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【高校編】分岐・鹿王院樹
【番外編】ウチの両親(sideかずは/前話続き/時系列13年後くらい)
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どうやらウチ以外のご家庭のパパママはこんなにいちゃついていないらしい、と知ったのは割と最近。
「うまい」
「あ、そう? 良かった」
「こんなに旨い煮物……京都で店を出すか?」
「大袈裟だなぁ、もう」
夕食の席のこと。
パパの大絶賛に、ママは嬉しげ。
まぁこれくらいの会話は日常茶飯事。パパはママを溺愛(娘から見ても!)してるから、何しても盛大に褒めちぎるのです。
「あ、かずは、お代わりいる?」
「いらない」
「お腹いっぱい?」
不思議そうに私を見るママは、まぁ、娘の私から見ても綺麗な人なんだろう。
さらりと揺れるツヤツヤのショートボブ、長い睫毛、上品なネコみたいな顔立ち。
……そっくりな私が言うのもなんだけれど。
「ちょっとダイエット」
その言葉に飛び上がらんばかりに驚いたのはパパのほう。
「痩せる必要がどこにあるんだ」
「あるの」
中学に入って、なんだか肉付きが良くなってきているのだ。
ママ見てると、まぁ無理なんだろうけれど(ママはばいん! って体をしてる、特に胸部)私は華奢な子に憧れているんですよ。
思わず守ってあげたくなるような、そんな女の子……。
思い浮かべるのは、クラスの男の子。べ、別に好きとかじゃないんだけどね!?
「好きな子がいる」
そんな話をしてたって、小耳に挟んだ。
でも、あの子に似合うのは、あの子が好きになるのは……多分小動物みたいな、そんな女の子だろうな、なんて。
(私じゃないんだろーなー)
とか、考えたら。
なぜだか本当に不思議なんだけれど、痩せなきゃと思ったのです。
「痩せる必要はないだろう」
心底不思議そうにパパが言った。
「ママを見てみなさい、ふんわりしててとても綺麗で可愛くて」
「ふんわり?」
パパはママの声(マジギレした時の声だった)にきょとんとした。
本気で褒めちぎってたつもりなんだ。ふんわり。
女性らしい体付き、とかそんなニュアンス。でも言葉選び大失敗だね。いまママ、太ったって気にしてる時期だったから。
時々パパはなんていうか、ママの地雷を全力で踏み抜く。
「華、済まなかった。出てきてくれないか」
パパがどんどんとママの部屋のドアを叩く。
二葉と三葉は我関せずで晩ご飯を楽しげに食べてる。この子たちはいつでも食欲優先なんだ。いいよな、私だって小学生の頃はいくら食べたって、華奢でほっそりしてたんだよ……。
「知らなーい、おでぶちゃんなので」
「そんなことは言ってない」
「言った」
「ちがう、柔らかい体付きで、抱きしめるとふわふわして」
「それお肉じゃーんっ」
その後どういう会話があったのか分からないけれど、パパとママは久しぶりに2人きりでデート、ってことになったらしい。
「そんな訳で私、今日ひいおばあちゃんとこにお泊りなんだよ」
私はクラスの男の子に、そんな話をしてる。……自分のダイエットのきっかけが君だってことは伏せて。
「ふーん」
男の子は首を傾げた。
「でも、鹿王院、ダイエットの必要性ある?」
「……あるんだよ」
君は知らない。
む、と唇を引き結ぶ。
「そうかなぁ」
「そうなの」
「俺は、」
男の子は目線を少しだけ、ウロウロさせた。
「本気で、痩せなくていいと、思う……」
「なんで?」
私の言葉に、ぐっと言葉に詰まる男の子。
「なんでって」
「男の子って細い子好きじゃん?」
私なんか痩せてても太ってても、君の視界に入んないのかな。どうでもいいのかな。だから痩せなくていいなんて言うの?
「いや、でも……鹿王院の、ご飯おいしそーに食べてるとことか、いいなとか、思ってるやつも、うん、いるらし……いるんだよ」
「なにそれ」
私は何度か瞬きをする。
「それ、恋愛的な意味で?」
「あー、うん、そう」
「そっ、かあ」
私は目を伏せる。いるらしい、ってことは君ではないのかぁ。
(いーんだけどさ、別に)
「誰? 教えて」
「言えるか」
「ふーん」
私は唇を尖らせる。男の子はちらちら私をみた後、少しだけ情けない声で言った。
「だからさ」
「うん」
「ビュッフェ、行かない?」
男の子は制服のポケットから、なにかを取り出す。
なんだか少しシワシワなそのチケットは、横浜にあるケーキバイキングとかのお店のランチ券。
リーズナブルなお値段で、私も友達とたまに行くけれど、ダイエットときめてからは封印してる。
「……?」
「だからさ、食べてるとこ好きって思ってるやつが……や、そこだけじゃなくて好きなんだろうけど」
「え、その人といくの? ヤダ」
「う、なんで」
「せめて誰か教えてよ」
軽くにらみつけると、男の子は蚊の鳴くような声で「俺と」と言った。
「ん?」
「俺と、これ、行ってください」
ダメかなって情けない顔してる彼と、手元のチケットをちらちら見比べる。
なんでシワシワ?
ずっとそこにいれてた?
「だめ?」
「だめじゃない」
食い気味に言ってしまって、少し後悔する。だって、だってさあ。だって。
その後しばらくして、晩ご飯モリモリ食べてる私を見てパパは満足そうに頷く。
「成長期は食べるのが一番だ」
「そうそう」
「華なんかずっと食べてばかりいて。いや今もだが」
「……樹くん?」
すっと低くなる声。
さっと青くなるパパ。
(まーたデートになるのかなぁ)
いっちゃいちゃしながら帰宅されんの、ちょっと気まずいんだけど……。
「そーだ」
私はふと口にする。
「明日、おでかけ」
「どこに?」
「横浜」
ママはふうん? って、顔で私を見てる。
「だからネイル貸してって言ってきた?」
「ん、んん、まぁ」
「ははーん」
ママはにんまり。
「デートね」
「デートっ」
パパは蒼白。
その顔を見てつい吹き出してーー私はちょっとだけ、パパとママみたいな夫婦に憧れるなぁみたいに思うのでした。
……まぁちょっとイチャつきすぎかなとは思うけれどね!
「うまい」
「あ、そう? 良かった」
「こんなに旨い煮物……京都で店を出すか?」
「大袈裟だなぁ、もう」
夕食の席のこと。
パパの大絶賛に、ママは嬉しげ。
まぁこれくらいの会話は日常茶飯事。パパはママを溺愛(娘から見ても!)してるから、何しても盛大に褒めちぎるのです。
「あ、かずは、お代わりいる?」
「いらない」
「お腹いっぱい?」
不思議そうに私を見るママは、まぁ、娘の私から見ても綺麗な人なんだろう。
さらりと揺れるツヤツヤのショートボブ、長い睫毛、上品なネコみたいな顔立ち。
……そっくりな私が言うのもなんだけれど。
「ちょっとダイエット」
その言葉に飛び上がらんばかりに驚いたのはパパのほう。
「痩せる必要がどこにあるんだ」
「あるの」
中学に入って、なんだか肉付きが良くなってきているのだ。
ママ見てると、まぁ無理なんだろうけれど(ママはばいん! って体をしてる、特に胸部)私は華奢な子に憧れているんですよ。
思わず守ってあげたくなるような、そんな女の子……。
思い浮かべるのは、クラスの男の子。べ、別に好きとかじゃないんだけどね!?
「好きな子がいる」
そんな話をしてたって、小耳に挟んだ。
でも、あの子に似合うのは、あの子が好きになるのは……多分小動物みたいな、そんな女の子だろうな、なんて。
(私じゃないんだろーなー)
とか、考えたら。
なぜだか本当に不思議なんだけれど、痩せなきゃと思ったのです。
「痩せる必要はないだろう」
心底不思議そうにパパが言った。
「ママを見てみなさい、ふんわりしててとても綺麗で可愛くて」
「ふんわり?」
パパはママの声(マジギレした時の声だった)にきょとんとした。
本気で褒めちぎってたつもりなんだ。ふんわり。
女性らしい体付き、とかそんなニュアンス。でも言葉選び大失敗だね。いまママ、太ったって気にしてる時期だったから。
時々パパはなんていうか、ママの地雷を全力で踏み抜く。
「華、済まなかった。出てきてくれないか」
パパがどんどんとママの部屋のドアを叩く。
二葉と三葉は我関せずで晩ご飯を楽しげに食べてる。この子たちはいつでも食欲優先なんだ。いいよな、私だって小学生の頃はいくら食べたって、華奢でほっそりしてたんだよ……。
「知らなーい、おでぶちゃんなので」
「そんなことは言ってない」
「言った」
「ちがう、柔らかい体付きで、抱きしめるとふわふわして」
「それお肉じゃーんっ」
その後どういう会話があったのか分からないけれど、パパとママは久しぶりに2人きりでデート、ってことになったらしい。
「そんな訳で私、今日ひいおばあちゃんとこにお泊りなんだよ」
私はクラスの男の子に、そんな話をしてる。……自分のダイエットのきっかけが君だってことは伏せて。
「ふーん」
男の子は首を傾げた。
「でも、鹿王院、ダイエットの必要性ある?」
「……あるんだよ」
君は知らない。
む、と唇を引き結ぶ。
「そうかなぁ」
「そうなの」
「俺は、」
男の子は目線を少しだけ、ウロウロさせた。
「本気で、痩せなくていいと、思う……」
「なんで?」
私の言葉に、ぐっと言葉に詰まる男の子。
「なんでって」
「男の子って細い子好きじゃん?」
私なんか痩せてても太ってても、君の視界に入んないのかな。どうでもいいのかな。だから痩せなくていいなんて言うの?
「いや、でも……鹿王院の、ご飯おいしそーに食べてるとことか、いいなとか、思ってるやつも、うん、いるらし……いるんだよ」
「なにそれ」
私は何度か瞬きをする。
「それ、恋愛的な意味で?」
「あー、うん、そう」
「そっ、かあ」
私は目を伏せる。いるらしい、ってことは君ではないのかぁ。
(いーんだけどさ、別に)
「誰? 教えて」
「言えるか」
「ふーん」
私は唇を尖らせる。男の子はちらちら私をみた後、少しだけ情けない声で言った。
「だからさ」
「うん」
「ビュッフェ、行かない?」
男の子は制服のポケットから、なにかを取り出す。
なんだか少しシワシワなそのチケットは、横浜にあるケーキバイキングとかのお店のランチ券。
リーズナブルなお値段で、私も友達とたまに行くけれど、ダイエットときめてからは封印してる。
「……?」
「だからさ、食べてるとこ好きって思ってるやつが……や、そこだけじゃなくて好きなんだろうけど」
「え、その人といくの? ヤダ」
「う、なんで」
「せめて誰か教えてよ」
軽くにらみつけると、男の子は蚊の鳴くような声で「俺と」と言った。
「ん?」
「俺と、これ、行ってください」
ダメかなって情けない顔してる彼と、手元のチケットをちらちら見比べる。
なんでシワシワ?
ずっとそこにいれてた?
「だめ?」
「だめじゃない」
食い気味に言ってしまって、少し後悔する。だって、だってさあ。だって。
その後しばらくして、晩ご飯モリモリ食べてる私を見てパパは満足そうに頷く。
「成長期は食べるのが一番だ」
「そうそう」
「華なんかずっと食べてばかりいて。いや今もだが」
「……樹くん?」
すっと低くなる声。
さっと青くなるパパ。
(まーたデートになるのかなぁ)
いっちゃいちゃしながら帰宅されんの、ちょっと気まずいんだけど……。
「そーだ」
私はふと口にする。
「明日、おでかけ」
「どこに?」
「横浜」
ママはふうん? って、顔で私を見てる。
「だからネイル貸してって言ってきた?」
「ん、んん、まぁ」
「ははーん」
ママはにんまり。
「デートね」
「デートっ」
パパは蒼白。
その顔を見てつい吹き出してーー私はちょっとだけ、パパとママみたいな夫婦に憧れるなぁみたいに思うのでした。
……まぁちょっとイチャつきすぎかなとは思うけれどね!
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