自らを越えて 第一巻

多谷昇太

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違いを超えて話そう

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そんなレベルどころかさ、クラス中でいじめられて、それこそ今のあんたの話じゃないけど、死ぬ思いをしている子だっているんだよ。まったくさ、あんたのご託を聞きにわざわざ山に来たんじゃないんだからね」とさも軽蔑したように宣(のたま)わってくれる。「そうなんです。村田先輩。その死ぬ思いをしてた子っていうのは実はあたしで、中学生のころだったんだけど…その、そんなイジメっ子たちをみんなブッ飛ばして、助けてくれたのがカナだったの。おかげでいまは高校生になっても誰もカナを怖がって、あたし、いじめられなくなったの」とミカがカナの言葉を受け継いだ。さらに「だからその、先輩も誰か強い人を見つけて、んで仲良くなって、その人に守ってもらえばいいですよ」と親身に?云ってもくれる。俺はそんなミカのアドバイスに『それはちょっと違うんじゃないの?』とばかり苦笑いする他なかった。しかしこうしてミカにしてもカナにしても本音で語ってくれるのがとても新鮮だった。俺は間違いなくいま未体験ゾーンにいる。「ちょ、ちょっと」と吹き出し気味に大伴さんが割って入る。「ミカさ、村田君はカナが云うように男なんだから、そんな強い人に頼るなんてことは安易にできないのよ。それとカナさ、あんたの云うこともよーくわかるし、確かにそれも云えるんだけど…そのなんて云うか、村田君の求めているもの、それを得るためにいま感じている壁というのは、いまいちあんたが一言で決めつけるほど簡単なものじゃないんじゃない?それが何なんだかね、私も知りたいんだけどね」と云い、さらに「それでもいい、いい。こうしてみんなが本音で語り合うところに新しいものが生まれ、違いを超えて本当の親和に至ることができるのよ」とも云ってみせる。
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