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第二章 デュランス河のほとりで
鬼畜の所業
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「けっ、明美。まったくお前もしょうがねえな。受け元の家で喘息など起こしやがって。ちぇっ。これじゃもうどうしようもねえ…可哀想だが此処で始末してやるからな」「いや!やめて!おじちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい!」「うるせえ!」続けて幼女が必死に抗っているような声と身の動きが感じられたが、それも空しく男が幼女を川に投げ込んだような水音が立つ。『ううっ…止めろ!止めろーっ!』夢の中で私は両の拳を握りしめ大声を発して2人のもとに駆け寄ろうとしている。しかし金縛りに会ったようにその声が出ず、身体もまったく動かない。靄の中から水面をかき混ぜる音が立ち、このド畜生男にではなく、誰か別の人間を呼ぶような悲鳴に近い少女の声が伝わって来た。「おじちゃーん!おじちゃーん!助けてー!」それでも動けない私の身体…私はもどかしさの余り気も狂いそうだ!しかしそのような慙愧に堪えず狂おしい状態を解き、行動に導く、何者か別人の声が私の胸の底から伝わって来た。「田中さん、田中さん!来て!行ってあげて!」と私を呼んでいる。A子だった。『ううっ、A子、いま…いま行く…』と身悶えするうちにようやく目が覚めた。現実にもどった。「夢かあ…」と独り言ちながら全身に冷や汗を掻き息を荒げている自分を確認する。悪夢の余りのもの凄さに取り敢えず気を鎮めようと1本立てる。しかし立ち上る紫煙の間から見えるA子の肖像画がなお私を責めるようだ。思えばあのA子との奇跡の邂逅以来立ち直り、生き直そうと私はしたのだったが、云い分けにはしたくはないがこの今も隣にいるだろうアベック始め、ストーカーヤクザどもの執拗な追跡のお陰で、まったくそれが出来ないでいたのだ。
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