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(理人視点)

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 きちんと名前を呼んだつもりだったけれど、その声は掠れていた。自分でもカッコ悪いと思う。

「茉白」

 苦しい。愛おしくて、可愛くて、でもやっぱり心配で──。
 茉白のナカが、ぐちゅりとうねる。めちゃくちゃに突きたくて、ぐっと我慢した。

「っ、ふぁ……っ」

 ナカのうねりに反応して、ほんの少しだけ動いた腰の動きで上がる、茉白の甘い声。
 そんな……だって、痛いはずだろう? とそう思う。
 今まで「はじめて」のひととセックスしたことはなかったけれど、でも、痛いはずだという知識はあって。
 少しだけ、背中が冷えた。
 こんなに感じやすい茉白には、やっぱりもう少しずつ、慣らしたほうが……そうじゃなきゃ、茉白の身体の負担なんじゃないか、って。

「っ、あの、理人、くんっ」

 茉白が腰を、ゆるゆると動かす。その目は情欲で濡れて、上気した頬があまりに赤くて、それを見ているだけで、俺はイきそうになる。

「大丈夫、ですからっ」
「茉白」
「死んじゃったり、しないですし、私……割と頑丈ですし」
「でも」
「お願い」

 茉白が俺の耳を噛む。

「いっぱい、シて……我慢しすぎて、死んじゃいそう」
「……っ」

 ぐ、と腰を動かした。
 結合部からぐちゅりと水分が溢れて、腰の奥がゾクゾクする。

「あっ、あっ、あっ、あっ」

 少しずつ速める動きに合わせて、茉白の艶かしい唇から甘い声が零れた。

「キツくないか、茉白」
「ん……っ、きもち、ぃ、あんっ、です……」

 とんとん、と奥を突く。
 奥の蕩けている肉襞が、ぐちゅぐちゅと俺の先端を包み込む。隘路のように狭いナカはきゅうきゅうと締まって吸い付いてきて……信じられないくらいに、気持ちいい。

「とけ、そ……」

 思わず零れた言葉に、茉白が喘ぎながら首をかしげる。

「ど、しましたっ……?」
「なんでも……」

 余裕ぶって笑って見せるけど、正直もう、結構ギリギリだ。俺、そんなに早くないはずなんだけれど。
 快感を逃そうと、すこしだけ角度を変える。茉白の腰が浮いた。

「ひゃ、ゃあんッ!」
「……!」

 茉白の体が、ふるりと震える。

「ゃ、やぁっ、理人く、そこっ、だめっ」
「茉白」

 ビクビクと茉白が震えながら、俺の二の腕を掴む。爪が食い込んで、でもその痛みはとても甘い。

「こ、こ……やめる?」
「や、ぃゃあっ、ごめんなさ、やめない、でえっ」

 茉白が懇願するように俺を見上げた。

「きもち、ぃ、っ、なんか、来ちゃう、そこっ、きもちぃの……!」

 茉白の瞳から涙が溢れて……俺はその懇願に応えるように、自分の欲に押されるように、ソコに自分を打ち付けた。
 ぐちゅぐちゅと粘膜を掻き回す音が、大きくなっていく。
 腰と腰がぶつかる音が、しらず、強くなる。

「ぁ、ぁあっ、やぁ、ぅ、理人く、イくっ、ぁ、あ……!」

 茉白の身体に、びぃんと力が入る。俺の腕を持つ手にも、ひどく力が入って──綺麗なおとがいが淫らに反った。白い首が艶かしい。
 がくり、と力が抜けた茉白のナカは、ビクンビクンと蠢きながら吐精を誘う。
 艶かしくうねって、吸い付いて、奥へ奥へと俺を誘って──。
 茉白の手が、ぽすりとシーツに落ちる。その指先は、すこしだけ、紅い。
 茉白の爪が食い込んだ俺の腕は、きっと血が滲んでいる。

「ぁ、……理人くん、ごめんなさ……」

 とろりとした茉白の目が、きゅっと細められる。俺は笑って、その唇に吸い付いた。

「ふぁ、あ……!」

 口内を蹂躙しながら、もう茉白なんか可愛すぎるから食べてやると思いながら、腰をすこしだけ、激しく動かす。

「ん、んぁっ、りひ、と、……っ」

 めちゃくちゃなキスの合間に、茉白はそんな風に、可愛く俺を呼ぶ。
 茉白が「感じる」キスをして、茉白のナカがさらにきゅうっと締まる。
 蠕動と言っても良い震え。また達しそうな茉白のナカに、俺は半分以上我慢ができてない、そんな乱暴な動きで自身を打ち込んだ。

「茉白っ、茉白……!」

 頭が真っ白になるくらいに、自分から欲が吐き出されていくのが分かる。

「……っ、はぁ……っ」

 低く、声が漏れた。

(なん、だこれ……)

 きもちよくて、死にそう。
 同時に、茉白のナカがきゅうんと締まって、また茉白が達しているのが分かる。茉白はほとんど声も出ないようで、ただ口を何度もパクパクとして、喉から言葉にならない高い声を漏らした。

「ま、しろ」

 名前を呼んだ。
 茉白からがくん、と力が抜ける。
 慌てて顔を覗き込むと、弛緩した視線と目が合う。ほっとして、そのまぶたにキスをした。

「あの、……理人、くん」
「うん?」

 さらりさらり、と髪を撫でながら聞き返す。
 無理をさせてしまった。髪の毛にキスをすると、茉白は小さく笑う。

「死んじゃわなかったでしょう……?」
「……うん」

 苦笑して茉白の目を見ると、茉白は困ったように笑って、それから言った。

「死んじゃってない、ので……寝ちゃって、いいですか……?」
「眠い?」
「はい、もう……もう、眠くて」

 言いながら、茉白のまぶたが落ちていく。
 俺はその額にキスをして──それから茉白の寝息に安心する。
 後処理なんかを済ませて、茉白を抱きしめて眠る。あんなに感じていたのに、シーツには血もついていた。
 なんだか、胸が痛い。
 この感情は、とても言葉にできそうにない。

 夜中に何度も目が覚めて、そのたびに茉白の寝息を聞いて、生きてるのをちゃんと確認して──いくら何でも過保護すぎだろうかと迷いつつ、また眠りに落ちていく。
 腕の傷が痛んで、俺はそれをとても幸せだと、そう思った。
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