18 / 33
不思議な邂逅、義男と惑香
しょっぱい(いや甘い?)サンドイッチ
しおりを挟む
たどたどし気にこのような高山の講演要旨を義男の前で語る惑香はしかし、こんな話にはたして義男が興味を持つだろうかと危ぶまれて仕方がない。時折り義男の反応をうかがうのだがその義男は、興味を抱くだろうか?どころではなく、今や熱聴の呈で、惑香の一言一句に「うん、うん」とか「なるほど」を連発し、両肘をテーブルの上について身を乗り出してくる。その義男に「あの、あなた…ミックスサンドが来ました」と注意を促す惑香。ミックスサンド2人前を持って横に立つウエイトレスに「ああ、いや、これはどうも!気がつかずに…ハハハ。すいません」とあやまってからサンドイッチをテーブルの上に置かせ惑香に「いやいや、本当に興味を抱かされる話です。ぜひもっとうかがいたいが、まあ、まずは腹ごしらえです。どうぞ召し上がってください。お塩は…?」ウエイトレスが持って来た塩入れをサンドイッチの上にかざして聞くのに「え、ええ…」とうなずいてから「とにかく先生はそのような方で、あの、さきほどあなたがおっしゃられていた特攻…でしたか?その戦争に関しても〝もう二度と再び先の大戦のような、あのような惨禍をあなたがたに味合わせたくない。これにノーを云うのが女の…あ、あなた、そんなにお塩を入れないで」そう指摘されてまだ塩をふっていたことに気づく義男だった。「特攻…」という言葉を惑香が口に上せて来義男はとても真摯な目つきとなり、惑香の話に集中していたのでふりかけている塩を失念していたのだった。「あっと…す、すいません!お話に聞きほれてつい…あの、サンドイッチを交換しましょう。こちらを召し上がってください。さ、さ、どうぞ。美味しいですよ」と云ってバスケットを交換し自らも口にするのだった。「おー、しょっぱい」と思わず云うのに惑香が吹きだしてしまう。「いやいやいや、ハハハ。甘美なことこの上ないあなたのお顔を拝見しているのでちょうどいいです」「まあ」とか云う2人の間が急速にいい感じとなって行く。
【ライ麦パンを使ったこの店のミックスサンド、こんな感じ?高級感と味の良さは折り紙付きです】
【ライ麦パンを使ったこの店のミックスサンド、こんな感じ?高級感と味の良さは折り紙付きです】
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
エッセイのプロムナード
多谷昇太
ライト文芸
題名を「エッセイのプロムナード」と付けました。河畔を散歩するようにエッセイのプロムナードを歩いていただきたく、そう命名したのです。歩く河畔がさくらの時期であったなら、川面には散ったさくらの花々が流れているやも知れません。その行く(あるいは逝く?)花々を人生を流れ行く無数の人々の姿と見るならば、その一枚一枚の花びらにはきっとそれぞれの氏・素性や、個性と生き方がある(あるいはあった)ことでしょう。この河畔があたかも彼岸ででもあるかのように、おおらかで、充たされた気持ちで行くならば、その無数の花々の「斯く生きた」というそれぞれの言挙げが、ひとつのオームとなって聞こえて来るような気さえします。この仏教の悟りの表出と云われる聖音の域まで至れるような、心の底からの花片の声を、その思考や生き様を綴って行きたいと思います。どうぞこのプロムナードを時に訪れ、歩いてみてください…。
※「オーム」:ヘルマン・ヘッセ著「シッダールタ」のラストにその何たるかがよく描かれています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
渋谷少女A続編・山倉タクシー
多谷昇太
ライト文芸
これは既発表の「渋谷少女Aーイントロダクション」の続編です。霊界の東京から現実の東京に舞台を移しての新たな展開…田中茂平は69才になっていますが現世に復帰したA子とB子は果してあのまま…つまり高校生のままなのでしょうか?以降ざっと筋を述べたいのですがしかし叶いません。なぜか。前作でもそうですが実は私自身が楽しみながら創作をしているので都度の閃きに任せるしかないのです。唯今回も見た夢から物語は始まりました。シャンソン歌手の故・中原美佐緒嬢の歌「河は呼んでいる」、♬〜デュランス河の 流れのように 小鹿のような その足で 駈けろよ 駈けろ かわいいオルタンスよ 小鳥のように いつも自由に〜♬ この歌に感応したような夢を見たのです。そしてこの歌詞内の「オルタンス」を「A子」として構想はみるみる内に広がって行きました…。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる