エッセイのプロムナード

多谷昇太

文字の大きさ
上 下
23 / 65
スクールカーストへの考察

現実社会へのリベンジ

しおりを挟む
で、スクールカーストに戻りますが、例えばイジメを受けてそれを先生に訴えたとしても良くて聞いてはくれましょうが(あるいは無視される?)、十中八九イジメをしている生徒らへの効果的な指導は為されず(そのゆえは前記内藤朝雄の「いじめの構造」をご参照ください)、却って「云いつけたな…」とばかりイジメがエスカレートしてしまうわけです。謂わば正義も規範も通じない、カースト上位の恣意と意向のみを基盤とした無法社会、その空間であるということで、これを大人社会で云うなら“当該機関に訴え出ても一切相手にすらしてもらえない″という現実となるわけです。先の「大人社会が子供の世界に凝縮されて投影される」がゆえのイジメ湧現なのであり、にも拘わらず就学の一定期間を此処で過ごさなければならないのならば、ここに於けるカースト下位に置かれた子の悲惨さたるや…想像がつくというものです。このようにシリアス極まる体験を経ての、昨今の青年ライターたちによるトレンドなのではないでしょうか。異世界への逃避、その逆の異世界からこの世への介入、その二面に於ける現実社会への批判とリベンジ的指向になるわけです。

 さて、元よりこのライターたちが文学論や文学の系譜というものを理解意識して書いているとは到底思えません。他ならぬこの私も含めて殆どがそんなことは露も考えずに、およそディレッタント的指向以て書いていることでしょう。であるならば伊藤氏の云う2000年頃から小説への熱意を失ったことや、「純文学の本質は…自己のあるべき姿にこだわり…自分は何をしているのか、それで良いのか?を問うものでなければならない」という我々への謂わば諫めもむべなるかなと思う次第です。紙媒体からIT化し、活字より映像を好むような若者たちが仰るような消費社会のメイン層であるならば、必然的に文学の傾向もそれをターゲットとし追うようなものにならざるを得ないわけです。すればこの皮相軽薄なるものを(?)文学評論で何とか位置付けし語ること自体が、辟易とさせられるものなのかも知れません。文学は退化し幼稚化しその系譜も断ち切られた…とさえ映ることでしょう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

葵の心

多谷昇太
ライト文芸
「あをによし奈良の都に初袖のみやこ乙女らはなやぎ行けり」これはン十年前に筆者が奈良地方を正月に旅した折りに詠んだ和歌です。一般に我々東京者の目から見れば関西地方の人々は概して明るく社交的で、他人と語らうにも気安く見えます。奈良の法隆寺で見た初詣の〝みやこ乙女たち〟の振袖姿の美しさとも相俟って、往時の正月旅行が今も鮮明に印象に残っています。これに彼の著名な仏像写真家である入江泰吉のプロフィールを重ねて思い立ったのがこの作品です。戦争によって精神の失調を覚えていた入江は、自分のふるさとである奈良県は斑鳩の里へ目を向けることで(写真に撮ることで)自らを回復させます。そこにいわば西方浄土のやすらぎを見入出したわけですが、私は敢てここに〝みやこ乙女〟を入れてみました。人が失調するのも多分に人間によってですが(例えばその愚挙の最たる戦争とかによって)、それならば回復するにもやはり人間によってなされなければならないと考えます。葵の花言葉を体現したようなヒロイン和泉と、だらしなくも見っともない(?)根暗の青年である入江向一の恋愛模様をご鑑賞ください。 ※表紙の絵はイラストレーター〝こたかん〟さんにわざわざ描いてもらったものです。どうぞお見知りおきください。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...