65 / 118
丹沢行(1)
野鳥の祝福
しおりを挟む
「え?何で?〝隊長さん〟は水の中に入って行ってるよ」と云うカナに「いいの。村田君はキャラバンだからそうしてるの。いいから私の云う通りにして」と大伴さんが答え「ちぇっ、それだったらそう云ってくれよな。足がびちょびちょだよ」とカナが俺に小声で毒づく。一方すばやく指示に従ったミカが「あ、ホントだ。この方が全然いい。猿飛佐助になったみたいだ。ほらピョンピョンと…いくらでも早く行けるよ」と云いながら前に距離を詰めて来、カナが「だよな。隊長さん、もっと早く行ってくれよ」と俺をせかす。しかし大伴さんの「こら、カナ。余計なことを云うな。村田君にペースを合わせて行けばいいの」に「ちぇっ」と舌打つ。うしろのカナがやたらブーたれてやりにくいが無視して上って行く。それに大伴さんもそんなことを云うんだったら自分が先導してくれればいいのにとも思うけれど、しかしそんなことを一切度返ししてもこの初体験、すなわち自分が他人を先導して行く、何より他人といっしょに行動している、分けても大伴さんと連れ立っていられるという喜びに胸は湧き心は踊るのだった。時々必要もないのにうしろをふり向いてはマドンナの姿を確認しこのいまの正夢を噛みしめる。もっともその度に不審の眼と眼付けを送るカナが忌々しかったが。谷のあちこちでコガラやシジュウカラ、メジロなど、野鳥の鳴き声が響きわたり俺の喜びを共有してくれるようだった…。
そうこうして30分ほど行くうちに最初の滝であるF1四段目(高さ6メートル)が現れた。「どひゃー、これを登るんでがすかあ?」「へええ、上等じゃん」とミカとカナが云う。「そう。これが沢登りの醍醐味。いい?じゃあね、この始めの滝はわたしが最初に登って見本を見せるから。村田君は最後に残って万一2人が落ちたら支えてあげて。ね?」と大伴さんが云いさらに「2人が登ったらわたしはもう一度降りてあなたを見るから」とつけ加える。
【愛らしいシジュウカラの姿】
そうこうして30分ほど行くうちに最初の滝であるF1四段目(高さ6メートル)が現れた。「どひゃー、これを登るんでがすかあ?」「へええ、上等じゃん」とミカとカナが云う。「そう。これが沢登りの醍醐味。いい?じゃあね、この始めの滝はわたしが最初に登って見本を見せるから。村田君は最後に残って万一2人が落ちたら支えてあげて。ね?」と大伴さんが云いさらに「2人が登ったらわたしはもう一度降りてあなたを見るから」とつけ加える。
【愛らしいシジュウカラの姿】
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
阿漕の浦奇談
多谷昇太
ライト文芸
平安時代後期の宮中でめったに起きないことが出来しました。北面の武士佐藤義清と、彼とは身分違いにあたる、さる上臈の女房との間に立った噂話です。上臈の女房が誰であったかは史書に記されていませんが、一説ではそれが中宮璋子であったことが根強く論じられています。もし事実であったならまさにそれはあり得べからざる事態となるわけで、それを称して阿漕の浦の事態という代名詞までもが付けられているようです。本来阿漕の浦とは伊勢の国の漁師で阿漕という名の男が、御所ご用達の漁場で禁漁を犯したことを云うのです。空前絶後とも云うべきそれは大それた事、罪でしたので、以後めったに起きないことの例えとして阿漕の浦が使われるようになりました。さてでは話を戻して冒頭の、こちらの阿漕の浦の方ですが仮にこれが事実であったとしたら、そこから推考し論ずべき点が多々あるようにも私の目には写りました。もの書き、小説家としての目からということですが、ではそれはなぜかと云うに、中宮璋子の置かれた数奇な運命と方やの佐藤義清、のちの西行法師の生き様からして、単に御法度の恋と云うだけでは済まされない、万人にとって大事で普遍的な課題があると、そう着目したからです。さらにはこの身分違いの恋を神仏と人間との間のそれにさえ類推してみました。ですから、もちろんこの物語は史実ではなく想像の、架空のものであることを始めに言明しておかねばなりません。具体的な展開、あらすじについてはどうぞ本編へとそのままお入りください。筋を云うにはあまりにも推論的な要素が多いからですが、その正誤についてはどうぞ各々でなさってみてください。ただ異世界における、あたかも歌舞伎の舞台に見るような大仕掛けがあることは申し添えておきます。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
サンタの村に招かれて勇気をもらうお話
Akitoです。
ライト文芸
「どうすれば友達ができるでしょうか……?」
12月23日の放課後、日直として学級日誌を書いていた山梨あかりはサンタへの切なる願いを無意識に日誌へ書きとめてしまう。
直後、チャイムの音が鳴り、我に返ったあかりは急いで日誌を書き直し日直の役目を終える。
日誌を提出して自宅へと帰ったあかりは、ベッドの上にプレゼントの箱が置かれていることに気がついて……。
◇◇◇
友達のいない寂しい学生生活を送る女子高生の山梨あかりが、クリスマスの日にサンタクロースの村に招待され、勇気を受け取る物語です。
クリスマスの暇つぶしにでもどうぞ。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる