11 / 13
3人のアポ(1)の続き
笹道行こか尾根道行こか…
しおりを挟む
それに気づいた風のカナだったがそれを認めずに「ふん、だいじょうぶだよ、こんなとこ。転げ落ちたって別にどうってことないよ」と嘯く。それへ「あー、もういい!とにかくもう、みんなこっちへおいで!」と云っては大伴さんが俺たちを奥へと誘った。その場でとにかく村田君に礼を云うようにとか散々カナに説教を垂れる。さきほどミカに「いまに見てなよ」と云った手前かそれとも絶対的なツッパリ根性ゆえか、俺への礼も含めてカナは如何(いっか)な聞く耳を持ちそうにない。むしろ俺の方が居たたまれなくなってリュックをその場に置いたあとで何気なさを装いながら上流の方へとぷらぷらと歩きまわる。「もういいですよ、大伴さん」などと云って止めに入りたいのだがそんなことの出来る俺ではない。今はそれよりも気になることが一つあった。この先標高980メートル地点の(三ノ塔)尾根出会いにおける分岐点だった。常道は先行者が間違えないようにと、使った草鞋を木の枝に掛けておいてある左のルートを行くのだが、実を云うと俺はその道を行ったことがないのである。そちらへは行かずに真ん中のガレ場になった枯れ沢をそのまま行くのだ。つまり二ノ塔から三ノ塔に通じる表尾根に出る分けだが但し、このルートは表尾根直下付近ではほとんど道が無くなってしまう。辺り一面クマザサに覆われて右も左も分からなくなる。だからあとは遮二無二上に向かってその笹などをホールド代わりに掴みながら上って行くしかない。そうこうするうちに上から人の声が伝わって来(表尾根道は登山者の数が多いから)、いきなり表尾根道に出るのである。偶々そこで出くわした登山者らにしてみればとんでもない所から人が出て来たという塩梅になる分けだ。だから、さてどうしようかと悩んでいるうちに数十メートル先にしゃがみ込んでいる男の姿が目に入った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
1974年フランクフルトの別れ
多谷昇太
青春
1974年ヨーロッパ旅行中(放浪中?)に経験した、ある人との出会いと別れを記したものです。わずか20分ほどの邂逅でしたが今も心に残っています。人との出会いは神様にしかつくれません。甘酸っぱい、胸の痛みをともなう記憶とはなりましたが、この出会いを経験させてくれた神様に感謝しています。あの日あの時の、人と人との(男と女の?)出会いを、どうぞ皆様も味わってみてください。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
神様自学
天ノ谷 霙
青春
ここは霜月神社。そこの神様からとある役職を授かる夕音(ゆうね)。
それは恋心を感じることができる、不思議な力を使う役職だった。
自分の恋心を中心に様々な人の心の変化、思春期特有の感情が溢れていく。
果たして、神様の裏側にある悲しい過去とは。
人の恋心は、どうなるのだろうか。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる