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悪役令嬢は意外性がある
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「見学? まぁいいが、大友。そいつら使って、また松影に嫌がらせをする気じゃないだろうな」
「い、嫌がらせなんて、そんな」
塾の職員室。
絶句するひよりちゃんの背後から、担任の先生(久保というらしい)に鼻息荒く襲い掛かりそうになる私を、黒田くんと秋月くんは服の裾を引っ張って、諌めてくれていた。
「お前って、案外熱くなるタイプなのな」
黒田くんは苦笑まじりに言った。
「黒田くん達だって、シメる気で来てるんでしょ」
一応は見学の許可を得たということで、職員室を出ながら、こそこそと話す。
ひよりちゃんは、半ば秋月くんに支えられるように歩いていた。
(ひよりちゃん……)
真っ青な表情。見ているこちらが辛い。
「まぁ、俺はイトコこんな目に合わせたヤツに、多少の痛い目にはあってもらおうってだけで……そういやアイツ、お前の知り合いかもってヤツで合ってたのか」
「あ、うん。ご本人様でした」
「マジか……、オイ秋月、作戦変更。Gの方な」
「了解、作戦G」
「なぁにそれ?」
「時間ねぇから秘密だ。しかし、お前普段、何やらせても冷静だし、大人っぽいから、こういうの意外だった」
ただし給食の余り物ジャンケン以外ではな、と笑う黒田くん。
それについては、大人気ない自覚があるので、なんとも言えない。
(最近の給食って、美味しいのよねぇ……)
「……大人っぽくても。例え私が30歳くらいの大人、でも。この状況だったら殴りかかってたよ」
特に、あの久保という男は……。
(大人として、どうなの? そりゃ、人間だから好き嫌いは出ちゃうよ。でも、きちんと生徒を平等に見ていたら、あんな発言は出来ない)
そう思うと、余計にムカッ腹が立ってきた。
「というか、襲いかかってたかも。バールのようなもので」
「バールのようなものは止めとけ」
「……黒田くん達は、何する気なの?」
「暴力的なことはしねぇぞ、メシ肉抜きは辛い」
「何するか、まだ秘密なの?」
「あー……」
黒田くんは、軽く眉を寄せて、私を見つめた。
「設楽、虫平気か?」
「む、虫? 平気じゃない」
「特に、茶色くて平べったいやつは」
「台所にいるやつ?」
今の、敦子さんのお家には出たことないけど。
「たまに教室にも出るやつ」
「無理。無理無理無理無理。えっ何するの? ねぇ嫌な予感凄いんだけど」
「大丈夫だって、まぁ……俺が合図したら目ぇ瞑っとけ」
「ほんとに? ねぇほんとに大丈夫なの?」
「まぁ、あれだ、うん」
黒田くんに縋り付くように説明を求めながら、階段をあがって教室へ向かう。
教室は、いたって普通の塾の教室だった。
眩しいくらいの蛍光灯、大きなホワイトボード、ステンレス製の教卓、並んだ机。
前の方の席は、ルナを中心に取り巻きたちで埋まっていた。
「ほんとは席決めてあるんだけど……、もう誰も守ってないの」
ひよりちゃんは、げんなりした様子で言って、一番後ろの隅っこに座った。
ルナ&取り巻きたちの視線に晒されるが、私たちは堂々とそれを見返した。
(ば、ばれてないよね?)
私は多少、ヒヤヒヤしていたが。
私はひよりちゃんの隣、黒田くんたちは1つ前に座る。
「あ、ひより……来たの? 大丈夫?」
「チアキ」
教室に静かに入ってきた、大人しそうな女の子に、ひよりちゃんは話しかけられた。
「チアキこそ……休んでたから、もう、来ないかと」
「……ま、ね」
チアキちゃんは少し意味ありげにえくぼを浮かべた。そして私の横の席に座る。
「……見学の人?」
「あ、ひよりちゃんの友達。前の男子2人も。見学っていうか、あの人たち見にきたっていうか」
シメに来たっていうか。
「そっか……」
チアキちゃんは、少し驚いたような表情をして、黒田くんと秋月くんを見た。それから、軽く肩をすくめる。
「ま、あんま関わらないほうがいいよ」
そう、静かに言って、机の上にテキストや筆箱をカバンから取り出した。
その時だった。
「きゃ」
教室に乱雑に扉をあけて入ってきた男子が、チアキちゃんの机にぶつかる。
テキストと、筆箱の中身が床に散らばった。
(……!? 絶対わざとじゃん)
驚いて目をみはっていると、男子はわざとらしく謝ってきた。
「お、わりーわりー。でも、謝っただけ、マシだよな? お前に傷つけられた、ルナちゃんの心の傷は癒えてないんだからさ。カッターで脅すなんて、まともじゃねぇよな」
ジトっとした、嫌らしい言い方だった。
「ちょっと、あのね……!」
思わず腰を浮かせた私を、チアキちゃんは止めた。
「……いいの、ありがと。もう、辞めるから」
「でもっ」
「あーあー、辞めろ辞めろ、せいせいする!」
男子は大きい声でそういいながら、ルナの方へと向かって歩いて行った。
「……あいつ、チアキの元カレなんだよ」
「はぁっ!?」
私はひよりちゃんの言葉に耳を疑った。
(なにそれ、ひよりちゃんだけじゃなくて、チアキちゃんまで同じ目に?)
怒りでふるふると震えながら、私とひよりちゃんは、落ちたものを拾おうとしゃがみこむ、チアキちゃんを手伝う。
(あ、千晶って書くんだ、名前)
テキストの裏には、小さく書かれた「鍋島千晶」という名前。
少し転がってしまったペンなんかは、黒田くんたちが拾ってくれているようだった。
(え、あれ?)
落ちていた鉛筆は、どれも先が丸くなっていた。
(? 研ぎ忘れた感じの丸みではないけど)
不思議に思いながら、拾って千晶ちゃんに渡す。
「はい」
「ありがとう」
千晶ちゃんは、控えめに微笑んでくれた。
ちょうどその時、チャイムが鳴って、教室に先ほどの先生ーー久保が入ってくる。
「おう、皆元気そうだな」
「もー、先生ギリギリじゃん」
「オオタくん、先生だってお忙しいんだから」
はしゃいで久保に軽口をいう、自分の隣の席の男子を、粘つくような甘い声で諌めるのは、もちろんルナだ。
久保も満更でない顔をしている。
(……ほげー)
私は、呆れて何も言えなかった。
私が、胡乱な目つきで久保を眺めていると、前の席で黒田くんと秋月くんが頷きあっているのが、視界の隅に収まった。
(あれ、動くみたい、っていうか何するの何するのホントに何するの)
私が少々怯えながら黒田くんの背中を見つめていると、その視線に気づいたのか、黒田くんは振り返って「設楽、目ぇ瞑れ」と言ってきた。
(あああ、み、ミッション・スタート)
今更どうしようもない。
私は強く、強く目を瞑った。ついでに脚をちょっと上げておく。
(こっちに来ませんように)
「い、嫌がらせなんて、そんな」
塾の職員室。
絶句するひよりちゃんの背後から、担任の先生(久保というらしい)に鼻息荒く襲い掛かりそうになる私を、黒田くんと秋月くんは服の裾を引っ張って、諌めてくれていた。
「お前って、案外熱くなるタイプなのな」
黒田くんは苦笑まじりに言った。
「黒田くん達だって、シメる気で来てるんでしょ」
一応は見学の許可を得たということで、職員室を出ながら、こそこそと話す。
ひよりちゃんは、半ば秋月くんに支えられるように歩いていた。
(ひよりちゃん……)
真っ青な表情。見ているこちらが辛い。
「まぁ、俺はイトコこんな目に合わせたヤツに、多少の痛い目にはあってもらおうってだけで……そういやアイツ、お前の知り合いかもってヤツで合ってたのか」
「あ、うん。ご本人様でした」
「マジか……、オイ秋月、作戦変更。Gの方な」
「了解、作戦G」
「なぁにそれ?」
「時間ねぇから秘密だ。しかし、お前普段、何やらせても冷静だし、大人っぽいから、こういうの意外だった」
ただし給食の余り物ジャンケン以外ではな、と笑う黒田くん。
それについては、大人気ない自覚があるので、なんとも言えない。
(最近の給食って、美味しいのよねぇ……)
「……大人っぽくても。例え私が30歳くらいの大人、でも。この状況だったら殴りかかってたよ」
特に、あの久保という男は……。
(大人として、どうなの? そりゃ、人間だから好き嫌いは出ちゃうよ。でも、きちんと生徒を平等に見ていたら、あんな発言は出来ない)
そう思うと、余計にムカッ腹が立ってきた。
「というか、襲いかかってたかも。バールのようなもので」
「バールのようなものは止めとけ」
「……黒田くん達は、何する気なの?」
「暴力的なことはしねぇぞ、メシ肉抜きは辛い」
「何するか、まだ秘密なの?」
「あー……」
黒田くんは、軽く眉を寄せて、私を見つめた。
「設楽、虫平気か?」
「む、虫? 平気じゃない」
「特に、茶色くて平べったいやつは」
「台所にいるやつ?」
今の、敦子さんのお家には出たことないけど。
「たまに教室にも出るやつ」
「無理。無理無理無理無理。えっ何するの? ねぇ嫌な予感凄いんだけど」
「大丈夫だって、まぁ……俺が合図したら目ぇ瞑っとけ」
「ほんとに? ねぇほんとに大丈夫なの?」
「まぁ、あれだ、うん」
黒田くんに縋り付くように説明を求めながら、階段をあがって教室へ向かう。
教室は、いたって普通の塾の教室だった。
眩しいくらいの蛍光灯、大きなホワイトボード、ステンレス製の教卓、並んだ机。
前の方の席は、ルナを中心に取り巻きたちで埋まっていた。
「ほんとは席決めてあるんだけど……、もう誰も守ってないの」
ひよりちゃんは、げんなりした様子で言って、一番後ろの隅っこに座った。
ルナ&取り巻きたちの視線に晒されるが、私たちは堂々とそれを見返した。
(ば、ばれてないよね?)
私は多少、ヒヤヒヤしていたが。
私はひよりちゃんの隣、黒田くんたちは1つ前に座る。
「あ、ひより……来たの? 大丈夫?」
「チアキ」
教室に静かに入ってきた、大人しそうな女の子に、ひよりちゃんは話しかけられた。
「チアキこそ……休んでたから、もう、来ないかと」
「……ま、ね」
チアキちゃんは少し意味ありげにえくぼを浮かべた。そして私の横の席に座る。
「……見学の人?」
「あ、ひよりちゃんの友達。前の男子2人も。見学っていうか、あの人たち見にきたっていうか」
シメに来たっていうか。
「そっか……」
チアキちゃんは、少し驚いたような表情をして、黒田くんと秋月くんを見た。それから、軽く肩をすくめる。
「ま、あんま関わらないほうがいいよ」
そう、静かに言って、机の上にテキストや筆箱をカバンから取り出した。
その時だった。
「きゃ」
教室に乱雑に扉をあけて入ってきた男子が、チアキちゃんの机にぶつかる。
テキストと、筆箱の中身が床に散らばった。
(……!? 絶対わざとじゃん)
驚いて目をみはっていると、男子はわざとらしく謝ってきた。
「お、わりーわりー。でも、謝っただけ、マシだよな? お前に傷つけられた、ルナちゃんの心の傷は癒えてないんだからさ。カッターで脅すなんて、まともじゃねぇよな」
ジトっとした、嫌らしい言い方だった。
「ちょっと、あのね……!」
思わず腰を浮かせた私を、チアキちゃんは止めた。
「……いいの、ありがと。もう、辞めるから」
「でもっ」
「あーあー、辞めろ辞めろ、せいせいする!」
男子は大きい声でそういいながら、ルナの方へと向かって歩いて行った。
「……あいつ、チアキの元カレなんだよ」
「はぁっ!?」
私はひよりちゃんの言葉に耳を疑った。
(なにそれ、ひよりちゃんだけじゃなくて、チアキちゃんまで同じ目に?)
怒りでふるふると震えながら、私とひよりちゃんは、落ちたものを拾おうとしゃがみこむ、チアキちゃんを手伝う。
(あ、千晶って書くんだ、名前)
テキストの裏には、小さく書かれた「鍋島千晶」という名前。
少し転がってしまったペンなんかは、黒田くんたちが拾ってくれているようだった。
(え、あれ?)
落ちていた鉛筆は、どれも先が丸くなっていた。
(? 研ぎ忘れた感じの丸みではないけど)
不思議に思いながら、拾って千晶ちゃんに渡す。
「はい」
「ありがとう」
千晶ちゃんは、控えめに微笑んでくれた。
ちょうどその時、チャイムが鳴って、教室に先ほどの先生ーー久保が入ってくる。
「おう、皆元気そうだな」
「もー、先生ギリギリじゃん」
「オオタくん、先生だってお忙しいんだから」
はしゃいで久保に軽口をいう、自分の隣の席の男子を、粘つくような甘い声で諌めるのは、もちろんルナだ。
久保も満更でない顔をしている。
(……ほげー)
私は、呆れて何も言えなかった。
私が、胡乱な目つきで久保を眺めていると、前の席で黒田くんと秋月くんが頷きあっているのが、視界の隅に収まった。
(あれ、動くみたい、っていうか何するの何するのホントに何するの)
私が少々怯えながら黒田くんの背中を見つめていると、その視線に気づいたのか、黒田くんは振り返って「設楽、目ぇ瞑れ」と言ってきた。
(あああ、み、ミッション・スタート)
今更どうしようもない。
私は強く、強く目を瞑った。ついでに脚をちょっと上げておく。
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