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風吹かず…止みて終わるか?

入院はしたものの

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すね者はすこやかゆゑと知りもせずガンに伏せればこの弱きこと
※1.すね者とは造語になりますかね。これは人生に対してすべからくちょっと斜に構えて、ニヒルさや孤独さを気取ってみせる者を云うのです。そしてそれは畢竟世間・社会に対してもご同様。つまり俗に云う素直じゃない分けですね、わたくしは。しかし〝そんなもの〟は「死」を前にするならばみんなすっ飛んでしまいますよ、ホント…。

業平のいつか行く道とおぼへどもうつしとなれば踏み出しかねつ
※1.在原業平の和歌で「ついに行く道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思わざりしを」というものがあります。「ついに行く道」とは死への道のことで、急に眼前にした死を、未だ何の備えも覚悟も出来ずにうろたえている…という状況ですかね。どうですか、皆さん、極近未来に死ぬことがわかっている場合、皆さんだったら、どうしますか…。

入院しガンの行く末おもふときたづきも知らぬ国はあらはる
※1.たづき;手段。手がかり。方法。
※2.しかしとにもかくにも〝すべて〟姉のお陰をもちまして私も入院出来ました。場所は茅ヶ崎市民病院でした。入院は出来ましたがはてこの先どうなるのやら、ガンは治るのかどうか、ここから生きて出られるのか…まったく先の読めない、いきなりすべてが180度変わってしまった生活に入ってしまったのです。この環境を、また何より迎えるやも知れぬ死を「たづきも知らぬ国」と詠まざるを得なかった…。

             【茅ヶ崎市立病院】


この疼き仮庵(かりほ)盲にゃわかるまい切羽詰まらにゃ祈りもすまい
※1.仮庵(かりほ);とは仮の宿、すなわちこの世のことです。それに盲を付けてあの世があることも、死ななければならないことも忘れ果てたような社会の人々を揶揄している分けです。いや、実際はそねみ、怒っていたかな?疼きとは文字通り、「死への恐れ」です。

祈りさへ孤独の中に凍りつく儘の人生おはりにながむ
※1.祈ると云っても何を祈りましょう?ここに至る自分の我儘な生き方、人生を思うなら、そもそもいまさら何かを祈ってもいいもんでしょうかね?こうして入院したって何したって、見舞客なんざあ、悉皆、だあーれも来やしないんですから…。ふふふ、このざま。
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