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【高校編】分岐・鹿王院樹
【番外編】デート【side樹】(時系列飛びます、13年後くらい)
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「今シーズンから日本でプレーということで、なにか抱負などありますか?」
練習グラウンドから出てすぐ、テレビ局のその質問に、俺は淡々と答えた。
「いつも通りにプレーするだけです」
そのまま早足でロッカーへ向かう。平素であればもう少し付き合ってもいい。けれど、今日はダメだ。今日は。
「あれ鹿王院さん、なんか急いでます?」
今シーズンから同じチームになった後輩に声をかけられて、少しうなずく。
「デートなんだ」
「デート? あ、奥さん?」
うむ、と頷く。
二人きりで出かけるのなんか、もう何年ぶりだろう?
「お子さんは?」
「学校で、そのあとは実家に。ついでにお泊りらしい。まぁ、一番上はもう中学生だから」
「え、そんな大っきいんすか?」
「中1、小5、小3。全員娘」
「えー、見たい」
言われるがままに写真を見せる。どうだ可愛いだろうというのが顔に出ていたらしい。呆れたように笑われた。
「いや、可愛いですよ。普通にモデルとかなれますって。てか、わ、奥さん美人。優しそう」
「優しいぞ」
「ノロケっすか」
「そんな優しい妻を激怒させたので今からデートなんだ」
「あちゃー。頑張ってください」
まぁ7割くらい言い訳。
単に、久々に華と過ごしたかった。
家まで行くと、リビングで華は戸惑っているような、楽しみなような、そんな顔で俺を待っていた。
「ただいま」
「おかえり」
華は困った顔をする。
「ねぇ」
「なんだ?」
「もういいよ、怒ってないよ」
首を傾げる華は、相変わらずとても可愛らしい。
「怒っていなくては」
「?」
「俺とデートもしてくれないのか」
華は少し驚いた顔をしてから、くすくす笑った。
「怒ってなくても、デートくらいするよ。そんな情けない顔しないで」
「む」
そんな顔をしていただろうか?
華は苦笑して立ち上がって、俺の手を取る。
「ほんとはね」
少し、上目遣いに。
「ちょっと、楽しみにしてたよ」
「……ちょっと?」
その唇に、キスを落とす。華はくすぐるように笑う。
「かなり。結構。とても」
「素直で何よりだ」
その前に、と華を抱き上げた。
「わ!? ちょ、重いでしょ!? 大丈夫?」
「まったく重くない」
ふ、と笑って見せる。
いつも「太った」「ダイエットする」
の繰り返しの華だが、俺からすればそんなに大差ない、と思う。むしろ触り心地が……と口にしそうになってやめた。それで怒られたんだ。
ぽすり、と寝室のベッドに横たえた。
「……デートは?」
「先に華」
「もう」
結婚して随分経つのに、華はこういう時少し恥じらうように笑う。
その少し伏せられた瞳が、俺の欲情をこれでもかと誘うなんて、知りもしないで。
重ねた唇から、彼女の口腔をひたすらに味わって。
離せばとろんとした瞳と目が合う。
すっかり知り尽くした彼女の身体に触れる。どこをどうすれば華がどうなるのか、分かっているのにいつも新鮮な気持ちになる。
涙目で、俺を欲しいと小さく告げるその声で俺の頭も蕩けてしまいそうになって、まったく俺の妻はやっぱり可愛くてエロいなんて思ってしまう。
「わー、可愛い」
「だろう、ダンゴウオ可愛いだろう」
「飼わないでね」
デート先は、華の希望で水族館だった。俺の趣味に付き合ってくれているような気もするが、どうなんだろう。
(楽しそうだからいいか)
俺の手を握ってはしゃぐ華は、こんなことを言うのは変かもしれないけれど、3人も子供がいるようにはとても見えなかった。
「あ、イルカショー始まるよ」
パンフレット片手に、華は少し早歩きで、俺の手を引く。
「かずはたち来たかったかな?」
娘のことがよぎるのは、俺も華も同じようで。
けれど今日はデートだから。
「ほかのヤツのことは考えるな」
「言い方」
言いたいことは伝わったようで、華は眉を下げて笑った。
「でもお土産は買おうね」
「それはな」
「ぬいぐるみ買い過ぎるのはダメだよ、かずは、もうぬいぐるみ要らないって言ってた」
「……」
いつのまにか、娘たちも大きくなる。
「そのうち彼氏とか」
「……!?」
「そんな顔しないでよ」
くすくすと華は笑った。
「中学の時、デートとかお泊りとかしてたじゃん、私たちも」
「……沖縄行ったなぁ」
「行った行った。楽しかった」
「また行こう」
「うん」
今度はみんなでね、と言われて頷く。かずは辺りが家族旅行を嫌がるようになる前に行かなくてはな、と思う。
「華」
「?」
青く照らされた水槽の前で振り向く華は、やっぱり可愛い。可愛いというか、綺麗というか、愛おしい。
世界の誰よりも。
娘たちとは、また別のベクトルで、世界で1番、俺の大切な人。
「愛してる」
驚いたように華は俺を見て、それからそっと俺の手を引く。
小さな声で、そっと囁くように。
「私も」
俺たちは見つめあって、なんだかおかしくて笑った。
こういう感情を、こういう存在を、俺はなんと表現したらいいのか分からない。
ただ繋いだ手は温かくて、離したくなくて、未だにどきどきして、いつまでも初恋のようで。
「華」
分からないから、名前を呼ぶ。
「なぁに、樹くん」
返ってくるその声に、俺はぼんやりと、でもはっきりと、俺が世界一幸せ者だと確信している。
練習グラウンドから出てすぐ、テレビ局のその質問に、俺は淡々と答えた。
「いつも通りにプレーするだけです」
そのまま早足でロッカーへ向かう。平素であればもう少し付き合ってもいい。けれど、今日はダメだ。今日は。
「あれ鹿王院さん、なんか急いでます?」
今シーズンから同じチームになった後輩に声をかけられて、少しうなずく。
「デートなんだ」
「デート? あ、奥さん?」
うむ、と頷く。
二人きりで出かけるのなんか、もう何年ぶりだろう?
「お子さんは?」
「学校で、そのあとは実家に。ついでにお泊りらしい。まぁ、一番上はもう中学生だから」
「え、そんな大っきいんすか?」
「中1、小5、小3。全員娘」
「えー、見たい」
言われるがままに写真を見せる。どうだ可愛いだろうというのが顔に出ていたらしい。呆れたように笑われた。
「いや、可愛いですよ。普通にモデルとかなれますって。てか、わ、奥さん美人。優しそう」
「優しいぞ」
「ノロケっすか」
「そんな優しい妻を激怒させたので今からデートなんだ」
「あちゃー。頑張ってください」
まぁ7割くらい言い訳。
単に、久々に華と過ごしたかった。
家まで行くと、リビングで華は戸惑っているような、楽しみなような、そんな顔で俺を待っていた。
「ただいま」
「おかえり」
華は困った顔をする。
「ねぇ」
「なんだ?」
「もういいよ、怒ってないよ」
首を傾げる華は、相変わらずとても可愛らしい。
「怒っていなくては」
「?」
「俺とデートもしてくれないのか」
華は少し驚いた顔をしてから、くすくす笑った。
「怒ってなくても、デートくらいするよ。そんな情けない顔しないで」
「む」
そんな顔をしていただろうか?
華は苦笑して立ち上がって、俺の手を取る。
「ほんとはね」
少し、上目遣いに。
「ちょっと、楽しみにしてたよ」
「……ちょっと?」
その唇に、キスを落とす。華はくすぐるように笑う。
「かなり。結構。とても」
「素直で何よりだ」
その前に、と華を抱き上げた。
「わ!? ちょ、重いでしょ!? 大丈夫?」
「まったく重くない」
ふ、と笑って見せる。
いつも「太った」「ダイエットする」
の繰り返しの華だが、俺からすればそんなに大差ない、と思う。むしろ触り心地が……と口にしそうになってやめた。それで怒られたんだ。
ぽすり、と寝室のベッドに横たえた。
「……デートは?」
「先に華」
「もう」
結婚して随分経つのに、華はこういう時少し恥じらうように笑う。
その少し伏せられた瞳が、俺の欲情をこれでもかと誘うなんて、知りもしないで。
重ねた唇から、彼女の口腔をひたすらに味わって。
離せばとろんとした瞳と目が合う。
すっかり知り尽くした彼女の身体に触れる。どこをどうすれば華がどうなるのか、分かっているのにいつも新鮮な気持ちになる。
涙目で、俺を欲しいと小さく告げるその声で俺の頭も蕩けてしまいそうになって、まったく俺の妻はやっぱり可愛くてエロいなんて思ってしまう。
「わー、可愛い」
「だろう、ダンゴウオ可愛いだろう」
「飼わないでね」
デート先は、華の希望で水族館だった。俺の趣味に付き合ってくれているような気もするが、どうなんだろう。
(楽しそうだからいいか)
俺の手を握ってはしゃぐ華は、こんなことを言うのは変かもしれないけれど、3人も子供がいるようにはとても見えなかった。
「あ、イルカショー始まるよ」
パンフレット片手に、華は少し早歩きで、俺の手を引く。
「かずはたち来たかったかな?」
娘のことがよぎるのは、俺も華も同じようで。
けれど今日はデートだから。
「ほかのヤツのことは考えるな」
「言い方」
言いたいことは伝わったようで、華は眉を下げて笑った。
「でもお土産は買おうね」
「それはな」
「ぬいぐるみ買い過ぎるのはダメだよ、かずは、もうぬいぐるみ要らないって言ってた」
「……」
いつのまにか、娘たちも大きくなる。
「そのうち彼氏とか」
「……!?」
「そんな顔しないでよ」
くすくすと華は笑った。
「中学の時、デートとかお泊りとかしてたじゃん、私たちも」
「……沖縄行ったなぁ」
「行った行った。楽しかった」
「また行こう」
「うん」
今度はみんなでね、と言われて頷く。かずは辺りが家族旅行を嫌がるようになる前に行かなくてはな、と思う。
「華」
「?」
青く照らされた水槽の前で振り向く華は、やっぱり可愛い。可愛いというか、綺麗というか、愛おしい。
世界の誰よりも。
娘たちとは、また別のベクトルで、世界で1番、俺の大切な人。
「愛してる」
驚いたように華は俺を見て、それからそっと俺の手を引く。
小さな声で、そっと囁くように。
「私も」
俺たちは見つめあって、なんだかおかしくて笑った。
こういう感情を、こういう存在を、俺はなんと表現したらいいのか分からない。
ただ繋いだ手は温かくて、離したくなくて、未だにどきどきして、いつまでも初恋のようで。
「華」
分からないから、名前を呼ぶ。
「なぁに、樹くん」
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