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【高校編】分岐・鹿王院樹
理性と煩悩
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樹くんと、もう一度唇を重ねた。
少しだけカサついた唇。
(あったかい)
目を開けると、視線がかち合った。
今度は少しだけ深いキス。
(溶けちゃいたい)
お互いがどろどろの液体みたいになって、溶けあえたら幸せなのにな、なんて有り得ないことを思う。
離された唇が、今度は首に優しく触れた。樹くんの鼻先が首筋に当たって、くすぐったい。
「ふふ、」
笑って少し身をよじる。
「樹くん」
「華」
私は樹くんの頬に手を添えた。
唇を重ねる。
(どうなっちゃってもいいなぁ)
目なんか、とろんとしてるかも。馬鹿みたいな顔、してるかも、なんて思って樹くんを見上げると、樹くんは少し考えるように眉をよせた。
「……そんな顔をして、」
どんな顔でしょう。
やっぱりボケっとした顔してたかな。
そして、樹くんはおもむろに立ち上がった。無言でベンチコートを私に被せる。ばさり、と上から、少し乱暴に。それからまた屈んで、ファスナーをがあっと上げて、きっちりと着せてくれる、……というか着せられた。フードまで被せられる。
なぜに。
てか、暑い。ふつうに私もコート着てたし。コート二枚重ね。
(……、やっぱ、大きいなぁ)
男物な上に、樹くんは大柄なのでかなり大きい。しかもベンチコート。立ち上がったら絶対引きずる。
「なに?」
「着ていろ」
はぁ、とため息をついて樹くんは軽く私の頬に触れる。
「このままだと襲うから出よう」
「襲う?」
「当たり前だ」
樹くんはベンチコートのフード越しに、私の頭をぽんぽんと叩く。
「好きな女と2人きりでこんなことをしていて、変な気分にならん男はいないぞ」
私は樹くんを見上げた。
「おとこ?」
男の人だけかなぁ。
「? うむ」
「おんなだって」
私は樹くんと距離を詰める。
「変な気持ちに、なるよ?」
「ちょっと待て華」
樹くんがじりじりと下がる。私は距離を詰めた。抱きついて、上目遣いで見上げる。わざと。
樹くんは思い切り眉をしかめて目を閉じた。
「なにしてるの?」
「理性と煩悩が戦ってる」
「頑張れ煩悩」
「そこを応援するな……!」
樹くんは目を開けて、私の身体をぐいっと離す。
「えー」
「えー、じゃない、華。落ち着け」
「落ち着いてるよ私は」
とても冷静です。
冷静にあなたが欲しい。
うふふ、と笑うと「ああ本当にお前は」と樹くんはおでこにキスをした。
「ダメだ」
「なんで」
「バレたらどうなる? 俺は華と離れたくない」
敦子さんに連れてかれる?
(どうかなぁ)
……中学のキスマーク事件、結構怒ってたしなぁ。
「バレるかな」
「バレるだろう」
樹くんは淡々と言った。
「一緒に住んでるんだぞ? 一度超えたら我慢できる自信がない、俺は」
「そうー?」
男子高校生ってそんなものだっけか……あんまよく覚えてないな。
(……てか)
私は今更赤面した。頬に熱が集まる。
うわぁ。
(い、一緒に住んでるんだった!)
自分の頬に手を当てる。なぜすぐそこに思い至らなかったのか。全然冷静じゃないじゃん、私。
(む、むり)
普通に接するとか無理かもですよ……!?
圭くんあたりに、めちゃくちゃ怪しまれる。絶対!
「だから、うむ、少し離れて」
「じゃあ友達でいようね樹くん」
私は一気に言って、にこりと微笑んだ。
(そうするしかない!)
「は?」
ぽかんと私を見下ろす樹くん。
「だって絶対私、煩悩の方が勝つし」
「勝たないでくれ」
「照れてうまく話せなくなるし、過ごせなくなるし」
「それは」
「だから、お友達でいよう」
体裁的にだけは。形だけは。
(せめてそんな風にしてないと、……私暴走しちゃうかも)
中身オトナなのになぁ。
樹くんのほうがよほどオトナだ。
「特別なお友達、みたいな?」
「いやだ」
「なんで? 襲っちゃうよ?」
「それはこちらのセリフと言いたいところだが……嫌に決まっているだろう」
樹くんは私をぎゅうぎゅうと抱きしめる。切ない顔で。
(あ、)
私の中にじわじわとした切なさと喜びがこみ上げる。
(このひと、ほんとに私のこと好きなんだ)
どうしよう。嬉しい。
私も樹くんをぎゅうっと抱きしめ返す。好き。
「でもね、樹くん」
「……なんだ」
「お友達。お友達だけど、プロポーズ待ってるから」
「プロポーズ?」
「そうしたらね、すぐに結婚しようね」
そういうと、樹くんは優しく笑った。
「分かった」
「楽しみにしてる。約束だよ。約束」
今度は、約束してもらう。
絶対、絶対だ。
「ああ、約束だ」
そう言って、私にキスをする。唇。離れていく熱がさみしい。
「……お友達はキスなんかしないんだよ」
「特別なお友達、なんだろう」
キスくらいするさ、と樹くんはもう一度キスをする。
「そうなのかなぁ」
これからしばらくの間、私はこの恋心をうまく……ごまかせるのでしょうか?
(頑張れ私の理性?)
煩悩のほうが勝ちそうだけど。
少しだけカサついた唇。
(あったかい)
目を開けると、視線がかち合った。
今度は少しだけ深いキス。
(溶けちゃいたい)
お互いがどろどろの液体みたいになって、溶けあえたら幸せなのにな、なんて有り得ないことを思う。
離された唇が、今度は首に優しく触れた。樹くんの鼻先が首筋に当たって、くすぐったい。
「ふふ、」
笑って少し身をよじる。
「樹くん」
「華」
私は樹くんの頬に手を添えた。
唇を重ねる。
(どうなっちゃってもいいなぁ)
目なんか、とろんとしてるかも。馬鹿みたいな顔、してるかも、なんて思って樹くんを見上げると、樹くんは少し考えるように眉をよせた。
「……そんな顔をして、」
どんな顔でしょう。
やっぱりボケっとした顔してたかな。
そして、樹くんはおもむろに立ち上がった。無言でベンチコートを私に被せる。ばさり、と上から、少し乱暴に。それからまた屈んで、ファスナーをがあっと上げて、きっちりと着せてくれる、……というか着せられた。フードまで被せられる。
なぜに。
てか、暑い。ふつうに私もコート着てたし。コート二枚重ね。
(……、やっぱ、大きいなぁ)
男物な上に、樹くんは大柄なのでかなり大きい。しかもベンチコート。立ち上がったら絶対引きずる。
「なに?」
「着ていろ」
はぁ、とため息をついて樹くんは軽く私の頬に触れる。
「このままだと襲うから出よう」
「襲う?」
「当たり前だ」
樹くんはベンチコートのフード越しに、私の頭をぽんぽんと叩く。
「好きな女と2人きりでこんなことをしていて、変な気分にならん男はいないぞ」
私は樹くんを見上げた。
「おとこ?」
男の人だけかなぁ。
「? うむ」
「おんなだって」
私は樹くんと距離を詰める。
「変な気持ちに、なるよ?」
「ちょっと待て華」
樹くんがじりじりと下がる。私は距離を詰めた。抱きついて、上目遣いで見上げる。わざと。
樹くんは思い切り眉をしかめて目を閉じた。
「なにしてるの?」
「理性と煩悩が戦ってる」
「頑張れ煩悩」
「そこを応援するな……!」
樹くんは目を開けて、私の身体をぐいっと離す。
「えー」
「えー、じゃない、華。落ち着け」
「落ち着いてるよ私は」
とても冷静です。
冷静にあなたが欲しい。
うふふ、と笑うと「ああ本当にお前は」と樹くんはおでこにキスをした。
「ダメだ」
「なんで」
「バレたらどうなる? 俺は華と離れたくない」
敦子さんに連れてかれる?
(どうかなぁ)
……中学のキスマーク事件、結構怒ってたしなぁ。
「バレるかな」
「バレるだろう」
樹くんは淡々と言った。
「一緒に住んでるんだぞ? 一度超えたら我慢できる自信がない、俺は」
「そうー?」
男子高校生ってそんなものだっけか……あんまよく覚えてないな。
(……てか)
私は今更赤面した。頬に熱が集まる。
うわぁ。
(い、一緒に住んでるんだった!)
自分の頬に手を当てる。なぜすぐそこに思い至らなかったのか。全然冷静じゃないじゃん、私。
(む、むり)
普通に接するとか無理かもですよ……!?
圭くんあたりに、めちゃくちゃ怪しまれる。絶対!
「だから、うむ、少し離れて」
「じゃあ友達でいようね樹くん」
私は一気に言って、にこりと微笑んだ。
(そうするしかない!)
「は?」
ぽかんと私を見下ろす樹くん。
「だって絶対私、煩悩の方が勝つし」
「勝たないでくれ」
「照れてうまく話せなくなるし、過ごせなくなるし」
「それは」
「だから、お友達でいよう」
体裁的にだけは。形だけは。
(せめてそんな風にしてないと、……私暴走しちゃうかも)
中身オトナなのになぁ。
樹くんのほうがよほどオトナだ。
「特別なお友達、みたいな?」
「いやだ」
「なんで? 襲っちゃうよ?」
「それはこちらのセリフと言いたいところだが……嫌に決まっているだろう」
樹くんは私をぎゅうぎゅうと抱きしめる。切ない顔で。
(あ、)
私の中にじわじわとした切なさと喜びがこみ上げる。
(このひと、ほんとに私のこと好きなんだ)
どうしよう。嬉しい。
私も樹くんをぎゅうっと抱きしめ返す。好き。
「でもね、樹くん」
「……なんだ」
「お友達。お友達だけど、プロポーズ待ってるから」
「プロポーズ?」
「そうしたらね、すぐに結婚しようね」
そういうと、樹くんは優しく笑った。
「分かった」
「楽しみにしてる。約束だよ。約束」
今度は、約束してもらう。
絶対、絶対だ。
「ああ、約束だ」
そう言って、私にキスをする。唇。離れていく熱がさみしい。
「……お友達はキスなんかしないんだよ」
「特別なお友達、なんだろう」
キスくらいするさ、と樹くんはもう一度キスをする。
「そうなのかなぁ」
これからしばらくの間、私はこの恋心をうまく……ごまかせるのでしょうか?
(頑張れ私の理性?)
煩悩のほうが勝ちそうだけど。
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