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【高校編】分岐・山ノ内瑛
カツ丼
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結局、何がなんだか分からないうちにーー弁護士さんやら、本庁舎からお巡りさんが何人も来たかと思ったら署長さん以下数名が青い顔して駆けつけてきたり、白井さんは何人かの刑事さんに連れて行かれて……そんな、てんやわんやした後に。
「どうぞ、こちらで。申し訳ありません、取り調べというわけではないのですが」
ものすごーーーく丁寧な物腰で、署長さんが私を誘う。
「よろしければ、そちらの殿方は別室で」
「あかーん」
私を相変わらずぎゅうぎゅうしてくれているアキラくんは即答する。
「あかん。超絶アカン。華がなにされるか分からへん」
「そんなようなことは、」
「ほなアンタの部下の警察官は華に何しようとしてたんや?」
署長さんはぐっと黙る。
そして私たちは簡素なソファだけが置いてある部屋に取り残されてーーぽかんとはめ殺しの窓から空を見つめた。
「あのさ」
「なん?」
「私、未だに何がなんだか、なんですけど?」
「俺もやで。……ま、想像はつくけどな」
私は首を傾げた。
「これが青花の仕掛けってこと?」
「それも。それと、……白井が華になにしようとしてたか」
きゅ、とアキラくんは私を抱きしめ直した。
「近くにおって、良かったわ」
ま、護衛サンいてはったからな、とアキラくんは続ける。
「俺いてもおらんでも、良かったんかもやけど」
「そんなことない!」
私は少し大きく言う。
「いてくれて、ほんとに……」
「華」
ぎゅ、と抱きつく私の後頭部を、ぽんぽん、とアキラくんは優しく撫でてくれる。
「白井さんは、私になにを?」
「……ま、俺の予想やから」
アキラくんはヨシヨシと私を撫でた。
「その辺はおいおい、やな……」
「ふうん」
恐らくはなんらかの脅迫?
それをして、私が「攻略対象」と関わらないようにさせるか、逆に「悪役令嬢」として関わらせるようにするか。
その、どちらかが目的であろうとは思うのだけれどね。
ちら、と窓に目をやる。
はめ殺しの窓ガラスの向こう側は、すっかり夜。
(……いつもだったら、そろそろ晩ご飯)
そんなことを考えてーーぐう、とお腹が鳴った。
「……ええと、あは」
「食欲あって安心したわ」
アキラくんはにかっ、と笑うと部屋のドアをぎいと開いた。
「すんませーん」
ドアの外に立っていた(見張り? 警備?)制服のお巡りさんに、声をかける。
「なんですか」
「出前、とっていいっすか」
「……出前?」
訝しげなお巡りさんに、アキラくんは言う。
「警察署といえば」
「はぁ」
「カツ丼やないっすか」
後ろから聞いてた私はつい笑ってしまう。たしかにそうかもね!
しばらくして、本当に取ってもらった出前(カツ丼大盛り二人前)を前に、アキラくんはぽつりと言う。
「せやけど、ほんまにドラマでカツ丼のシーンて見たことないな」
「あー、たしかに」
「なんでカツ丼なんやろ」
「なんでかな……」
ぱくりとカツを口に放り込みつつ、私も考える。
カツ? カツ丼と言えば勝つ、ええとでもこの場合何に勝つのだろう。
「ま、ええわ。美味い美味い」
「ねー、それが大事」
「ちょっとアナタたち、やたら平和ね」
ドアを開いて入ってきたのは、敦子さんで。
「あれ敦子さん、お帰りなさい?」
お帰りなさい、っていうのも変かなぁ。敦子さんは呆れたように、でも安心したように笑った。
「なんだかまた妙なことに巻き込まれてるみたいね?」
「う、うえへへ、そうみたいで」
「何よその笑い方ーー山ノ内くん」
敦子さんはアキラくんに向き直る。
「はい」
「……ありがとう」
敦子さんは目を細めた。
「華を、守ってくれて」
そうして、頭を下げてーーアキラくんは慌てたように「いや、それやめてください」と敦子さんのそばまで行く。
「ほんま、俺おらんでもどうにかなったと思うし」
「どうにかならなかったかも。貴方が華から離れなかったから、その隙が出来なかっただけ、かも」
頭を上げて、敦子さんはアキラくんを見つめる。
「本当に、ありがとう」
「……華は俺の彼女なんで」
当たり前ッス、というアキラくんに、敦子さんはほんの少しだけ、微笑んで見せた。
「どうぞ、こちらで。申し訳ありません、取り調べというわけではないのですが」
ものすごーーーく丁寧な物腰で、署長さんが私を誘う。
「よろしければ、そちらの殿方は別室で」
「あかーん」
私を相変わらずぎゅうぎゅうしてくれているアキラくんは即答する。
「あかん。超絶アカン。華がなにされるか分からへん」
「そんなようなことは、」
「ほなアンタの部下の警察官は華に何しようとしてたんや?」
署長さんはぐっと黙る。
そして私たちは簡素なソファだけが置いてある部屋に取り残されてーーぽかんとはめ殺しの窓から空を見つめた。
「あのさ」
「なん?」
「私、未だに何がなんだか、なんですけど?」
「俺もやで。……ま、想像はつくけどな」
私は首を傾げた。
「これが青花の仕掛けってこと?」
「それも。それと、……白井が華になにしようとしてたか」
きゅ、とアキラくんは私を抱きしめ直した。
「近くにおって、良かったわ」
ま、護衛サンいてはったからな、とアキラくんは続ける。
「俺いてもおらんでも、良かったんかもやけど」
「そんなことない!」
私は少し大きく言う。
「いてくれて、ほんとに……」
「華」
ぎゅ、と抱きつく私の後頭部を、ぽんぽん、とアキラくんは優しく撫でてくれる。
「白井さんは、私になにを?」
「……ま、俺の予想やから」
アキラくんはヨシヨシと私を撫でた。
「その辺はおいおい、やな……」
「ふうん」
恐らくはなんらかの脅迫?
それをして、私が「攻略対象」と関わらないようにさせるか、逆に「悪役令嬢」として関わらせるようにするか。
その、どちらかが目的であろうとは思うのだけれどね。
ちら、と窓に目をやる。
はめ殺しの窓ガラスの向こう側は、すっかり夜。
(……いつもだったら、そろそろ晩ご飯)
そんなことを考えてーーぐう、とお腹が鳴った。
「……ええと、あは」
「食欲あって安心したわ」
アキラくんはにかっ、と笑うと部屋のドアをぎいと開いた。
「すんませーん」
ドアの外に立っていた(見張り? 警備?)制服のお巡りさんに、声をかける。
「なんですか」
「出前、とっていいっすか」
「……出前?」
訝しげなお巡りさんに、アキラくんは言う。
「警察署といえば」
「はぁ」
「カツ丼やないっすか」
後ろから聞いてた私はつい笑ってしまう。たしかにそうかもね!
しばらくして、本当に取ってもらった出前(カツ丼大盛り二人前)を前に、アキラくんはぽつりと言う。
「せやけど、ほんまにドラマでカツ丼のシーンて見たことないな」
「あー、たしかに」
「なんでカツ丼なんやろ」
「なんでかな……」
ぱくりとカツを口に放り込みつつ、私も考える。
カツ? カツ丼と言えば勝つ、ええとでもこの場合何に勝つのだろう。
「ま、ええわ。美味い美味い」
「ねー、それが大事」
「ちょっとアナタたち、やたら平和ね」
ドアを開いて入ってきたのは、敦子さんで。
「あれ敦子さん、お帰りなさい?」
お帰りなさい、っていうのも変かなぁ。敦子さんは呆れたように、でも安心したように笑った。
「なんだかまた妙なことに巻き込まれてるみたいね?」
「う、うえへへ、そうみたいで」
「何よその笑い方ーー山ノ内くん」
敦子さんはアキラくんに向き直る。
「はい」
「……ありがとう」
敦子さんは目を細めた。
「華を、守ってくれて」
そうして、頭を下げてーーアキラくんは慌てたように「いや、それやめてください」と敦子さんのそばまで行く。
「ほんま、俺おらんでもどうにかなったと思うし」
「どうにかならなかったかも。貴方が華から離れなかったから、その隙が出来なかっただけ、かも」
頭を上げて、敦子さんはアキラくんを見つめる。
「本当に、ありがとう」
「……華は俺の彼女なんで」
当たり前ッス、というアキラくんに、敦子さんはほんの少しだけ、微笑んで見せた。
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