55 / 65
引っ越し顛末記(一)
霊視女の誘導
しおりを挟む
車上生活をようやく終えて港南区のアパートに入居する時のこと、上記縷々記した霊視による追跡を知っていたので、私はアパート選びをする上でも自分に次の選択条件を課していた。もう二度とストーカー四人組に隣接されて住まわれたくなかったからだ。その第一は無理をしてでも家賃5万円ほどの部屋を借りること。始めのアパートは賃料3万円の1DKで、こう云ってはなんだが住む人間の質もある程度家賃の額に比例するのではないか、などと危惧したからである。あの蹴飛ばし合いを体験したからには自分で云うのもなんだがそれも無理からぬことだった。二番目は二階に住むこと。こちらも階下の夫婦者(もちろん野郎の方だが)のあの凄まじい足踏みを体験したので、あれがもし頭上で行われたら堪えられまいと危惧したからだ。三番目は角部屋であること。2F角部屋ならば例えモンスター住民がいたとしても受ける迷惑の程度が少なくて済むからである。そして最後の条件は云わずもがな、真下の部屋と隣の部屋にすでに人が住んでいることだった。すでに人が住んでいるなら奴ら四人組がそこに入ろうとしても当然無理だからだ。この条件のもとに以前の鶴見区は避けて海沿いの金沢八景辺りから探したが(下町を避けて郊外に出たかった)この四つの条件に合うところはなかった。なにしろどこも空き部屋が多くてまれに条件に合いそうなところがあっても今度はなぜか断られる。できるだけ鶴見区に近づかないように、京急の駅のうちでめぼしいところを上って来る。勤めの合間の休日だけを利用するのでハカが行かない。車上生活を早く断って畳の上で寝たかったこともあり焦燥ばかりがつのる。そうするうちにやがて上大岡に至った。不動産屋が何軒もあって一通りまわったがそれ以前と同じ塩梅で条件が合わなかったり、稀に条件が合いそうなところがあって口入れをしても後日になって断られた。ここにいたって不審感が増してくる。どうも何かおかしい。元のアパートの大家のテリトリーが鶴見区だったからボーダーラインはどうしても鶴見区以西にしたかった。特急が止まることもあり上大岡あたりがやはりよいのだが致し方ない、そろそろあきらめて駅を変えようとしたがそのとき「いま一軒」という想念と云うか、誰かからの伝達のような思いが感じられてふらふらと上大岡アーケード街の裏手の方に導かれるように入って行く。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
渋谷少女A続編・山倉タクシー
多谷昇太
ライト文芸
これは既発表の「渋谷少女Aーイントロダクション」の続編です。霊界の東京から現実の東京に舞台を移しての新たな展開…田中茂平は69才になっていますが現世に復帰したA子とB子は果してあのまま…つまり高校生のままなのでしょうか?以降ざっと筋を述べたいのですがしかし叶いません。なぜか。前作でもそうですが実は私自身が楽しみながら創作をしているので都度の閃きに任せるしかないのです。唯今回も見た夢から物語は始まりました。シャンソン歌手の故・中原美佐緒嬢の歌「河は呼んでいる」、♬〜デュランス河の 流れのように 小鹿のような その足で 駈けろよ 駈けろ かわいいオルタンスよ 小鳥のように いつも自由に〜♬ この歌に感応したような夢を見たのです。そしてこの歌詞内の「オルタンス」を「A子」として構想はみるみる内に広がって行きました…。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
流れのケンちゃん
多谷昇太
ライト文芸
〈お断り〉取りあえずこれはラジオドラマ用のシナリオです。‘目で聞く’ラジオと思ってください。配役はお好きな俳優を各自で当ててください。
以下あらすじ:25才の青年が九州は博多の街に流れ着きます。彼はここにいたる前の2年間をヨーロッパを中心に世界中(ロシア・ヨーロッパ・中近東・インド・タイ等)を単身で放浪して来た身の上でした。放浪のわけは「詩人・ランボーに憧れて」と「人はなぜ生まれたのか、また何のために生きるのか、現に生きているのか…を探る」の2点でした。つまり早い話がそんなことにかまけている、世間知らずの甘ちゃんだったわけです。そんな彼に人生の解答を与えてくれた女性がいました。彼より3つ年上の元・極妻だった女性。「ケンちゃん、運命(さだめ)を超えないけんよ。さだめ橋を渡らな。うちもいっしょに行ったるっちゃ」と云って諌めてくれます。みずからの身体をも与えて…。さて、あらすじより本編です。どうぞラジオドラマをお楽しみください。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
短編集 【雨降る日に……】
星河琉嘩
ライト文芸
街の一角に佇む喫茶店。
その喫茶店に来る人たちの話です。
1話1話がとても短いお話になっています。
その他のお話も何か書けたら更新していきます。
【雨降る日に……】
【空の上に……】
【秋晴れの日に】
【君の隣】
【君の影】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる