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第三章 ストーカー

台風7号、御蔵島(みくらじま)移住(2)

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仮に追っかけて来てまたぞろ悪さをしようとしても、人口わずか323人の島ではすぐに知れ渡ってしまうでしょう。しかし20数年間に及ぶ此奴らの親分(つまり真犯人、不動産屋の金満家)からの送り金、生活費の累計の重しは凄まじいらしく、暫くの間は顔を突き合わせて静まり返っておりました。だがこちらは嬉しい限りです。さっそく島までの交通費・船賃や竹芝桟橋からの出航時刻(真夜中の出航でした。すれば翌朝5時に島に着く)を調べ上げ、ボストンバックにあれやこれを入れ、ベランダに置いてある鉢植植物たちの下に水皿を当てて…などと画策し始めたのでした。ところが、まさにここで、私の己心の魔が襲い来たったのです。私の弱い性格と意志薄弱ぶりを突いて来た。きっかけは私の苦労性でした。私は待てよ、島の物価は果してどれくらいだろうと思い立ち、PCで検索を始めたのでした。すると「軽く本土の2、3倍はする」とあり、コンビニなどはもちろん無く、食料など生活必需品を買う商店も主に土産店である商店が2軒と(土産店じゃあこちらは使えない、調べてみたらのり弁ひとつが軽く千円以上するのだ)、農漁協の購買部が1軒ある切りでした。この農漁協の購買部の前では仕事を終えた島の男たちが集まって来ては四方山(よもやま)話に毎夕耽るのだそうです。要するに島民みんなが顔馴染みという分けです。御蔵島観光協会のブログにそう書いてある、紹介されています。私のような友人皆無の寂しき男であったれば、こんな環境は願ったり叶ったりで、四方山(よもやま)話のその輪の中に入れてもらえる?…と想像し、そう期待もしたのでした。何せあなた、いま居るこの神奈川県秦野市にあるこの団地では、5階角部屋に住む私を取り囲むようにヤクザのストーカーどもが真下の401号室始め、階段の部屋部屋に陣取っては毎朝毎夕毎晩(要するに一日中)私にがなり立て、プータプータと私を罵り続けるのです。
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