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第三章 夢の絆

山倉が見舞いに来てくれた

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 昼過ぎになって山倉が訪ねて来てくれた。果物やら菓子やらを土産に持って来てくれている。ここの場所は携帯で事前に聞いてくれていたのだ。さすがタクシーの運転手で✕✕病院と告げただけで一発で分かったようだ。それにしてももう何度も云うが、本当に申し訳ないことと思っている。お金を使わせ時間を使わせ彼の商売を邪魔すること甚だしい。その旨をくどくどしく詫びる私に…
「ハハハ、いいよ、いいよ。気にしなさんな。お互い明美ちゃんを救えてよかったじゃないか。それよりさ、ずいぶんと凄まじいご面相になっちまったじゃないか。ええ?」
「ああ、時間が経って腫れあがって来たからな。さっきトイレの鏡で見て来たよ。まあ面目ない話だ」
「うーん、いやいや、そんなことはないさ。男の勲章だよ。田中さん。実際のところさ、俺は見直したよ。川崎で一緒に勤めていた時はあんた、人から云われてもじっと堪えるばかりで殆ど何も云い返さなかったじゃないか。もう常識もクソもない、殆ど難癖に近いことを云う奴も居たし…俺はそういうの大嫌いだったからさ、あんたを応援するつもりでお近づき願ったんだよ。だけど本当はいい根性してたんだ。ええ?大したもんだよ。ハハハ。それで、傷の方はどうだって?医者はなんて云ってた?」
 往時のこと、〝人から云われてもじっと堪えていただけ…〟という背景には、件のストーカーどもを通じて、私の不名誉な事柄をSNS上で流されていたという事実があったのである。今でこそ女子プロレスの選手が、ネットでの誹謗中傷を苦にして自殺した事件とか、韓国の人気女性アイドルが同様な目に遭ったことなどで、ネット上における噂・誹謗中傷がどれほどひどく、強いものであるかは疾っくの昔に周知のこととなっている。
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