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第三章 ストーカー

台風7号、御蔵島(みくらじま)移住(3)

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401号からは四六時中部屋に持ち込んだ小型コンプレッサーかインバーダーのような機械音を立てて来ます。常人なら1日も、いや1時間も持たないでしょう。こんな環境に(何回も転居したが都度追いかけて来、隣住されるので)なんと23年間ですよ、あなた。ふふふ。これじゃあ私も年中眉根を顰めた根暗男になってしまいますよ。人と口を利くことなど薬屋で「タバコくれ」のひとことか、あるいは(74才の身で)時折り訪れるハローワークで職員と受け答えをするだけです。あとは皆無です。ですから農漁協購買部前での四方山(よもやま)話仲間に…と期待したのですが、しかし反面で彼らから「おめえ、74才にもなってなんでこんな島に来た?しかもたった1人で」と聞かれるのは必定だろうし、説明しても「おかしな、変な野郎」と決めつけられて浮き上がってしまうのではないか、と恐れもしたのです。人口が少ないだけにそうなったら大変だし(※これが私の取り越し苦労性、尽々嫌になる!)それから始まってあとは思案投首のオンパレードでした。御蔵島から200キロ以上離れた神奈川の自宅までは1ヶ月に一度の帰宅も叶わないだろうし(往復交通費が3万円近い、従って鉢植植物は皆枯れる)、かと云って一気に家具を整理して端っから引っ越してしまう分けにも行かない。仕事はともかく(パッカー車は経験もあり自信があった)人間関係その他で躓くことがあるやも知れない。それに何せこの年だから引退後の行末も考えて置かなければならなかった。即ち特養などにパートの掛け持ちバイトをして、そこに渡りを付けておこうと常々画策していたのだったし、しかしその肝心の特養は三宅島に一軒あるだけでそこまでの往復船賃が4千円だった。それやこれや考えているうちに収拾が付かなくなり、畢竟ストーカーゆえにパトスに陥った心を、優柔不断で手前勝手なロゴスで目眩ましにしてしまったのです。
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