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第一章 山倉タクシー

蟻の街のマリア公園

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申請承認の期待に憑かれていた為か、あるいは常日頃の超寝不足状態の反動が出たものか、その直後私は近くの隅田公園に行き、はからずもベンチの上で前後不覚の眠りに落ちてしまった。気が付けば夜になっていて、モサモサと起き出しては夜の巷に出て来たところである。この〝超寝不足状態〟ということに付いては特別にレクチャーせねばならないことがゴマンとあるのだが今は止めておく。とてもとても自己責任で十把一絡げにされてしまっては、絶対に肯んじ得ない特別な事情が私にはあったのだ。敢て一言で云えばエルム街の悪魔のごときチンピラヤクザどもの、理不尽極まるストーカー行為を、長、年に渡って私は被っていた。この被害を何度警察に訴えても取り合いもしない。よーし、それならばその警察をも含めた公的機関への、意趣返しのようなつもりでもって、私は生活保護を申請したつもりででもあったのである。なんの引け目もやましさもありはしない…などと強引に自分に云い聞かせてはみたものの、ただ善意の第三者は必ずしもそうは思わないだろう…などとも思う。しかしとにかく…そんなことを云ってみても始まらない。申請は却下されたのだし、ぼちぼちとでも家に帰らねばならない。私は〝蟻の街のマリア公園〟を出でて浅草駅へと歩き出した。途上行き交う勤め帰りのサラリーや若者たちが「プータロー」と何人でも罵って行ってくれる。勝手にしやがれだ。

  【隅田公園。かの蟻の街があった所。蟻の街のマリアが生涯を送った所】
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