409 / 702
【高校編】分岐・山ノ内瑛
二学期
しおりを挟む
夏休みが明けたら、すぐに生徒会選挙が始まる。
「うー、緊張するよ」
「がんばってよ女王陛下」
「そうそう緊張するなんて陛下らしくないよヘラヘラしてなよ」
「励ましてないよね?」
大村さんはじめ、クラスのみんなは楽しげにからかってくる。
そもそも女王はヘラヘラしてないと思う……ていうか、普段ヘラヘラしてると思われてたのか!
む、と睨むとヨシヨシされた。
生徒会選挙。風紀委員長の座を狙う(いや、校則変えたいし)私にとっては大一番と言っても良い。
今日の放課後には、選挙演説会。入学式もした大講堂に全校生徒が集まって、立候補者と応援者で演説する、っていう……こういうの、苦手だなぁ。
「でもなんで設楽ちゃんて校則変えたいの?」
クラスの子が不思議そうに聞いてくる。
「あんま関係ないじゃん。設楽ちゃんて黒髪ストレート」
さらさらと髪を撫でられた。ひとりが撫でたのを契機に、みんなに寄ってたかって頭を撫でる、っていうかぐちゃぐちゃにしてくる。
「わああやめてよう」
「ほんとさらさらー」
「トリートメント、なに使ってるの」
きゃっきゃと楽しそう。うう、撫でられて気持ち良いやら、ぐちゃぐちゃにされて困るやら。
「で?」
「へ?」
みんなにじっと見つめられて思わずたじろぐ。「で?」って、……あ、風紀委員長の椅子を狙う理由か。
「ええと、だってさ」
「うん」
「後輩が苦労するの可愛そうじゃない?」
単にそれだけの理由だ。
「後輩?」
「うん」
私は頷いた。
「部活とかさ、……水泳部の子とか。どうしても髪痛むし、そもそも生まれつきで茶色かったりフワフワだったり、それ全否定で"良妻賢母は黒髪ストレート"っておかしいよね?」
ていうか、そもそも良妻賢母って考え方自体が前世紀だ。
「まぁねぇ」
「真面目だよね」
感心したように言われて、思わず笑う。
「違うよ」
私は首を傾げた。
「単にそういうの、ムカつくだけ」
別に「因習を変えてやろう」とか「大人がムカつく」とか(まぁ大人の記憶もあるんだけれど)じゃない。
なんか、ムカつく。
単にそれだけ。
「ワガママじゃーん」
「さすが女王陛下~」
クラスのみんなは笑うけれど、それでも今日まで選挙に協力してくれた。ほんとにありがたい……。
そんな訳で挑んだ選挙演説、私は思わずおでこを抑えた。
「こんな自分勝手でワガママな人間を生徒会にいれるなんてぜえええったいにダメですっ」
講堂で大声を張り上げて、壇上の私を指差すのはもちろん(?)ヒロイン、桜澤青花さんで……。
「自分の取り巻きは優遇して、やりたい放題! 気に入らない人には自分を棚上げして厳しくして!」
そーだそーだ、と青花まわりの男子から声が上がる。
「ね、アキラくん!」
離れたところに座っていたアキラくんに、青花は声をかける。隣のクラスだからか、どうしても席が近い。
講堂はしん、と静まり返った。私がアキラくん担当(?)で髪のことを煩く言ってるのは、もはや有名なことだったから。……アキラくんが元々目立つから、っていうのが大きいと思うんだけれど。
アキラくんに視線が集まる。
アキラくんは不機嫌を隠そうともせず、低い声で「名前で呼ばんといて」と青花を斜めに見た。
「え、えっと」
「いつ呼んでええって言ったっけ」
「……そ、それは置いておいて」
青花は慌てたように言い募る。
「山ノ内くんもそう思うでしょ!?」
「何が」
「あ、あのひと! 設楽華!」
青花は再び、私をびしりと指差した。
「あんまりにも自分中心で!」
「そんなことないけど」
淡々としたアキラくんの声が講堂で響いた。
「俺が悪いんやん?」
さらりと金の髪が揺れる。
青花はぽかんとアキラくんを見つめた。
「……え、でも、え? 校則違反ではないし」
「せやな」
アキラくんは目を細める。
「せやけど、コレやり過ぎなんは知ってるわ」
「じゃ、じゃあなんで」
「んー」
アキラくんは少し考えたあと、ふっと笑った。
「構ってほしいから」
「へ?」
「設楽センパイに」
講堂がしん、として、私はぽかんとしてアキラくんを見つめた。
アキラくんはちらりと私を見て少しだけ笑って、それから目線を逸らす。それきり黙り込んだ。
「うー、緊張するよ」
「がんばってよ女王陛下」
「そうそう緊張するなんて陛下らしくないよヘラヘラしてなよ」
「励ましてないよね?」
大村さんはじめ、クラスのみんなは楽しげにからかってくる。
そもそも女王はヘラヘラしてないと思う……ていうか、普段ヘラヘラしてると思われてたのか!
む、と睨むとヨシヨシされた。
生徒会選挙。風紀委員長の座を狙う(いや、校則変えたいし)私にとっては大一番と言っても良い。
今日の放課後には、選挙演説会。入学式もした大講堂に全校生徒が集まって、立候補者と応援者で演説する、っていう……こういうの、苦手だなぁ。
「でもなんで設楽ちゃんて校則変えたいの?」
クラスの子が不思議そうに聞いてくる。
「あんま関係ないじゃん。設楽ちゃんて黒髪ストレート」
さらさらと髪を撫でられた。ひとりが撫でたのを契機に、みんなに寄ってたかって頭を撫でる、っていうかぐちゃぐちゃにしてくる。
「わああやめてよう」
「ほんとさらさらー」
「トリートメント、なに使ってるの」
きゃっきゃと楽しそう。うう、撫でられて気持ち良いやら、ぐちゃぐちゃにされて困るやら。
「で?」
「へ?」
みんなにじっと見つめられて思わずたじろぐ。「で?」って、……あ、風紀委員長の椅子を狙う理由か。
「ええと、だってさ」
「うん」
「後輩が苦労するの可愛そうじゃない?」
単にそれだけの理由だ。
「後輩?」
「うん」
私は頷いた。
「部活とかさ、……水泳部の子とか。どうしても髪痛むし、そもそも生まれつきで茶色かったりフワフワだったり、それ全否定で"良妻賢母は黒髪ストレート"っておかしいよね?」
ていうか、そもそも良妻賢母って考え方自体が前世紀だ。
「まぁねぇ」
「真面目だよね」
感心したように言われて、思わず笑う。
「違うよ」
私は首を傾げた。
「単にそういうの、ムカつくだけ」
別に「因習を変えてやろう」とか「大人がムカつく」とか(まぁ大人の記憶もあるんだけれど)じゃない。
なんか、ムカつく。
単にそれだけ。
「ワガママじゃーん」
「さすが女王陛下~」
クラスのみんなは笑うけれど、それでも今日まで選挙に協力してくれた。ほんとにありがたい……。
そんな訳で挑んだ選挙演説、私は思わずおでこを抑えた。
「こんな自分勝手でワガママな人間を生徒会にいれるなんてぜえええったいにダメですっ」
講堂で大声を張り上げて、壇上の私を指差すのはもちろん(?)ヒロイン、桜澤青花さんで……。
「自分の取り巻きは優遇して、やりたい放題! 気に入らない人には自分を棚上げして厳しくして!」
そーだそーだ、と青花まわりの男子から声が上がる。
「ね、アキラくん!」
離れたところに座っていたアキラくんに、青花は声をかける。隣のクラスだからか、どうしても席が近い。
講堂はしん、と静まり返った。私がアキラくん担当(?)で髪のことを煩く言ってるのは、もはや有名なことだったから。……アキラくんが元々目立つから、っていうのが大きいと思うんだけれど。
アキラくんに視線が集まる。
アキラくんは不機嫌を隠そうともせず、低い声で「名前で呼ばんといて」と青花を斜めに見た。
「え、えっと」
「いつ呼んでええって言ったっけ」
「……そ、それは置いておいて」
青花は慌てたように言い募る。
「山ノ内くんもそう思うでしょ!?」
「何が」
「あ、あのひと! 設楽華!」
青花は再び、私をびしりと指差した。
「あんまりにも自分中心で!」
「そんなことないけど」
淡々としたアキラくんの声が講堂で響いた。
「俺が悪いんやん?」
さらりと金の髪が揺れる。
青花はぽかんとアキラくんを見つめた。
「……え、でも、え? 校則違反ではないし」
「せやな」
アキラくんは目を細める。
「せやけど、コレやり過ぎなんは知ってるわ」
「じゃ、じゃあなんで」
「んー」
アキラくんは少し考えたあと、ふっと笑った。
「構ってほしいから」
「へ?」
「設楽センパイに」
講堂がしん、として、私はぽかんとしてアキラくんを見つめた。
アキラくんはちらりと私を見て少しだけ笑って、それから目線を逸らす。それきり黙り込んだ。
0
お気に入りに追加
3,083
あなたにおすすめの小説
モブ令嬢ですが、悪役令嬢の妹です。
霜月零
恋愛
私は、ある日思い出した。
ヒロインに、悪役令嬢たるお姉様が言った一言で。
「どうして、このお茶会に平民がまぎれているのかしら」
その瞬間、私はこの世界が、前世やってた乙女ゲームに酷似した世界だと気が付いた。
思い出した私がとった行動は、ヒロインをこの場から逃がさない事。
だってここで走り出されたら、婚約者のいる攻略対象とヒロインのフラグが立っちゃうんだもの!!!
略奪愛ダメ絶対。
そんなことをしたら国が滅ぶのよ。
バッドエンド回避の為に、クリスティーナ=ローエンガルデ。
悪役令嬢の妹だけど、前世の知識総動員で、破滅の運命回避して見せます。
※他サイト様にも掲載中です。
ヒロインを虐めなくても死亡エンドしかない悪役令嬢に転生してしまった!
青星 みづ
恋愛
【第Ⅰ章完結】『イケメン達と乙女ゲームの様な甘くてせつない恋模様を描く。少しシリアスな悪役令嬢の物語』
なんで今、前世を思い出したかな?!ルクレツィアは顔を真っ青に染めた。目の前には前世の押しである超絶イケメンのクレイが憎悪の表情でこちらを睨んでいた。
それもそのはず、ルクレツィアは固い扇子を振りかざして目の前のクレイの頬を引っぱたこうとしていたのだから。でもそれはクレイの手によって阻まれていた。
そしてその瞬間に前世を思い出した。
この世界は前世で遊んでいた乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢だという事を。
や、やばい……。
何故なら既にゲームは開始されている。
そのゲームでは悪役令嬢である私はどのルートでも必ず死を迎えてしまう末路だった!
しかもそれはヒロインを虐めても虐めなくても全く関係ない死に方だし!
どうしよう、どうしよう……。
どうやったら生き延びる事ができる?!
何とか生き延びる為に頑張ります!
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
どう頑張っても死亡ルートしかない悪役令嬢に転生したので、一切頑張らないことにしました
小倉みち
恋愛
7歳の誕生日、突然雷に打たれ、そのショックで前世を思い出した公爵令嬢のレティシア。
前世では夥しいほどの仕事に追われる社畜だった彼女。
唯一の楽しみだった乙女ゲームの新作を発売日当日に買いに行こうとしたその日、交通事故で命を落としたこと。
そして――。
この世界が、その乙女ゲームの設定とそっくりそのままであり、自分自身が悪役令嬢であるレティシアに転生してしまったことを。
この悪役令嬢、自分に関心のない家族を振り向かせるために、死に物狂いで努力し、第一王子の婚約者という地位を勝ち取った。
しかしその第一王子の心がぽっと出の主人公に奪われ、嫉妬に狂い主人公に毒を盛る。
それがバレてしまい、最終的に死刑に処される役となっている。
しかも、第一王子ではなくどの攻略対象ルートでも、必ず主人公を虐め、処刑されてしまう噛ませ犬的キャラクター。
レティシアは考えた。
どれだけ努力をしても、どれだけ頑張っても、最終的に自分は死んでしまう。
――ということは。
これから先どんな努力もせず、ただの馬鹿な一般令嬢として生きれば、一切攻略対象と関わらなければ、そもそもその土俵に乗ることさえしなければ。
私はこの恐ろしい世界で、生き残ることが出来るのではないだろうか。
悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?
りーさん
恋愛
気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?
こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。
他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。
もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!
そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……?
※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。
1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
見ず知らずの(たぶん)乙女ゲーに(おそらく)悪役令嬢として転生したので(とりあえず)破滅回避をめざします!
すな子
恋愛
ステラフィッサ王国公爵家令嬢ルクレツィア・ガラッシアが、前世の記憶を思い出したのは5歳のとき。
現代ニホンの枯れ果てたアラサーOLから、異世界の高位貴族の令嬢として天使の容貌を持って生まれ変わった自分は、昨今流行りの(?)「乙女ゲーム」の「悪役令嬢」に「転生」したのだと確信したものの、前世であれほどプレイした乙女ゲームのどんな設定にも、今の自分もその環境も、思い当たるものがなにひとつない!
それでもいつか訪れるはずの「破滅」を「回避」するために、前世の記憶を総動員、乙女ゲームや転生悪役令嬢がざまぁする物語からあらゆる事態を想定し、今世は幸せに生きようと奮闘するお話。
───エンディミオン様、あなたいったい、どこのどなたなんですの?
********
できるだけストレスフリーに読めるようご都合展開を陽気に突き進んでおりますので予めご了承くださいませ。
また、【閑話】には死ネタが含まれますので、苦手な方はご注意ください。
☆「小説家になろう」様にも常羽名義で投稿しております。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる