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第二章 デュランス河のほとりで
気になる親子(?)連れ
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「OK、わかったよ。場所はわかったけどさ、ついでに携帯の番号教えといてくれる?」自分の携帯を取り出しては私が伝える番号を山倉は記載した。その後山倉が断るのにも構わず私は見送りをする為に彼のタクシーの置いてある場所まで同行した。運転席に乗り込んでウインドウを下ろしてから「まあさ、俺もこの商売でいろんな人に会うから、もし役に立つ情報を摑んだら教えてやるよ。それとさ…どうなのよ、この今の俺の商売は。タクシーはよ。免許あるんでしょ?」と云うのに「ああ、あるけど年だしなあ…目もちょっとあれで、とても二種免許取る自信はないよ」と私は応ずる他はない。前記したフレディストーカー(※映画「エルム街の悪魔」から捩る)による災禍で左目が悪くなっているのだ。それを云いたいが今は呑みこむしかない。しかしその私の無念を感じ取ったように山倉は「そうかあ…いろいろありそうだな。まあさ、今度たっぷりと聞かせてもらうよ。じゃあ…」とフェアウエルを云いかけて口をつぐむ。その彼の視線を追うと小学校低学年生と思しき年頃の女の子を連れた、40年配の男が私の脇を今しも通り抜けるところだった。思わず私も口をつぐんだのだがその分けは、二人連れの雰囲気が何か異様なのと、何よりも私と山倉に何かを訴えかけるような女の子の目が印象的だったからだ。悲しみを目にいっぱい浮かべたような、ちょっと放って置けないような危機感と切迫感をもよおされる。思わず山倉と目を合わせたがしかしどうにもなるものではない。おっつけ親子連れなのだろうが仮にそこにDVがあろうとも赤の他人の我々が詰問することなど出来ようか。黙って見送るしかなかった。それを顎をしゃくって示しながら山倉が云う。「今日日ああいうのが増えたな。DVの雰囲気がプンプンするよ。あれが客で車内にいるんだったら俺もそれとなく事情を聞くんだがな。まあ、仕方ないさ」私も同意するしかない。
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