53 / 66
第三章 ストーカー
台風7号、御蔵島(みくらじま)移住(3)
しおりを挟む
401号からは四六時中部屋に持ち込んだ小型コンプレッサーかインバーダーのような機械音を立てて来ます。常人なら1日も、いや1時間も持たないでしょう。こんな環境に(何回も転居したが都度追いかけて来、隣住されるので)なんと23年間ですよ、あなた。ふふふ。これじゃあ私も年中眉根を顰めた根暗男になってしまいますよ。人と口を利くことなど薬屋で「タバコくれ」のひとことか、あるいは(74才の身で)時折り訪れるハローワークで職員と受け答えをするだけです。あとは皆無です。ですから農漁協購買部前での四方山(よもやま)話仲間に…と期待したのですが、しかし反面で彼らから「おめえ、74才にもなってなんでこんな島に来た?しかもたった1人で」と聞かれるのは必定だろうし、説明しても「おかしな、変な野郎」と決めつけられて浮き上がってしまうのではないか、と恐れもしたのです。人口が少ないだけにそうなったら大変だし(※これが私の取り越し苦労性、尽々嫌になる!)それから始まってあとは思案投首のオンパレードでした。御蔵島から200キロ以上離れた神奈川の自宅までは1ヶ月に一度の帰宅も叶わないだろうし(往復交通費が3万円近い、従って鉢植植物は皆枯れる)、かと云って一気に家具を整理して端っから引っ越してしまう分けにも行かない。仕事はともかく(パッカー車は経験もあり自信があった)人間関係その他で躓くことがあるやも知れない。それに何せこの年だから引退後の行末も考えて置かなければならなかった。即ち特養などにパートの掛け持ちバイトをして、そこに渡りを付けておこうと常々画策していたのだったし、しかしその肝心の特養は三宅島に一軒あるだけでそこまでの往復船賃が4千円だった。それやこれや考えているうちに収拾が付かなくなり、畢竟ストーカーゆえにパトスに陥った心を、優柔不断で手前勝手なロゴスで目眩ましにしてしまったのです。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
渋谷少女A続編・山倉タクシー
多谷昇太
ライト文芸
これは既発表の「渋谷少女Aーイントロダクション」の続編です。霊界の東京から現実の東京に舞台を移しての新たな展開…田中茂平は69才になっていますが現世に復帰したA子とB子は果してあのまま…つまり高校生のままなのでしょうか?以降ざっと筋を述べたいのですがしかし叶いません。なぜか。前作でもそうですが実は私自身が楽しみながら創作をしているので都度の閃きに任せるしかないのです。唯今回も見た夢から物語は始まりました。シャンソン歌手の故・中原美佐緒嬢の歌「河は呼んでいる」、♬〜デュランス河の 流れのように 小鹿のような その足で 駈けろよ 駈けろ かわいいオルタンスよ 小鳥のように いつも自由に〜♬ この歌に感応したような夢を見たのです。そしてこの歌詞内の「オルタンス」を「A子」として構想はみるみる内に広がって行きました…。
エッセイのプロムナード
多谷昇太
ライト文芸
題名を「エッセイのプロムナード」と付けました。河畔を散歩するようにエッセイのプロムナードを歩いていただきたく、そう命名したのです。歩く河畔がさくらの時期であったなら、川面には散ったさくらの花々が流れているやも知れません。その行く(あるいは逝く?)花々を人生を流れ行く無数の人々の姿と見るならば、その一枚一枚の花びらにはきっとそれぞれの氏・素性や、個性と生き方がある(あるいはあった)ことでしょう。この河畔があたかも彼岸ででもあるかのように、おおらかで、充たされた気持ちで行くならば、その無数の花々の「斯く生きた」というそれぞれの言挙げが、ひとつのオームとなって聞こえて来るような気さえします。この仏教の悟りの表出と云われる聖音の域まで至れるような、心の底からの花片の声を、その思考や生き様を綴って行きたいと思います。どうぞこのプロムナードを時に訪れ、歩いてみてください…。
※「オーム」:ヘルマン・ヘッセ著「シッダールタ」のラストにその何たるかがよく描かれています。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる