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第二章 デュランス河のほとりで

警察に通報しよう

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絶句する山倉に2人の女性のうちの1人が「はい。そうなんです。私たち河畔の散歩をしていたんですけど霧の中からこの子の〝いやあー!〟と泣き叫ぶ声が。近くに寄ってよく見るとあの男がこの子の足に何か重しを結んでいるような…まだあそこにある筈です」と云って川沿いのプロムナードを指さす。「よし」とばかり山倉がプロムナードへと降りる。すぐに「ああ、あった。あった。かーっ、重い。これは5キロのダンベルだ。しかも鎖と手錠まで付いてやがる。こんなものを括りつけて…」と絶句したあとで我々のもとへと戻って来た。「いやあ、まったくもう、こんなことがあるなんて…しかし田中さん、あの時の嫌な感じが当たったな」そう云いつつ改めて怯えたままの幼女の姿を見、青たんで口の左上が腫れあがった俺の顔を見た。「殴られたのか」「ああ」そううなずいてからここに来るまでの簡単な経緯を語る俺や、またなぜこんな夜遅くに自分たち2人が河畔を散歩していたのか等を語る女性の話を交互に聞きながら、山倉は何事かを考えている様子。ややあって彼はおもむろに我々にこう云いわたした。「よし、わかった。とにかくさ、今はすぐに警察に通報しよう。この不始末をその男らが放置する筈がない。おっつけここに戻って来るだろう。だから今はその…危険だ。(警察に通報しても)いいですね?」と女性に念を押す。「はい」とうなずく女性、元より私に異論はない。山倉の状況判断をさすがだといまさらのように思う。確かにダンベルやら複数の証人を放置して男らがこのまま引き下がる筈がなかったのだ。ベルトホルダーからスマホを取り出すと山倉は躊躇なく110番をした。自分の身分を明かし要点をかいつまんで伝えてからパトカーの緊急派遣を要請する。
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