば我々万人の闇を晴らすことにつながると思うんだ」
いつの間にか入れ替わってしまった本醸造の徳利を盃に注ぎ旨そうに飲み干してから、俺は思い切ってミキの言葉を山口の前で暗誦してみせる。
「あのバーで✕✕✕✕✕✕✕さんは俺にこう云ってたんだぜ。〝そう!そう!そうなの!田村さん…わたしは本当に寂しいのよ!そして怖いのよ!廻りは真っ暗っ!…何もありゃしないし、何も見えない。怖くって、寂しくって、悲しくって…それで堪えられなくなった時に、アイツからお誘いが来るのよ〟ってな」
「(呆れ顔で)よー覚えやがったな。ところでそのアイツって誰よ?」
「(失笑して)その言葉が強烈に心に残ったんでな。それで、そのアイツってえのはМAD博士、さっき云ったバーの会計係、渋谷の道玄坂で、遠ざかる車の中に見たやつだよ。しこうして実際はどこかの大学の医学博士…じゃないかと思っているんだ。МAD博士ってのは俺が命名したんだよ」
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