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【高校編】分岐・相良仁
秘するが花(side仁)
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「色々考えたんだけどさー」
華はぶつくさと言った。
「選挙、出る」
「簡単に言うなあ」
「考えたんだって! これでも!」
華はぷうと頬を膨らませる。
「だってさあ、その方が早そうだし」
「なんでその辺に燃えてんのお前」
校則の改革だとかなんだとか。
(別に、前世でもフェミニストって訳でもなかったよなぁ)
まぁたしかに古臭いとは思うけど。
「だってさ」
華はふ、と目線を落として、少し微笑んだ。
「次に入学してくる子たちにさ、同じ苦労させたくないじゃん?」
「……そっか」
実に華らしい理由だった。
「ところでさ」
華が首を傾げた。
「この姿勢はなんでしょう?」
「んー?」
俺の車の中、華は俺の膝の上にいた。横向きに座って、頭を俺の右肩に。
「いやぁなんか時々お前こうしたくなるんだよね」
時々、なんていうけど本当は四六時中こうやっていちゃついてたい。そんな塾帰りの車内ーー。堂々と華を家まで送れるようになったのは、ほんとに嬉しい。こうやっていちゃつけるから。
「んー、でもさぁ」
薄暗い車内で、華はぴしり、と俺の手を叩く。
「お腹触るの禁止」
「エッなんで」
「……ヤラシクなるでしょ?」
そう言って見上げる華の目は、ほんとちゃんとした「大人のひと」の目で、……こういう、中身と外見の年齢差っていうか、そういうのがコイツの容姿の良さ以上にヒトを惹きつけちゃうのかもなー、なんて思う。
「……ごめん」
「ね?」
「まぁ止めないけど」
「へ!?」
びっくり顔の華に軽くキス。それだけで華は驚くくらいトロンとなるから、ほんと俺の理性ってすごいよなーと思う。まぁ伊達にトシ食ってないってコトで。
「だってさぁ俺もさあ疲れるわけよ流石に」
「……ん、お疲れ様」
素直に返された。頬をむにりと掴む。やめてよって顔された。かーわいい。
「まぁ、激務だと思います……」
「でしょ?」
通常の華の護衛に加えて学校業務! 特にテスト前後はほんとにキツイ。
「そーなるとさ、俺も癒しが必要なわけ」
華をぎゅうぎゅう抱きしめて、色んなとこにキスを落として、華の色んな反応たのしんで。
(華のにおい)
甘いような、蕩けるような。
「あー、ほんと好き」
「……っ、そんな急に」
俺の腕の中で、頬を赤くして、口を手の甲で少し隠してーー。
「誘ってるようにしか見えない」
「さ、誘ってない! ていうか、そんなこと言わない!」
「うんうん」
割とてきとーに返事をして、軽く耳を噛む。びくりと震える身体、見上げた瞳はしっとり濡れてる。
「早く卒業して」
「……したいよ私だって」
俺は軽く微笑む。
「でもまぁ、高校生活楽しんで欲しいって気持ちもあるんだぜ俺には」
「本当? まぁね、一生に一回の三年間だもんね」
「前世含めてると6年だけどな」
「揚げ足とらない……あ、ていうか」
華は少し眉を下げた。
「そろそろ帰らないと」
「もー?」
うん、と華は頷く。
「シュリちゃんに、色々……、バレてて」
「そりゃそーだ」
「し、知ってたの!?」
俺を見あげる華の額に、そっとキス。
「ごめんな、あれ、俺のミス」
「……え?」
「お前さ、あのお嬢様のスマホ借りて買い物してただろ」
「え、あ、うん」
「履歴見られてたぞ多分。まぁ見るつもりは無かったと思うけど、勝手に履歴出てたんだろ」
一応フォロー。あの子を悪く言いたいわけじゃない。
「り、履歴……」
「俺のピアス」
華は目をまんまるに見開いた。
「お前が買ったのと、同じピアスしてたからさ」
「……あ~っ」
華は眉間に指を当てて、俯いた。それからぱっ、と俺を見上げた。
「ご、ごめん、私のせいじゃん!」
「いや、俺が気ぃ抜けてただけ。すまん」
「仁のせいじゃ……」
華は見るからにシュン、とする。
「大丈夫、いざとなりゃ色々画策するから大丈夫」
「……なに企んでるの? 悪巧み?」
「失敬な」
俺は苦笑いして、軽くデコピンした。隠し玉の一つや二つ、取っておくもんだ。
「ダイジョーブダイジョーブ」
「なんで外国人なまりなの……」
思い切り訝しそうなカオをされた。俺はちょっと笑いながら、軽く唇にキスを落とす。はー、ほんとに可愛いんだからさ。
「そーいうことなら、ま、そろそろ帰りますか」
「ご、ごめんね……でもね、シュリちゃん悪いわけじゃないの」
「知ってるよ」
あの子はあれで、案外まっとうな人格をしてる。
「そりゃ、……知ってる子がオッサンに手ぇ出されてたら心配するよね、っていう……」
「オッサンに言うな」
華が助手席に戻りながら相変わらず失礼なことを言うので、俺は一応突っ込んだ。
「や、これ結構マジで。ジョシコーセーと三十路だよ? アウトもアウト」
「まーな」
だからこそ、俺は最後の一線は超えない覚悟がある。例え中身が大人だろうと、華の身体はまだ子供なんだから。
(ま、17と18とどう違うのかって言われたら、そりゃそーなんだけどさ)
でも、だからこそ線引きは大事なんだと思う。
「だからね、シュリちゃん、……なんていうか、いい子なんだよ」
「ん」
「いい子なんだけど、だから、……分かって欲しいとか、思っちゃう」
「うん」
俺は華の頭をそっと撫でて、頷いた。
(きっとそれは無理だよ、華)
そう思ったけれど、それを言えばあの子の気持ちを言葉に滲ませてしまうような気がして、そっと俺は口をつぐんだ。秘するが花、とも言うからな。
ーーきっとあの子は、そうするつもりなのだろうし、俺がどーのこーの言っていいもんじゃない。
(でもそうであれば、)
俺はアクセルを踏みながら思う。
(あの子の気持ちは、どこへ向かうんだろう?)
ふと、そんなことを考えた。
華はぶつくさと言った。
「選挙、出る」
「簡単に言うなあ」
「考えたんだって! これでも!」
華はぷうと頬を膨らませる。
「だってさあ、その方が早そうだし」
「なんでその辺に燃えてんのお前」
校則の改革だとかなんだとか。
(別に、前世でもフェミニストって訳でもなかったよなぁ)
まぁたしかに古臭いとは思うけど。
「だってさ」
華はふ、と目線を落として、少し微笑んだ。
「次に入学してくる子たちにさ、同じ苦労させたくないじゃん?」
「……そっか」
実に華らしい理由だった。
「ところでさ」
華が首を傾げた。
「この姿勢はなんでしょう?」
「んー?」
俺の車の中、華は俺の膝の上にいた。横向きに座って、頭を俺の右肩に。
「いやぁなんか時々お前こうしたくなるんだよね」
時々、なんていうけど本当は四六時中こうやっていちゃついてたい。そんな塾帰りの車内ーー。堂々と華を家まで送れるようになったのは、ほんとに嬉しい。こうやっていちゃつけるから。
「んー、でもさぁ」
薄暗い車内で、華はぴしり、と俺の手を叩く。
「お腹触るの禁止」
「エッなんで」
「……ヤラシクなるでしょ?」
そう言って見上げる華の目は、ほんとちゃんとした「大人のひと」の目で、……こういう、中身と外見の年齢差っていうか、そういうのがコイツの容姿の良さ以上にヒトを惹きつけちゃうのかもなー、なんて思う。
「……ごめん」
「ね?」
「まぁ止めないけど」
「へ!?」
びっくり顔の華に軽くキス。それだけで華は驚くくらいトロンとなるから、ほんと俺の理性ってすごいよなーと思う。まぁ伊達にトシ食ってないってコトで。
「だってさぁ俺もさあ疲れるわけよ流石に」
「……ん、お疲れ様」
素直に返された。頬をむにりと掴む。やめてよって顔された。かーわいい。
「まぁ、激務だと思います……」
「でしょ?」
通常の華の護衛に加えて学校業務! 特にテスト前後はほんとにキツイ。
「そーなるとさ、俺も癒しが必要なわけ」
華をぎゅうぎゅう抱きしめて、色んなとこにキスを落として、華の色んな反応たのしんで。
(華のにおい)
甘いような、蕩けるような。
「あー、ほんと好き」
「……っ、そんな急に」
俺の腕の中で、頬を赤くして、口を手の甲で少し隠してーー。
「誘ってるようにしか見えない」
「さ、誘ってない! ていうか、そんなこと言わない!」
「うんうん」
割とてきとーに返事をして、軽く耳を噛む。びくりと震える身体、見上げた瞳はしっとり濡れてる。
「早く卒業して」
「……したいよ私だって」
俺は軽く微笑む。
「でもまぁ、高校生活楽しんで欲しいって気持ちもあるんだぜ俺には」
「本当? まぁね、一生に一回の三年間だもんね」
「前世含めてると6年だけどな」
「揚げ足とらない……あ、ていうか」
華は少し眉を下げた。
「そろそろ帰らないと」
「もー?」
うん、と華は頷く。
「シュリちゃんに、色々……、バレてて」
「そりゃそーだ」
「し、知ってたの!?」
俺を見あげる華の額に、そっとキス。
「ごめんな、あれ、俺のミス」
「……え?」
「お前さ、あのお嬢様のスマホ借りて買い物してただろ」
「え、あ、うん」
「履歴見られてたぞ多分。まぁ見るつもりは無かったと思うけど、勝手に履歴出てたんだろ」
一応フォロー。あの子を悪く言いたいわけじゃない。
「り、履歴……」
「俺のピアス」
華は目をまんまるに見開いた。
「お前が買ったのと、同じピアスしてたからさ」
「……あ~っ」
華は眉間に指を当てて、俯いた。それからぱっ、と俺を見上げた。
「ご、ごめん、私のせいじゃん!」
「いや、俺が気ぃ抜けてただけ。すまん」
「仁のせいじゃ……」
華は見るからにシュン、とする。
「大丈夫、いざとなりゃ色々画策するから大丈夫」
「……なに企んでるの? 悪巧み?」
「失敬な」
俺は苦笑いして、軽くデコピンした。隠し玉の一つや二つ、取っておくもんだ。
「ダイジョーブダイジョーブ」
「なんで外国人なまりなの……」
思い切り訝しそうなカオをされた。俺はちょっと笑いながら、軽く唇にキスを落とす。はー、ほんとに可愛いんだからさ。
「そーいうことなら、ま、そろそろ帰りますか」
「ご、ごめんね……でもね、シュリちゃん悪いわけじゃないの」
「知ってるよ」
あの子はあれで、案外まっとうな人格をしてる。
「そりゃ、……知ってる子がオッサンに手ぇ出されてたら心配するよね、っていう……」
「オッサンに言うな」
華が助手席に戻りながら相変わらず失礼なことを言うので、俺は一応突っ込んだ。
「や、これ結構マジで。ジョシコーセーと三十路だよ? アウトもアウト」
「まーな」
だからこそ、俺は最後の一線は超えない覚悟がある。例え中身が大人だろうと、華の身体はまだ子供なんだから。
(ま、17と18とどう違うのかって言われたら、そりゃそーなんだけどさ)
でも、だからこそ線引きは大事なんだと思う。
「だからね、シュリちゃん、……なんていうか、いい子なんだよ」
「ん」
「いい子なんだけど、だから、……分かって欲しいとか、思っちゃう」
「うん」
俺は華の頭をそっと撫でて、頷いた。
(きっとそれは無理だよ、華)
そう思ったけれど、それを言えばあの子の気持ちを言葉に滲ませてしまうような気がして、そっと俺は口をつぐんだ。秘するが花、とも言うからな。
ーーきっとあの子は、そうするつもりなのだろうし、俺がどーのこーの言っていいもんじゃない。
(でもそうであれば、)
俺はアクセルを踏みながら思う。
(あの子の気持ちは、どこへ向かうんだろう?)
ふと、そんなことを考えた。
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