6 / 13
3人のアポ(1)の続き
繫がりを切っちゃダメよ
しおりを挟む
川崎・蟹ヶ谷のバス停における「それともあれかな、女こわい?」と同じパターンだ。その時同様思わず失笑してしまう俺だったがしかし正直それでだいぶ救われた気がする。カナに〝お前呼ばわり〟されて、脅されて、さらに殴られそうにさえなって、本当に格好(かっこ)悪いことだと、心中で居場所もないくらいに沈んでいたからだ。3人とのこの道行きの途次で何回も味わった『もうもう、嫌だ。俺は嫌われている、嫌がられている。もうすべてを投げ出して1人で行ってしまいたい』のパターンにまたもやはまっていたからである。
「ね。村田君。こんなことで投げ出しちゃダメよ。私たちとのつながりを切っちゃダメ。いい?いまの男の人にずいぶんくやしい思いをしたみたいだけど、それだったらなおさら投げ出したらダメよ。あの男の横槍に負けたことになっちゃう。ね?」「はい、大丈夫です」と小声で答えたが、しかしそれにしてもなぜ俺が男にくやしい思いをしたことまでわかるのか、それが不思議だった。きっと、人が抱く強い気持ちというものは思っている以上に顔に出るのだろうな。しかしもしそうだったらカナに脅されて俺の面目が丸つぶれとなり、超落ち込んだこともわかった筈だ。それについて大伴さんはいったいどう感じたのか?ひょっとしてカナに云った言葉をこう変えて、つまり「しっかし村田君、あんたもホント、気が弱いわね」とでも思って呆れたのだろうか?内心で笑っているのか?…いや、そうは思えない。普通の人間だったらこんなみじめで格好悪い俺にもはや愛想尽かしをし、見限って、距離を置こうとするだろう。しかし大伴さんにはそれが一切ないのだ。だから俺には大伴さんが本当に不思議に思える。
「ね。村田君。こんなことで投げ出しちゃダメよ。私たちとのつながりを切っちゃダメ。いい?いまの男の人にずいぶんくやしい思いをしたみたいだけど、それだったらなおさら投げ出したらダメよ。あの男の横槍に負けたことになっちゃう。ね?」「はい、大丈夫です」と小声で答えたが、しかしそれにしてもなぜ俺が男にくやしい思いをしたことまでわかるのか、それが不思議だった。きっと、人が抱く強い気持ちというものは思っている以上に顔に出るのだろうな。しかしもしそうだったらカナに脅されて俺の面目が丸つぶれとなり、超落ち込んだこともわかった筈だ。それについて大伴さんはいったいどう感じたのか?ひょっとしてカナに云った言葉をこう変えて、つまり「しっかし村田君、あんたもホント、気が弱いわね」とでも思って呆れたのだろうか?内心で笑っているのか?…いや、そうは思えない。普通の人間だったらこんなみじめで格好悪い俺にもはや愛想尽かしをし、見限って、距離を置こうとするだろう。しかし大伴さんにはそれが一切ないのだ。だから俺には大伴さんが本当に不思議に思える。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
1974年フランクフルトの別れ
多谷昇太
青春
1974年ヨーロッパ旅行中(放浪中?)に経験した、ある人との出会いと別れを記したものです。わずか20分ほどの邂逅でしたが今も心に残っています。人との出会いは神様にしかつくれません。甘酸っぱい、胸の痛みをともなう記憶とはなりましたが、この出会いを経験させてくれた神様に感謝しています。あの日あの時の、人と人との(男と女の?)出会いを、どうぞ皆様も味わってみてください。
放課後、理科棟にて。
禄田さつ
青春
寂れた田舎の北町にある北中学校には、都市伝説が1つ存在する。それは、「夜の理科棟に行くと、幽霊たちと楽しく話すことができる。ずっと一緒にいると、いずれ飲み込まれてしまう」という噂。
斜に構えている中学2年生の有沢和葉は、友人関係や家族関係で鬱屈した感情を抱えていた。噂を耳にし、何となく理科棟へ行くと、そこには少年少女や単眼の乳児がいたのだった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
神様自学
天ノ谷 霙
青春
ここは霜月神社。そこの神様からとある役職を授かる夕音(ゆうね)。
それは恋心を感じることができる、不思議な力を使う役職だった。
自分の恋心を中心に様々な人の心の変化、思春期特有の感情が溢れていく。
果たして、神様の裏側にある悲しい過去とは。
人の恋心は、どうなるのだろうか。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる