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乱世下威区編 上

逃走者との対話

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 応接室を使うことは、滅多にない。

 玄関から入ってすぐ右隣にある部屋なのだが、基本的には使われることがない部屋だ。理由は単純で、俺ン家に来る奴なんていないからである。

 俺ン家に足を運ぶ奴なんて身内だけであり、その他大勢はそもそも本家領に足を踏み入れることもなく、仮に踏み入れたとしても領土がクソ広すぎて俺ン家を見つけられないからだ。

 見渡す限りに無限に広がる森のどこかにぽつんとある家なのだから、見つけられる奴がいたらその能力を褒めてやるところである。

 ちなみに俺は応接室に入るのは初めてである。

 本家の当主なのに初めてとかマジかよと思う。でも使わないのだから入る機会がないし、掃除だって母さんか御玲みれいがやるのだから俺が入る機会など皆無なのだ。

 そもそも俺ン家は俺が使ったことのない、入ったことのない部屋が大半を占める豪邸なので、そんなもんだと思ってくれた方が理解は速いと思う。

「中々起きませんね」

久三男くみおお手製の睡眠薬だからな……」

 静寂が応接室を包む中、俺と御玲みれいが一人でに呟き合う。

 応接室にいるのは俺と御玲みれい、そして弥平みつひらの三人のみ。久三男くみおやヴァズ、テスらは存在を知られるわけにいかないので欠席、あくのだいまおうとパオングは切り札ゆえに欠席、澄連すみれんトリオとミキティウスもあくのだいまおうたちと同じ理由だが、アイツらの場合はマトモな理由を差し引いても単純に邪魔なので欠席だ。

 今回は外様の奴と話す初めての機会、体面を意識しなきゃならないので俺がソファに座り、従者である御玲みれい弥平みつひらはソファの後ろで立ち見である。

 本当は座らせたいが、従者が主人と同じ椅子に座ると相手から見て立場がわからなくなるため体裁が整わなくなるらしい。俺には体裁だのなんだのはよく分からないが、弥平みつひらが言うのだから普通はそうなのだろう。

「…………む…………」

 項垂れていたソイツは、ようやく垂れ下がっていた首を上げる。大きく息を吸い、俺たちへ向き直ると、意識が覚醒してきたのか、半開きの目で辺りを仕切に見渡し始めた。

「ここは……彼岸か」

「いや現実だよ早く目ぇ覚ませ」

「ありえねーだろ、こんな豪華な部屋……クソ、あの野郎約束破りやがったな……」

「だから死んでねぇって!! 生きてるから!! ちゃんと心臓動いてっから!!」 

 またもや項垂れる。

 コイツどんだけ信用ないんだ。殺してねぇつってんのに全然信じてくれやしないのは困るが、コイツの態度は無理からぬことなので、あまり強く出られなかったりする。

 地下二階で弥平みつひらとともにコイツと対面した後、霊壁を隔てて話してても埒が明かないので、場所を変えようと弥平みつひらから提案があった。

 俺としても薄暗い地下牢フロアで立ち話ってのも気乗りしないし、いる時間が長くなるだけ気分が暗くなるし、御玲みれいも交えた方がいいだろうし、なにより手を組むならそれ相応の対応するべきだと思って、その提案を二つ返事で許可したまでは良かったんだが。

「たまったもんじゃねーぜ……ただでさえ簀巻きにされてるってのに、あんなクソデカ注射器ぶっ刺すなんてよ……」

 首元を摩りながら、恨めしく俺を睨む。

 俺が許可を出した瞬間、コイツを拘束していた台から巨大な注射器が飛び出したのだ。

 注射器と言えば手のひらサイズを想像するが、拘束台から飛び出したそれは俺が知っている注射器のおよそ三倍以上のデカさを誇っていた。

 流石の俺も当主の威厳なんぞどこへやら、クソ間抜けに目ン玉ひん剥いちまったが、拘束台は容赦も躊躇も一切なく、そのクソデカ注射器をコイツの首にぶっ刺したのである。

 俺は必死で真顔を保った。心の中でいでえええええええあれ絶対いでええええええと叫びながらも、なけなしの威厳を保つため、注射器に込められた無色透明の液体を首から注がれる様を、ただただぼうっと眺めた。

 注ぎ終わると同時、死んだように眠ってしまったコイツは、弥平みつひらによっていま俺たちがいる応接室に運ばれることとなったわけだ。

「とりあえず話を進めたい。いけるかキシシ野郎」

 グダっている暇はない。擬巖ぎがんの奴らに宣戦布告された今、久三男くみおが現在進行形で軍を編成している。正直、一分も無駄にしたくないのだ。

「もっとマシな呼び方なかったのかよ……割と気にしてんだぜ、それ」

だが、急く俺とは裏腹にコイツ―――キシシ野郎は不満げな雰囲気を醸し出す。

「別になんでもいいだろ、特徴的な部分がそこしかなかったんだよ」

「今から名乗るから、そっちで呼んでくれよ」

「いらん。興味ねぇ」

「あ……そう。じゃあ、いいか。なんでも」

 面倒くさげに天井を眺めるキシシ野郎。

 俺は仲間じゃない奴を名前で呼ぶつもりはない。仲間以外は俺にとって対等な相手じゃないからだ。

 呼び方だって、特徴さえ分かればいい。どうせ仲間じゃない時点で興味ないから、名前なんて聞いてもすぐに忘れてしまうのである。

 どんな呼び方であれ、誰か分かればなんでもいいと思うし。

「話を進める前によ、俺はお前をなんて呼べばいいんだ? 名前、知らねーんだが」 

 また話が逸れたしさっさと始めるかと思った矢先、一瞬で会話の先手を取られてしまう。出そうとした言葉が口元で詰まり、思わず口を噤む。

「そういやそうだったな……俺は澄男すみおだ。お前から見て左が御玲みれい、右が弥平みつひら

 名前を呼んだ順に指を刺す。刺された順に御玲みれい弥平みつひらは一礼していく。

 興味もないし、今回の戦いが終わればただの他人同士になるってのに、名前を聞くとは律儀な奴である。

「なるほど、覚えたぜ。よろしくな赤眼野郎」

「……は?」

「別に問題ねーだろ? お前が名前で呼ばねーってんなら俺も名前で呼ぶつもりはねーよ」

 背後から僅かに霊圧が撫でる。感覚には自信がある俺だからこそ感じとれたが、弥平みつひらがほんの少しばかり臨戦態勢に入っている。

 今は体裁がある。本家派当主である俺と、擬巖ぎがん家から逃げてきたコイツでは社会的地位に雲泥の差があるのだ。

 舐められたら終い。昔から母さんが口酸っぱく言ってきた家訓の下、側から見たら本家派当主に対して不敬の極みである。

「おいよしてくれよ。俺ぁアンタらと敵対するつもりなんざねーんだぜ」

 その発言に、思わず目を丸くする。

 弥平みつひらは分家派当主として、俺の拙い想像力じゃ及びもつかないくらいの鍛錬をその身に刻んでいる。俺が弥平みつひらの霊圧に気づけたのは感覚が他の奴らより優れているってだけで、そうじゃなきゃクソ間抜けにも背後を取られていることだろう。

「まあいい。好きに呼べや」

 弥平みつひらから殺気が消える。後ろに控えている二人が今どんな顔をしているのか窺い知れないが、批難する顔をしてないことだけは信じたい。

 本来なら立場を明確化するため、仲間でもない奴にクソみてぇな呼び方をされるわけにはいかないんだが、コイツにはそれだけの格があると見込んで、あえて許すことにした。

 俺が許可を出した以上、二人も表立って抗議してきたりはしないだろう。終わった後が面倒くさくなってしまったが、それは終わった後の俺に任せればいい。うん、そうしよう。

「それで、俺はどうすりゃー自由になれんだ? できれば気安くこなせることで頼むぜ」

 弥平みつひらから殺意を向けられたにも関わらず、キシシ野郎の態度は太々しいままだ。

 物を頼める立場じゃないし、コイツがコイツでなければ自殺願望を疑われる場面だが、まあキシシ野郎は歯の隙間から脳汁も漏れ出てるってことで深く考えるのはやめとこうと思う。

「まず一つ。俺たちは今から擬巖ぎがんを潰す。お前はそれに協力しろ。ちなみに拒否権はない」

「やだっつったら?」

「この場で消えてもら」

「よし乗った」

 キシシ野郎の判断は速かった。というか速すぎた。

「ただ……武器は返してくれ。話には乗るが、捨て駒になるつもりはねーんでね」

 弥平みつひら御玲みれいは、特に弥平みつひらからは珍しく、その言葉に否定的な雰囲気を醸し出すが、俺は手で制して了承の意を示す。

 自分の武器にこだわる気持ちは分からなくもないし、そもそも武器なしで戦場に出してロクに動かないまま死なれても、俺のメンツが立たない。俺らの都合で戦わせる以上は、当然の要求だろう。

 弥平みつひらが思っている通り、かなり不安要素はあるものの―――そこは出たとこ勝負をするしかないと思う。

 それにしても、だ。

 コイツの生きることに対する執念は筆舌に尽くし難い何かを感じる。いや確かに生きることは大事だ、特に意味や価値もなく死に様を散らせるよりか華はあると思う。

 でもコイツのそれは、他の奴らとは一線を画している。

 生き急いでいる程度の奴なら、大陸八暴閥ぼうばつと殺り合うのに協力しろと言われて被せ気味に了承しないだろう。普通に戦死する可能性だってあるわけだし、それなりに迷ったり戦いの前に決意を露わにしたりと相応の過程があるはずだ。

 これをこなせば生きられる、そのために必要十分をこなすことに過程など不要、は中々ぶっ飛んだ思考をしていると思う。

「それにしても擬巖ぎがんを潰すとか、大それたことをサラッと言うよなー……そこらの奴らなら喧嘩売られた時点で小便垂れ流しながら夜逃げブチかますぜ? さすがそこは流川るせんっていうべきか」

「いや、喧嘩売られたら買うに決まってんだろ。逃げるなんざありえねぇ」

「たとえ勝てない戦力差だったとしても?」

「……なに?」

 一瞬、意味が分からなくてつい威圧的に聞き返してしまう。少し、いやかなり気掛かりな言葉を投げられた気がしたからだ。

「勝てない戦力差ってどういうことだ? テメェなんか知ってんの?」

「おいおいおい待ってくれ、ちげーよ。そーゆー意味じゃない」

「だったらどういう意味だ。隠すんなら隠せねぇようにしてやるが?」

 俺は右手を挙げた。背後から濃密な殺気が溢れ出る。

 戦いのド素人でも、首根っこに刃突き立てられている感覚を覚えさせるくらいに分かりやすい殺意。当然、それに気がつかないようなキシシ野郎じゃない。両手をあげて、必死に首を左右に振り回す。

「いいか? あんまりわけわかんねぇことガタガタ言ってると殺すぞ。お前とは約束こそしたが態度次第じゃ一方的に反故にしてやってもいいんだからな? 本来守る義理も価値もねぇんだしさ」

「んぁー、分かったよ。悪かった。だから背後に立っておられる従者様方に霊圧を収めるよう言ってくださいませんかね、もう余計なこと言わねーんで」

 静かに右手を下ろす。同時に背後から滲み出ていた殺意は鳴り止む楽器の如く鳴りを潜める。

 応接室内の空気が一気に軽くなるのを感じ取ると、キシシ野郎は溶けるようにソファに項垂れた。

「んじゃ次。テメェの知ってることを洗いざらい吐け。この場で、今すぐにだ」

「ちなみに」

「拒否った場合、俺ン家の力を駆使してお前の身体を隅々まで調べることになる」

「吐きます」

「わかればいい。言え」

「えっと、んじゃあ……」

 心なしか、この数分のやり取りで目にクマができ、頬が若干痩けたキシシ野郎。特に無理難題は言ってないはずだが、不思議なこともあるものだ。一応、仲間扱いしてないけど人として扱ってるぜってアピールしたつもりなんだが、もしかして伝わってなかったりするのだろうか。まあだとしてもどうしようもないしどうする気もないのでこの扱いに納得してもらうしかないのだが。

 こうして、キシシ野郎の長ったらしい話が始まる。俺はクソ甘コーヒーを片手にキシシ野郎の話に耳を傾ける。流石にこの場面で寝コケるわけにはいかないので、カフェインで眠気を黙らせる。コーヒーを用意してなきゃ、ものの十秒くらいで寝落ちしていただろう。

 ようやく、話が一区切りする。コーヒーの影響か、俺にしては珍しく話の内容の大半が記憶に残っている。次はこっちのターンだ。

「へぇ、お前下威区しものいく出身なのかぁ」

「知ってくれてるのか。やっぱ流川るせんだな」

「いや、触り程度なら知ってるが詳しくは知らん。弥平みつひら下威区しものいくのことを詳しく」

 キシシ野郎が更に痩せこけた気がしたが気のせいだろう。とりあえず無視して弥平みつひらに視線を投げる。

下威区しものいくとは、武市もののふしの最下層。別名``人類退廃地帯``と呼ばれるスラム地域のことですね」

 キシシ野郎が視線で抗議してくるのを尻目に、弥平みつひらの講義に耳を傾ける。

 下威区しものいく武市もののふしの成果・実力主義に適応できなかった者たちが、最終的に流れ着く場所ってのは、三舟みふね雅禍まさかの件で把握済みだったのだが、その地理に関しては初見の情報ばかりだった。

 下威区しものいくはヘルリオン山脈側、つまり極東から順に完全退廃地帯、退廃地帯、半退廃地帯、重スラム、軽スラム、もののふノ壁の計五つに分けられる。

 一般に下威区しものいく民と呼ばれる奴らは重スラムまたは軽スラムに住んでいる奴らのことで、ごく一部の例外を除けば、いずれかのスラム地域で余生を過ごすことになるという。

 次に退廃地帯とは、過剰な霊力によって汚染された領域のことで、そこでは大気中に致死量の霊力が分布しており、人間にとって死地となっている。退廃地帯の区分はいわやる汚染度によるもので、半退廃地帯なら短時間程度居続けることが可能らしいが、退廃地帯と完全退廃地帯に踏み入れれば、長く持っても数分程度の命とのことだ。

 また退廃地帯は大気中に含まれる霊力分布の濃さから、本来ヘルリオン山脈に生息しているはずの野生の魔生物が生息圏を押し広げてきており、ソイツらも生き残った数少ない下威区しものいく民の存亡を脅かしているのだとか。

 弥平みつひらの説明でなんとなくイメージはついた。要は無能の受け皿的な場所であり、キシシ野郎はそんな掃き溜めの中の掃き溜めの世界で生まれ育ち、生き残る過程で今の強さと太々しさを得られたと。

 そう考えると生きることに貪欲なことにも納得できる。どんな所なのかはこの目で見たことがないけれど、野生の魔生物が割り込んでくるくらい自然に帰っている場所となると、生半可な気合や根性じゃ、まず生き残れない。

 そんな魑魅魍魎が跋扈する掃き溜めで過ごしながら人としての言語を話し、こうして俺たちの前に立つことができているのだから、コイツは本当に大した奴である。

弥平みつひら下威区しものいくにはコイツみたいな生き残った強ぇ奴が割と普通にいたりするのか?」

 今回の話にはあまり関係ないが、ついでだから興味本意で聞いてみる。

 キシシ野郎は久三男くみおが構築した防犯機構を前にミンチにならない程度の実力を持っていた。もしそんな奴がいるとしたら、俺らとしてもそれなりに脅威となる。殺そうと思えば殺せない相手でもないが、キシシ野郎の実力はそんなもんだろと切って捨てられるものでもなし、知っていて損はないはずだ。

「いえ、いるとしてもごく少数かと」

 少し身構える俺をよそに、キッパリと疑問を両断する。

下威区しものいくの環境は人が生きていくのに適していませんので、ほとんどは成人になる前に死に絶えます。逆に言えば、ごく少数だからこそプロファイリングは容易、とも言えます」

「なるほど。ならよし」

 話が逸れてしまったが、弥平みつひらが言うなら問題はない。やはりウチの執事と弟に抜かりはないようだ。

「それで次は……下威区しものいくは``もののふノ壁``? ってのか? それに囲まれてて、一度入ると出られなくなるって言ってたが、それは本当なのか?」

 机に置かれたコーラで喉を潤す。

 下威区しものいくについて気になることと言えば、中威区なかのいくとの境界に``もののふノ壁``とかいう大層なネーミングの防壁的なものが張られていて、一度入ると出られなくなる仕様になっているらしい。そのため下威区しものいくに流れ着いた奴らは、中威区なかのいく上威区かみのいくの連中を妬みながらゴミの掃き溜めの中で骨を埋めることになるそうだ。 

「``もののふノ壁``は一種の霊壁です。下威区しものいく民が反乱を起こさないために擬巖ぎがん家が発動し、それ以降一度も破られておりません」

 弥平みつひらの補足説明も織りなされ、脳味噌の九割が筋肉質にすり替わっている自負がある俺に浸透していく。

 ``もののふノ壁``が発動したのは、今から十年以上前。

 下威区しものいく民の反乱による中威区なかのいくへの影響を予期した擬巖ぎがん家は、下威区しものいく民を封じ込めて管理するため、中威区なかのいくとの繋がりを結界で断絶。来る者拒まず、去る者逃さずの今の状態を作り上げた。

 弥平みつひらがさっき言っていたように、発動から今まで一度も破壊されたことがなく、武市もののふしに存在する霊壁の中では最強クラスの強度を誇っているという。

「私たちが行った強度予測では、澄男すみお様の攻撃をもってしても破壊は不可能という演算結果が出ています」

「……え?」

 思わず威厳もクソもない間抜け声を漏らし、弥平みつひらへ振り向く。

 捕虜の前であんまりよろしくない態度だが、それ以上にものすごく聞き捨てならない台詞が聞こえてしまったので、これに関してはどうしようもないと思う。

煉旺焔星れんおうえんせいでもブチ破れないのか……?」

もののふノ壁を外部から無理矢理破壊するには、およそ五百マジアンもの爆縮霊力が必要になります。また各種属性霊力耐性も有しており、火属性霊力の効能は半減してしまいます」

「な、るほど? それは厄介だな……ちなみに五百マジアン? ってのはどの程度の霊力なんだ?」

「ちょうど澄男すみお様二人分です」

「マジか」

 これまた威厳のいの字もない素の声が出てしまった。

 各種属性耐性に加え、俺二人分の霊力がないと破壊できない防壁。破られたことがないつっても俺ならなんとかできるっしょとか軽く考えていたが、冗談抜きのガッチガチ防壁で雑草が生えてきそうだ。実際は全然面白くもなんともない衝撃のクソ事実なのだが。

「とはいえ我ら流川るせんの力をもってすれば、不可能ではないのですが……」

「まあそりゃとうぜ……んんんんん!?」

 まあた弥平みつひらに振り向いてしまった上にコーヒーの入ったコップを床にぶち落としてしまう。

 御玲みれいが呆れ紛れのため息をつきながら、床を拭き取りにかかるが、俺の脳内は御玲みれいに礼を言う余力もないくらい思考停止しそうになっていた。

「え? あ……え? できんのかよ!?」

「いざというときのために対策はしていましたので」

 爽やかな笑顔で応対する弥平みつひらに対し、その笑顔に当てられたのか、俺も思わず朗らかな笑みを浮かべてしまう。目の前にキシシ野郎がいるのにそんなこともお構いなしに。

 おそらくだがそこらへんの技術的なところは久三男くみおも一枚噛んでいることも考えるとなんというか、ウチの執事と弟、マジ有能すぎないか。ちょっと恐怖を覚えてしまう。

 あんまり間抜けやっていると、割と真面目に俺が必要なくなってしまう気がする。今後ちゃんと締めるところは気を引き締めて臨むようにしよう。

「ただ、今回は無理矢理破壊する必要がありません。``もののふノ壁``を発動したのは擬巖ぎがん家ですので、霊壁維持のための魔道具も擬巖ぎがん領に設置してありますから」

 そうですよね、とさっきまでずっと黙っていたキシシ野郎に話題が振られる。それでようやく蚊帳の外だったキシシ野郎に全ての注目が集まった。

「俺が擬巖ぎがんに侵入を繰り返す理由……そこの糸目執事様の察しの通り、``もののふノ壁``を維持している魔道具を破壊するためだ」

 さっきまで飄々とふざけた態度は消え失せ、ドスの効いた低い声音で俺を見つめてくる。

 前髪の隙間から垣間見える微かな眼光は、暗澹としているが刺すような熱さがあり、目を離すことを許さない。

「よくもまあ一人でやろうと思ったな。いくら強ぇとはいえ、相手は大陸八暴閥ぼうばつの一柱。お前一人でどうこうできるほど雑魚じゃねぇだろうに」

「それでもやるしかねーんだよ。守るべきものも何も失くなったこの俺が絶対成さなきゃなんねー、最後のヤマなんだ」

 守るべきものも何も失くなった、か。自分の手からこぼれ落ちた木萩澪華きはぎれいかが脳裏をよぎる。

 今更考えても意味がないことかもしれないが、もしも御玲みれい弥平みつひら澄連すみれんと出会うことがなかったなら、俺もコイツみたいになっていたと思う。

 実際、親父をぶっ殺すまでは親父とクソ寺を殺すこと以外はほとんど考えられず、そのためならどれだけの血が流れようとかまわないとすら思っていた。その割には御玲みれい弥平みつひらを捨て駒にはできなかったし、一度は裏切った久三男くみおとも和解したわけだが、コイツもきっと擬巖ぎがん家にちょっかいを出すまでの過程で、色々なものを失ったのだろう。

 それが家族なのか友達なのか仲間なのか、その全てなのかは分からないが、失ったものは二度と戻ってこない以上、そうなったら失うことになった元凶を叩くか、何かしらしていないと虚しくて虚しくて仕方なくなるのだ。復讐に駆られていた頃の俺が、そうだったように。

「つまり……俺とお前の利害は一致してるわけか」

擬巖ぎがんを潰すことに協力するってことなら肩組むことに異存はねーな。むしろ棚から牡丹餅って感じだ」

「餅扱いはなんだか癪だが、まあいい。だが指示には従ってもらうぞ。それでいいな?」

 キシシ野郎は飄々とした態度を取り戻し、迷いなく首を縦に振る。

 一抹の不安があるが、予防線はいくらでも張れるし、既に張っている。利害も一致しているなら、擬巖ぎがんを潰すまでは一戦力として数えても問題はないだろう。

「そんで、俺はどうすりゃいーんだ? 協力するのは吝かじゃねーが、段取り分かんねーと動きようねーしさ」

 耳をほじりながら当然の疑問をぶん投げてくれる。確かに段取りが分からない以上動きようがないのは事実だ。とはいえ。

「お前は牢屋で待機だ。準備ができ次第呼ぶから」

 キシシ野郎の目尻が少し強張る。

 気持ちは分からなくもない。分からなくもないが、お前は仲間じゃない。利害が一致しているだけの捕虜にすぎないのだ。これから一緒に戦うことになる仲とはいえ、俺ン家の構造を知られるわけにはいかない。澄連すみれんのときみたく仲間もしくは恭順する前提なら話が違ったかもしれないが。

「また俺、眠らされるのか……」

「済まんな。ウチとしても防犯はきちんとしなきゃなんねぇんでね」

「まあ殺されなきゃどうってことねーけどさ。つーかそれなら俺、応接室使わせてもらってるがそれは大丈夫なのか?」

「催眠後、応接室の間取りに関する記憶は消去されますのでご心配なく」

 俺とキシシ野郎の会話に弥平みつひらがしれっと割って入ると、俺としても初耳な情報に俺たちの間の空気が凍りつく。

 うん、記憶がどうのこうのはきっと久三男くみおの領分なのだろうが、今更ながら記憶操作って恐ろしい。俺も知らない間に頭の中を弄られたりしているのだろうか。いや、実の弟を疑うつもりはないし疑いたくもないが、一抹の不安というか疑問が、そこはかとなく湧いてくる。

 考えたって仕方ないので、そんなことはないと信じているが。

「またデッカい注射器が出てくるのか……俺としてはもう少しマシな方……法……を……?」

 突然、キシシ野郎がゆらゆらと体を揺らし始める。一瞬だけ俺を睨むと、何も言うこともなくソファに横たわり、すうすうと静かな寝息を立て始めた。

「……なんだか凄まじい風評被害を受けた気がする」

「死んだわけではありませんし、目覚めれば理解するでしょう」

「そりゃそうか……って、これどういうこと?」

 ぱっと見平静を装っている俺だが、状況など理解できているわけがない。薬ブチ込まれたわけじゃないのに突然眠りこける絵面はなかなかに強烈だ。

 何がどうしてこうなったのか、弥平みつひらに聞こうと体を捩ったそのとき、応接室をノックする音が鼓膜を揺らす。

「兄さん、入るよ」

 おいまだキシシ野郎が、と言おうとするも時既に遅く。久三男くみおは何食わぬ顔で応接室に入ってきてしまった。

「お、おい」

「あ、大丈夫。眠らせたの僕だから」

 爽やかな笑顔でクソ怖いことを言いだす我が弟。

 応接室に一度も入っていないコイツがどうやって、普通に考えて無理だろと言いたくなる状況だが、相手は久三男くみおだ。たとえ理解ができなくとも、コイツがやったというのなら、なにかしら超常的な方法を使って成し遂げたとするのがむしろ納得のいく話なのである。

「霊子コンピュータを用いたバイオハッキングの実験でね。人の脳を遠隔操作する一環として、眠らせてみたんだ」

 なるほど、全く分からん。改めて俺と御玲みれい久三男くみおに説明を求めた。

 愚弟曰く、霊子コンピュータをもって初めてできるようになるバイオハッキング技術は、世界法則を経由して特定の個人または集団の脳を霊子コンピュータと霊的に接続することで、その人たちを遠隔操作することができるようになる画期的な技術らしい。

 久三男くみおがキシシ野郎に行ったのは、脳の部位の一つである視床下部とかいう部位をハッキングし睡眠を誘発させたとのことだ。

 ちなみにバイオハッキングによる遠隔催眠は、ハッカーの任意の時間で覚醒させたり、逆に眠り続けさせることもできるらしく、現在キシシ野郎は久三男くみおが霊子コンピュータを使って覚醒指令を出さない限り、永久に目覚めることはないそうな。

「ち、ちゃんと起こしてやれよ……?」

「ん? うん。兄さんたちの準備ができたら勿論起こすよ」

 久三男くみおはきょとんとした表情で首を傾げる。我が弟ゆえに首を傾げながら分かってるよと言わんばかりの顔は年相応な無邪気さに溢れているが、やっていることがやっていることなので、純粋に可愛げがあると褒められないのが玉に瑕だ。

 流石に弟に眠らされてそのまま永眠、なんて結末は俺も望んでいない。眠らされたキシシ野郎は尚更だろう。敵や仲間以外には興味がないゆえに容赦もないことに自覚のある俺でも、可哀想とかいう柄にもない感情が湧いて出てしまう。

「バイオハッキングには遠隔催眠以外にもできることはあるのですよね?」

 俺が柄にもなくキシシ野郎に同情していると、弥平みつひらさんが末恐ろしい質問を久三男くみおにぶん投げていた。俺は背後に冷たい何かを感じ、急いで振り向く。

「そりゃあねぇ……世界法則に干渉してまでやることが眠らせるだけとか、芸がないにも程があるしさ」

「たとえばどのようなことが?」

「挙げるとキリがないけど……弥平みつひらに有益そうな機能といえば、傀儡にすることかなあ」

「ふむ。たとえば敵地の要人をハッキングして外部から撹乱したり、必要な情報を抜き取ったりも?」

「ハッキング範囲に限界はないから、個人さえ特定できればなんでもできるよ」

「なるほど! 密偵任務に更なる進歩が望めそうです! またいつか利用させてください!」

 弥平みつひらが良ければ、と頭を掻いて頬を赤らめ年相応の照れ顔を見せる久三男くみお

 いやはや、仲睦まじきは良きことと褒めたいところだが、会話の内容が恐ろしすぎて温かい目で見ていられないのが残念すぎる。弥平みつひらさんも職業柄仕方ないとしても容赦なさすぎてすんごい怖い。絶対に怒らせないようにしよう。

「こほん。弥平みつひらさま、捕虜の護送を……」

 流石の御玲みれいも察したのか、頬に汗を垂らしながらわざとらしい咳払いをして軌道修正する。

 キシシ野郎が眠った今、これからやることは擬巖ぎがん家にカチコミかけるための準備である。それまでキシシ野郎に出番はないので、牢屋で眠ってもらうことになる。

 御玲みれいの咳払いで自分のやるべきことを思い出したのか、すぐさま執事としての顔に戻り、キシシ野郎を担いで応接室を後にした。

「では私も準備して参ります」

「あ、じゃあ僕も。まだ兵の編制が終わってないんだ」

 当の本人がいなくなったことで、誰もが応接室に留まる理由がなくなったわけだが、かくいう俺も応接室には特に用がない。皆が各々やるべきをやり始めた今、俺もやることをやるとしますか。

「んじゃ俺も道場で素振りを」

澄男すみおさまは私の準備の手伝いです」

「いやそれ俺いらなく」

「どうせやることなくて暇なんでしょう。今素振りしたところで変わらないですし、暇を持て余すくらいなら手を貸してください」

 腰に手を当て、眉を顰めてふんすと鼻息を吹かせる。

 やることがあると言ったが、実際はそんなものだ。準備という準備は周りのみんなが勝手にやってしまう以上、俺は戦いが始まるまで特にこれといったやることもないのである。

 武器の手入れは毎日しているし、トイレは直前に行けば済むし、ご飯は既に食べ終えた。結局、戦いが始まるそのときまで暇なので、やれることといえば消去法で素振りしかなくなるわけだ。

澄男すみおさまは持ち前の肉体がありますから準備なんて不要でしょうが、私は人並みなんです。回復系薬剤や技能球の選り分けをしてください」

 両脇に手を入れられ、軽々と持ち上げられる。

 御玲みれいが人並みかは大の男を布団みたく軽く持ち上げられることからして女子としてどうなんだと声高らかに言いたくなるが、それを声に出すのは流石に無粋だろう。

 確かにやることもないし、御玲みれいが生き残る確率を少しでも上げられると前向きに考えるなら、準備を手伝いのも億劫じゃないと思えてくる。

「わーったよ、手伝ってやるよ、めんどくせぇ」

 手を頭の後ろで組み、応接室を後にする。万が一のため、回復系薬剤は多めに入れておこうと心に決めて、何気に初めて入る御玲みれいの部屋へ足を踏み入れた。
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あらすじ 現代日本、高校生の神夜蒼麻は、親友の玄芳暁斗と共に日常を送っていた。しかし、ある日、不可解な現象に遭遇し、二人は突如として仮想世界(データワールド)に転送されてしまう。 その仮想世界は、かつて禁止された「人体粒子化」実験の結果として生まれた場所だった。そこでは、現実世界から転送された人々がNPC化し、記憶を失った状態で存在していた。 一方、霧咲祇那という少女は、長らくNPCとして機能していたが、謎の白髪の男によって記憶を取り戻す。彼女は自分が仮想世界にいることを再認識し、過去の出来事を思い出す。白髪の男は彼女に協力を求めるが、その真意は不明瞭なままだ。 物語は、現実世界での「人体粒子化」実験の真相、仮想世界の本質、そして登場人物たちの過去と未来が絡み合う。神夜と暁斗は新たな環境に適応しながら、この世界の謎を解き明かそうとする。一方、霧咲祇那は復讐の念に駆られながらも、白髪の男の提案に悩む。 仮想世界では200年もの時が流れ、独特の文化や秩序が形成されていた。発光する星空や、現実とは異なる物理法則など、幻想的な要素が日常に溶け込んでいる。 登場人物たちは、自分たちの存在意義や、現実世界との関係性を模索しながら、仮想世界を揺るがす大きな陰謀に巻き込まれていく。果たして彼らは真実にたどり着き、自由を手に入れることができるのか。そして、現実世界と仮想世界の境界線は、どのように変化していくのか。 この物語は、SFとファンタジーの要素を融合させながら、人間の記憶、感情、そしてアイデンティティの本質に迫る壮大な冒険譚である。

法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘

橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった その人との出会いは歓迎すべきものではなかった これは悲しい『出会い』の物語 『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる 法術装甲隊ダグフェロン 第三部  遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』は法術の新たな可能性を追求する司法局の要請により『05式広域制圧砲』と言う新兵器の実験に駆り出される。その兵器は法術の特性を生かして敵を殺傷せずにその意識を奪うと言う兵器で、対ゲリラ戦等の『特殊な部隊』と呼ばれる司法局実働部隊に適した兵器だった。 一方、遼州系第二惑星の大国『甲武』では、国家の意思決定最高機関『殿上会』が開かれようとしていた。それに出席するために殿上貴族である『特殊な部隊』の部隊長、嵯峨惟基は甲武へと向かった。 その間隙を縫ったかのように『修羅の国』と呼ばれる紛争の巣窟、ベルルカン大陸のバルキスタン共和国で行われる予定だった選挙合意を反政府勢力が破棄し機動兵器を使った大規模攻勢に打って出て停戦合意が破綻したとの報が『特殊な部隊』に届く。 この停戦合意の破棄を理由に甲武とアメリカは合同で介入を企てようとしていた。その阻止のため、神前誠以下『特殊な部隊』の面々は輸送機でバルキスタン共和国へ向かった。切り札は『05式広域鎮圧砲』とそれを操る誠。『特殊な部隊』の制式シュツルム・パンツァー05式の機動性の無さが作戦を難しいものに変える。 そんな時間との戦いの中、『特殊な部隊』を見守る影があった。 『廃帝ハド』、『ビッグブラザー』、そしてネオナチ。 誠は反政府勢力の攻勢を『05式広域鎮圧砲』を使用して止めることが出来るのか?それとも……。 SFお仕事ギャグロマン小説。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

セルリアン

吉谷新次
SF
 銀河連邦軍の上官と拗れたことをキッカケに銀河連邦から離れて、 賞金稼ぎをすることとなったセルリアン・リップルは、 希少な資源を手に入れることに成功する。  しかし、突如として現れたカッツィ団という 魔界から独立を試みる団体によって襲撃を受け、資源の強奪をされたうえ、 賞金稼ぎの相棒を暗殺されてしまう。  人界の銀河連邦と魔界が一触即発となっている時代。 各星団から独立を試みる団体が増える傾向にあり、 無所属の団体や個人が無法地帯で衝突する事件も多発し始めていた。  リップルは強靭な身体と念力を持ち合わせていたため、 生きたままカッツィ団のゴミと一緒に魔界の惑星に捨てられてしまう。 その惑星で出会ったランスという見習い魔術師の少女に助けられ、 次第に会話が弾み、意気投合する。  だが、またしても、 カッツィ団の襲撃とランスの誘拐を目の当たりにしてしまう。  リップルにとってカッツィ団に対する敵対心が強まり、 賞金稼ぎとしてではなく、一個人として、 カッツィ団の頭首ジャンに会いに行くことを決意する。  カッツィ団のいる惑星に侵入するためには、 ブーチという女性操縦士がいる輸送船が必要となり、 彼女を説得することから始まる。  また、その輸送船は、 魔術師から見つからないように隠す迷彩妖術が必要となるため、 妖精の住む惑星で同行ができる妖精を募集する。  加えて、魔界が人界科学の真似事をしている、ということで、 警備システムを弱体化できるハッキング技術の習得者を探すことになる。  リップルは強引な手段を使ってでも、 ランスの救出とカッツィ団の頭首に会うことを目的に行動を起こす。

世紀末ゾンビ世界でスローライフ【解説付】

しおじろう
SF
時は世紀末、地球は宇宙人襲来を受け 壊滅状態となった。 地球外からもたされたのは破壊のみならず、 ゾンビウイルスが蔓延した。 1人のおとぼけハク青年は、それでも のんびり性格は変わらない、疲れようが 疲れまいがのほほん生活 いつか貴方の生きるバイブルになるかも 知れない貴重なサバイバル術!

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

電子世界のフォルトゥーナ

有永 ナギサ
SF
 人工知能を搭載した量子コンピュータセフィロトが自身の電子ネットワークと、その中にあるすべてのデータを物質化して創りだした電子による世界。通称、エデン。2075年の現在この場所はある事件をきっかけに、企業や国が管理されているデータを奪い合う戦場に成り果てていた。  そんな中かつて狩猟兵団に属していた十六歳の少年久遠レイジは、エデンの治安維持を任されている組織エデン協会アイギスで、パートナーと共に仕事に明け暮れる日々を過ごしていた。しかし新しく加入してきた少女をきっかけに、世界の命運を決める戦いへと巻き込まれていく。  かつての仲間たちの襲来、世界の裏側で暗躍する様々な組織の思惑、エデンの神になれるという鍵の存在。そして世界はレイジにある選択をせまる。彼が選ぶ答えは秩序か混沌か、それとも……。これは女神に愛された少年の物語。 <注意>①この物語は学園モノですが、実際に学園に通う学園編は中盤からになります。②世界観を強化するため、設定や世界観説明に少し修正が入る場合があります。  小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

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